I come to school by ’’竹”
「…ところで、今何時?」
流石にずっこけそうになった。
浅黒く焼けた顔はちょっと困ったような笑顔だ。
…本格的にこいつの高校の陸上部が心配だ。改めて鞄に下げた時計を見る。
えっと…7時…ごじゅ…?
時計のアナログ盤に写る数字の羅列は
0と7と5と2だった。つまり…
「7:52⁉︎」
嘘ぉ⁈
しかし時計の文字は何度見ても変わらない。しかも今1分進んでしまった‼︎
「まどか遅刻す…‼︎」
ようやくまどかにこの現状を伝えようとすると、もう隣には居なかった。
遥か前を上りだというのに失速すらせずに猛ダッシュだった。
練習の遅刻は良くても、学校自体の遅刻はダメなのか?そういうものなのか?
…練習サボっても速いのか。
って、そんなこと言ってる場合じゃなかったぁぁあ‼︎
考えてた間も時間ってもんはマジで鬼畜で。
気づけばアナログ盤の数字の右っぱしは9になっていた。つまりは登校完了時刻1分前。
普通の道じゃもう間に合わない!
取り敢えず、昔まどかと遊んでいた時に見つけた竹藪をを猛ダッシュしてみる。
地図的にはここを回っていくより、突っ切った方が格段に早い。
だが、藪で、さらに初夏。虫はいるし、更には蛇が出てもおかしくない。
だが突っ切る。
生い茂る竹達の間から校舎が見えてきた。
が、そこに立ちはだかる百段階段。
「登校完了時刻30秒前です」
抑揚のない放送委員の声がきこえてくる。
急げぇぇええ‼︎
全速力で、走り出したが、すぐに止まらざるを得ない状況が降ってきた。
…⁇
階段の目の前。
竹が。しなった竹が、道を塞いでいた。
天に向くはずだった竹のてっぺんには、落石でもあったのか、大きな岩が乗っかっていた。
Oh….
「登校完了時刻5秒前」
また放送が鳴る。
うん。ムリかな。
潔く廊下の雑巾がけ制裁受けてやろう。
「4」
流石初夏だけあって、かなり汗だくになってしまった。
少し休もうと思い、竹の上の岩によじ登…
ろうと竹に手を掛けた時だった。
『ヒュッ』
…え?
青い空が綺麗に見える。
足の裏の地面の感覚がない。
さっきまで地面のあった向きに顔を向ける。
「3」
放送委員の声。
そして俺の目に、地面は見えなかった。
だだ初夏の日の光を浴びて青々と輝く竹林が広がり、そして自分の下を通過していった。
…状況が理解できた。
正確に言おう。
俺の体が、竹林を飛び越えた。
そして、高度が下がって来るとともに校門が足元に近づいてくる。
「2」
「うぁぁぁぁああぁぁあああぉぁぁあ⁉︎」
『ふわんっ』
妙に柔らかい感触が足に伝わる。そして、触れ慣れた懐かしい地面の感触にすぐにもどった。
……い、生きてる⁈
生まれて初めて、地面の感触のありがたみを知った。
♪生まれ〜て〜初め〜t((殴