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初投稿です。
使い勝手もあまり分からなく、戸惑っています^^;
この作品を楽しんでいただけたら幸いです。
あと、タイトル名がなかなか良いのが思いつかないので、
何かピッタリのがあれば言って下さい。
参考にしたいので。
桜が美しく満開に咲くこの季節。俺は、希望と不安を胸にこの高校に入学した。そのときのワクワク感とドキドキ感は今でも忘れられない。だが、そんな気持ちはすぐに音を立てて崩れた。
桜も散り、葉が出てきだした5月の始め、俺はいつもと同じように門をくぐった。靴をはきかえようと自分の上履きを取り出した時、一緒に紙切れがひらひらと舞い落ちた。そこには乱暴な字でこう書かれていた。
『昼休みに体育館裏へ来い!』
名前は書かれてなかったが、見るからに男の字だ。
「何の用だろう?しかもなぜ体育館裏?ひょっとしてリンチか?」
などと軽く思いながら俺は、その紙切れをポケットに押し込み、教室へと向かった。
教室を開けようとする俺の手は、やけに重かった。理由は開けてみればわかるだろう。俺は深呼吸し、教室の扉をスライドさせた。すると教室で駄弁っていた生徒のほとんどが俺の方を向き、さっきまでにぎやかだったのが嘘のように静まり返った。理由はとてもシンプル。俺が茶髪で、眼つきが悪く、いかにも不良っぽいからだ。自分でもその怖さにびっくりする。俺は少し俯きながら、自分の席へと足を進めた。その途中に、「目合わせると殴られるぞ。」とか「いつ見ても怖いわよねぇ~」など、ひそひそ話が聞こえてくる。そのたびに俺は、ズキズキと心が痛む。俺が席に着いたと同時にチャイムが鳴った。そうなるように計算しているのだ。誰だって嫌だろう?あんな空気の中に長くいるなんて。
授業中、俺はしっかり先生の話を聞いて、ノートを執った。自慢じゃないが、俺は真面目なのだ。容姿が怖いだけで。好きでこんな格好をしてるんじゃない。俺は生まれつき髪の色が茶色くて、つり目だった。小学校1年のときは、みんな少し怖がっていたが、日がたつにつれて慣れていったようだった。俺は真面目だったから、次第に怖くないと思っていったんだろう。中学でも、やはり始めの方はさけられた。けれど、小学校の友達たちの協力のおかげで、しだいに溶け込んでいった。しかし、高校ではどうだ。俺のことを知っている人たちは少ない。いるにはいるが・・・。
「今日はここまで。家でしっかり復習するように。」
先生の言葉と同時にチャイムがなった。
「ふぅ~。やっと4時限目終わった~。」
俺は大きく息を吐いて伸びをした。すると、後ろから声がかかった。
「ハル~。一緒に飯食おうぜ~。」
こいつは、神坂来栄司。これで『かんざきえいじ』と読むらしい。初対面の人なら栄司は読めても神坂来は読めないだろうな。こいつとは、小学校からの仲だ。だから俺にはビビらない。ひそかに俺の心の支えとなっている存在だったりする。もちろん、本人には言ってないが。ハルと言うのは俺のあだ名で、本名は三上春明。だからハルというわけだ。
「おう。手洗ってくるから待っててくれ。」
俺はそう言い残して立ち上がり、水道へと早歩き気味に向かった。
廊下でもやはりさけられる。なぜこんなにも避けられなければいけないんだ。より一層早く歩く。それが裏目に出た。不幸なことに水道手前の曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
「だ、大丈夫か?」
俺はできるだけ優しく手を差し伸べるが、その甲斐無く相手の男子生徒は俺を見るや、たちまち顔を真っ青にして、
「す、す、すい、すいま、すいませんでした~。」
と半ば叫びながら、何か怖いものから逃げるように走り去って行った。ズキリと心が痛む。だが、いつか分かってくれるだろうと、その痛みを必死でこらえる。そんな気持ちも一緒に洗い流そうと手を洗い、ポケットからハンカチを取り出した。すると、ハンカチと一緒に紙切れが床にヒラヒラと落ちた。それを見て、下駄箱での出来事を思い出した。
「忘れてた。確か、昼休みに体育館裏に呼び出されたんだったな。」
俺はその紙切れを拾い、急いで自分の教室へ戻った。
