表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小っさいおっさん  作者: はじめの一歩
15/15

逃亡、その後

走り出したはいいがコレはどこに逃げればいいんだろう。


今は昼休みだからある程度の時間はあるが、午後からの授業をバックレるほど逃げ回るわけにも行かない。

自分はあまり勉強が出来る方ではないのだ。

だから、授業態度などの内申点を伸ばすしか、受験に打ち勝つ方法はない。


結局そこまで思考が回るのだから、それほど自分は焦っていないのだと気づく。


あれ、なんだこの安心感。


後ろを振り返ると、なるほど奴らが追ってくる気配もない。

その場で捕まえられればラッキー、逃げられたら逃げられたでまぁいいか、とそんなところだったんだろう。

帰宅部で、残りの体力に余裕もなく、追っ手もいないのに走っている自分が変に思えたので、歩きに移行する。


「…そんな軽い考えで、人生変えられる奴の気持ちにもなってみればいいのに」


ボソっと独りごちた声には少し怒りが混じった。

別に自分が恨みがあるわけではないが、他人に当てられた悪意でも、やはり嫌なものは嫌なのだ。


『あいつってさぁーーー』

『えーーー…』


嫌な記憶が蘇る。

思い出したくもない。



「別にそのまま売られても大丈夫だったんですけどねぇ〜」


突然自分の右耳に声がかかった。

首を回すと「近っ⁉︎」

髭とメガネと台湾ハゲがズームで自分の視神経に飛び込んできた。


つまりは右手で握ってたはずのおっさんが肩に移動していた。

…まぁ、ここまで気配消せて動ければ、助けなくても普通に逃げて来れるか。

なんか変に脱力してしまう。


中庭から渡り廊下に、さらに校舎の中に入る。3年の教室は4階だから、入り口付近の階段を上るが、一段一段が重い。


…暑い。


初夏といえど、今日のお天気お姉さんは「熱中症に注意!」と言っていたし、半袖でもやはり暑い。

そのせいか昼休みに校庭で遊んでいる生徒も今日は見ない。

冷房の効いた図書室にこもっている人が多いだろう。


そうなことを考えながら、二階の踊り場まで来た時、ふと気付いた事があった。


掃除用具。忘れて来た。


…これは取りに行くべきなのか?

考えながらも、足は止まらずに上へと進む。

その時だった。


「おぉ、村山。掃除終わったのか?」


目の前に現れた黒いジャージは、自分に遅刻制裁を与えた張本人だった。


「あ、平川先生。掃除用具って、持って帰ってくるべきだったですかね?」

自分ながら野暮なことを聞いたと思った。


「おぉ、そうだな。じゃ、そこらへん置いといてくれ」


…ん?話が微妙に噛み合ってない。


「え、先生、僕まだ…」


そこまで言って自分の右手の重さに気付いた。…まさか。


「…うわぁっ⁉︎」


バケツがあった。雑巾もあった。取りに行ってはいないのに。

何でだよ⁈

さすがに怖いわ‼︎

ほんっとにしょうもないツッコミは喉までで堪え、更にもう一つ気づく。


「じゃあその辺置いとけよ〜」


平川先生が過ぎて行ってから、用具を言われた通りにその辺に置いて、現状を確認する。

…やっぱり。


「…おっさんどこ行った?」















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