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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
83/166

小さな変化-3

 どのくらいの時間、そうしていただろうか。

「悠樹、どうした?」

 突然、頭上から声が落ちてきた。

 耳に馴染んだその声に悠樹はのろのろと顔を上げ、そこに声の持ち主を見つけて、ふっと息を飲んだ。

 キラキラと夕陽を返す金色の髪。

 訝しげな金茶の瞳。

「跡がついてるじゃないか」

 額を押す指。片足に重心をかけた長い脚。

 そして。

「こんなところで居眠りすると、風邪をひくぞ」

 苦笑の裏に見える気遣いと温かい空気。

 それらが悠樹の中に広がっていく。赤い残像の代わりにファルシオの色で悠樹の心が満たされたとき、かあっと彼女の頬が赤く染まった。


 唐突にフィルドの声が蘇る。

『今、悠樹の心を一番傷つけたのはどの事実?今、悠樹の心で一番大きな場所を占めているのはどの事実?』

(違う違う違う!そんなわけない!!)

 真っ赤になった顔を激しく左右に振る悠樹を、ファルシオは訝しげに見つめ。やがて、おもむろに右手を伸ばして、バシ、と頭頂部を押さえつけた。

「何をしたいんだお前は。目を回すぞ。……何か、あったのか?」

「な、なんでもない!……っていうか、何かあったのはファルのほうでしょ!」

 ばんっと机を叩くと、ファルシオと視線を合わせないようにして立ち上がる。

「おい、何言って――」

「私、用事があるんだった。じゃ」

「ちょっと待て、悠樹」

「待てない。待たない。待つはずない。…………絶対そんなことはなーーーいっ!!」

 最後の一言はファルシオに向けたものではなかったが、悠樹は完全な拒絶を口にして東屋を飛び出した。

 背中に感じるファルシオの視線には気付かないふりをして、逃げるように走り去る。その腕には、彼から贈られたティアトの容器がしっかりと抱えられていた。

途中からまったく出していなかったので、最後だけ「ティアトの容器を抱えて」って入れるのも不自然かと思ったのですが、主人公に去られ、贈ったはずのお菓子と共に取り残されてたら王子があまりに不憫なので。。。

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