教室では、すでに栄司は弁当を食べていたが、俺を見るやその手を止めた。
「どうしたんだよ。そんなに慌てて。」
「ちょっと、急用を思い出したんだ。」
俺は軽く流すが、栄司はしつこくくらいついてきてた。
「急用って何だよ。」
「急用は急用だよ。それ以上でもそれ以下でもない。」
言いながら、俺も自分の席へ座り弁当を食べ始めた。誰かに体育館裏に呼び出された。なんて言ったら、どうなるか分かったもんじゃないからな。絶対に言うもんか。俺は心の中でこっそり誓った。
「俺に隠し事か?俺とお前の仲だろ?教えろよ~。」
尚もしつこくせっついてきたので、俺はその声を無視して、――どんな仲だよ。と心の中で突っ込んだが――弁当をいつもより急いで口へ運ぶ。それを見て、栄司はようやくあきらめたのか、自分も弁当を食べ始めた。
弁当を8分で食べるという自己新記録を更新し――いつもは15分くらいかかる――教室を後にした。後ろから「おい、待てよ~。」と、俺を呼びとめようとする声が聞こえてくるが、完全にスルー。「帰ってきたら何が何でも聞いてやるからな~。」という声も華麗にスルーし、体育館裏へと向かった。
そこには身に覚えもない、いかにも不良という感じのオーラを醸し出した人たちが、しゃがんで煙草を吸っていた。その内ボスのような、体が大きく、筋肉が程よくついていて、形相の険しい人が一歩前へ歩み出てきて、口に咥えていた煙草を地面に吐き捨て、靴で踏んで火を消した。
「待ちくたびれたじゃねぇか。三上春明クン。」
薄々感づいてはいたが、まさか本当にリンチとは。こんな格好をしているからかな、やっぱり。と、前髪をいじりながら思った。
「先輩、ですよね?何かご用ですか?」
それ以外に何と答えていいのか。
「おいおい。この期に及んでしらばっくれるつもりかよ。まぁいい、そっちがその気なら」
そう言い、右腕を大きく振りかぶりながらこっちに走ってきた。
「こうするまでだ!」
俺はそれを間一髪で受け流した。
「ちょっ、先輩。いきなり何するんで、ってうわっ。」
もう一撃もギリギリのところでかわした。
「さすが、中学で頭はってただけのことはあるようだな。」
俺は、何のことだ?と思った。中学で頭はってた覚えなんか無いからだ。だって、俺はいたって真面目な男の子なのだから。反論しようとしたが、先輩の方が早かった。
「だが、良い気になるなよ。ココ(高校)の頭は、」
また、大きく振りかぶりながらこっちへ走ってきた。
「俺なんだよ!」
の一言と同時にパンチが飛んできた。そんなにモーションがで大きかったら、タイミング合わすの簡単ですよ。と、心の中で呟きながら半ば反射的に、左手で先輩の右腕を、右手で胸ぐらをつかんで、相手の力を利用し、遠くへ投げ飛ばした。先輩はきれいな弧を描いて地面に背中から着地した。
「あちゃ~。やってしまった…。」
これは自己流の護身術だ。容姿がこれなので昔はよくいじめられていた。だから、そいつらに絶対勝ちたいと、無我夢中で資料を集め、一人で練習したのだ。俺は結構な負けず嫌いだったりする。
「刻命さん!大丈夫ですか~?」
そう言いながら残りの奴らが、投げ飛ばされた先輩のもとへ駆け寄った。
「刻命?どっかで聞いたような…。気のせいか。見たことないやつだったし。」
ほかの奴らが刻命に気をとられているすきに、そぉ~っとその場を後にした。
とある場所にやってきた。ここは、俺が入学してから、学校をくまなく探して見つけたとっておきの場所だ。人気が無く静かで、大きな木があって、その下は芝生で良い感じに影になっていて、そこに座ると、とても気持ちが良い。俺はその木に近寄って、しかしそこには座らず、木に登った。
その木の幹が別れているところに寝ころぶのが、また良いのだ。俺はその位置に到着すると、ポケットから携帯を取り出して、授業が始まる三分前にアラームをセットし、仰向けになって、目をつむった。
すると、さっきのことがフラッシュバックした。
「ま、まさかな・・・。」
何か嫌な予感がしたが、考えないことにした。
春の良い香りがする。木々が風になびいて、葉がこすれ合う音がする。目を閉じているだけで、別の世界に居るような気分だ。
「いいなぁ、ここは。静かだし、気持ちが良いし、なんたって一人でいれる。」
