表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
64/166

執事ローミッドとお買い物-3

 ふいに、ある一点を見つめたまま、悠樹の足が止まった。ローミッドが不思議に思ってその視線の先をみると、そこには一軒の店。

 白い壁に青い横のライン、その上に白いインクで書かれた店名。その横に建てられた看板は砂時計に似た形でやはり青く塗られ、中央に縦長の白い長方形のような絵が描かれている。

 悠樹にとって、それは見なれたカラーリングだった。自宅近くにあった、大手コンビニチェーンによく似たデザインだからだ。

 ローミッドにとっても、それは珍しいものではなかった。百年前にも存在していた、老舗店のデザインだからだ。

 気づけば、その店の前で二人はたたずんでいた。

 ローミッドはそっと悠樹に近づき、問いかけた。


「どうかなさいましたか?」

「あれって……ローソン?」

「少し発音が違うようですね。あれはドーソン。百年前にもございましたが、元はセルナディア国営の―」

「コンビニ?!」

「いえ、術具(デック)販売店です」

 予想を裏切る回答に、悠樹はさらに目を大きく開き、ローミッドとその店を見比べた。

(確かに便利なお店には違いないけど。違いないけどー!)

 唖然としている悠樹を見つめてローミッドがくすりと笑う。

「百年前、セルナディアがなくなり国営から民間経営に変わりました。術師(デフィーノ)が眠りについて新しい術具が手に入らなくなってからも、不要術具の買取と販売を続けていたようです。今は古いものと両方扱うようになって、百年前より以前より品数も多いとか」

「……リサイクルショップだ」

「ご覧になりますか?悠樹様のお話からフィルド様が作った―」

 突如、甲高い女の悲鳴と太い怒声がローミッドの言葉を遮った。続けて、「だれか!そいつを捕まえてくれ!!」と叫ぶ声が響き渡る。

 振り返れば、体格のいい男がこちらに向かって走って来るところだった。その奥には転倒したのか若い女性が座り込んでいる。

「どけっ!道を開けろ!」

 奪ったものであろう、女物の鞄を抱えて男が叫ぶ。凶暴な光を瞳に宿した男の姿に、悠樹の足がすくんだ。

(どう、しよう……)

 ぽっかりと思考回路に穴が開く。悠樹は目を見開いたまま、次に取るべき行動が思いつかない。

 道の真ん中に立ちすくんだ悠樹とローミッドは、男の逃走経路を塞ぐような形になっている。男は、小さく舌打ちすると懐から何かを取り出した。

 右手には鋭い光を放つナイフが握られている。小型ではあるが幅が広く、十分に凶器となりえるそれに、悠樹のすぐそばでまた女性の悲鳴があがった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