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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
9/166

少年と“約束”-4

 シン、と沈黙が落ちる。

 にこにこと笑顔を崩さない少年がなぜか怖い。非常に、怖い。悠樹はひきつった笑みを浮かべて首を振った。

「や、やっぱりね。私にはできないと思うの」

「大丈夫、大丈夫。この僕が保証するんだから、大船に乗った気でいてよ」

(いらんわ、そんな保証!)

 心の中で悪態をつき、あくまで表面上は笑みを浮かべる。だが、ひきつりすぎたそれはもはや笑顔と呼べるような代物ではなかった。

「無理無理。だってほら、私呪いとか魔法とかない世界の住人だし」

「異世界ってことは認めてくれたんだ。なら君ならできるってことも認めてほしいなぁ」

 軽くいなされ、背を押されるままにベッドへと向かわされる。

「だーかーらー、無理だってば!」

「やってみる前から否定しないの」

「やる前からわかってる。私はそんな大層な人間じゃない!」

「……“約束”」

 ぴたりと足を止め、少年は低く呟いた。

「忘れたとは言わせないからね?」

 ぐ、と言葉に詰まった悠樹の一瞬の隙をついて、少年は子供らしからぬ力で悠樹をベッドへとつき飛ばした。


 四本の金の支柱に支えられた天井付きのベッド。金銀の刺繍が施された天蓋が幾重にも重なり合っていたが、悠樹が触れる前にそれらは左右に開かれ、五人は楽に眠れるだろうという広さのベッドが現れた。

(約束……助ける代わりに呪いを解けってやつ、か)

 両手をベッドについてため息を吐き出すと、悠樹はのろのろと顔を上げた。そして、目の前に横たわる人物を見やる。

「うーわー、はっはっは……」

 思わずこぼれた笑いは、完全に乾ききっていた。


 きらきらとそれ自体が輝いているのではないかと思うほどに眩い金色の髪。軽く波打つそれは、細面の顔を縁取りシーツへと流れていて。閉じられた目蓋を縁取る髪と同色の睫毛は長く、眉間から綺麗なカーブを描く鼻はすっきりとして高い。胸の上で組まれた指がかすかに上下していなければ、それは名工の手による彫刻のようだ。布天井に遮られているとはいえ、差し込む陽光に白く輝く肌には日焼けもシミもない。

(確かに『王子サマ』って感じ。『ザ・金髪王子』)

 あまりに『お約束』な展開になりつつある状況に頭痛を覚えながら、悠樹はベッドサイドで腕を組んだ。

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