この世界をたっぷり堪能してるところに、俺を元の世界へと引き戻すかのように、携帯のアラームが静かに鳴り響いた。俺はポケットから携帯を取り出し、アラームを止め、時間を確認する。
「もう時間か。ここに居ると、時間がたつのが早いな。」
携帯をしまい渋々そこから飛び降りた。すると、その木の下に座り込み、背中を預けて本を読んでいる少女が視界に入った。髪は肩に触れるか触れないかくらいの短めで、メガネをかけていて、いかにも文学系オーラがでている。どこか不思議な少女だった。いつから居たんだろ?この子も友達いないのかな?こんなところに一人でいるんだし。などと考えていると、なんだか変な親近感みたいなものがわいた。いろいろ聞いてみたかったが、残念ながらそんな時間は無い。し、とてもそんな勇気は持てない。だがその不思議な少女は、どうやら時間には気付いてないらしく、このまま放っておけばチャイムが鳴るまで本を読み続けそうだったので、無い勇気を振り絞って、もうチャイムの鳴る三分前だということだけでも伝えてあげようと思った。俺は、お節介な奴で世話焼きなのだ。なるべく優しく、相手を怖がらせないように細心の注意を払い、恐る恐る話しかけた。
「もうそろそろ教室へ戻らないと、授業に遅れますよ?」
すると彼女は、今初めて、俺の存在に気がついたらしく、少し顔をこちら向きに角度を変え、
「そう。」
短く答え、本を閉じ立ち上がった。
「ありがとう。」
そう言い残して、少女はスタスタと立ち去った。
俺は、その場で固まった。少しして、勝手に口が動いた。小さい声で、自分に言い聞かせるようにして。
「今、俺の目を見て話してくれた。」
話したと言っても、数秒だが。
「あの子、俺に怖がらなかった。」
ちゃんと俺の顔を見てなかっただけなのかもしれないが。俺はとてつもなく嬉しかった。この学校に入ってから、友達以外の人とまともに――と言っても相手はたった七文字しか言葉を発していないが――話したためしがないからだ。そんな思いに浸りながら、俺は教室へと戻った。
教室の扉を開けると、やはりみんなの視線が刺さる。こんな事を思うのはどうかと思うが、一週間もこんな事が続くので、さすがに慣れた。だがこの視線は、なんだかいつもと違う気がする。すると、栄司が血相を変えて猛スピードで俺に近寄ってきて、乱暴に俺の腕をつかみ、教室の隅っこへ引っ張って行き、しゃがませた。
「おいハル。お前何やらかしちゃってんだよ。」
ヒソヒソ声でそう言うので、俺もヒソヒソ声で返す。
「何って、何を?」
「おいおい、まさか自覚なしかよ。」
栄司は呆れたように言う。
「あれほど忠告してやっただろうが。刻命には手を出すな。もし声をかけられても、全力で逃げろ。ってな。」
俺は刻命という名前を聞いて、あっ!と、小さく声を漏らした。
「やっとわかったか。何があってそうなったか知らないが、お前が刻命を叩きのめしったって、みんな噂してんだよ。一体何やったんだ?」
俺は、自分でも再度確認するように、一つずつ順を追って、一から簡単に説明した。
「ええと、今朝、靴箱に紙切れが入ってて、『昼休みに体育館裏に来い』って書いてあったから、飯食い終わってからそこ行って、そしたら不良っぽいやつらが数人いて、そのうちのボスっぽい人が殴りかかって来たんで、投げ飛ばした。」
「あちゃ~。」
栄司は右手で顔を覆って、首を小さく横に振った。
「ハル。もうお前、友達できないかもな。」
「な、なんでだよ。まだ分からないじゃないか。まだここに入ってきて日が浅いし、挽回できるさ。」
俺は必死に抗議した。だがそれは、俺にも納得いくような理由で否定された。
「だってよ、お前、考えてもみろ。容姿は不良。この学校の頭の刻命より強い。そんな奴がいたら、お前はどうするよ。」
そう言われて、俺は少し考えてみた。誰だってこう答えるだろうな。
「絶対にかかわり合いたくない。」
俯きながら、小さく答えた。
「だろ?だが、終わっちまったことは気にするな。これから少しずつ頑張ってこうぜ。」
ポンポンっと背中を軽く叩かれたが、元気が湧く筈もなく、授業開始のチャイムが鳴ったので、うなだれたまま席に着いた。
どうでしたか?
続けるかどうかは未定です。
初めて書いた作品なので、評判が良ければ不定期ながらも、
時間がかかりながらも、書いていきたいと思います。