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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
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ある夜の会話-3

 悠樹の前でファルシオが笑う。それは間違いなく笑顔なのに、どこか寂しげで悠樹の胸を締め付ける。

(なんでこの人は……こんなにも不器用なんだろう)

 治療法が見つからなかったのは、ファルシオのせいではない。

 完治できない病を患ったのは、ファルシオのせいではない。

 百年の呪いでさえ、ファルシオのせいではないというのに。

 それなのに、彼はその全てが自分のせいだといわんばかりの表情で笑うのだ。

(“後悔してない”んじゃない。“感謝してる”って、そう言ってくれたんじゃないの?どうしてその気持ちをまっすぐ受け止めないのよ。……このバカ王子)

 内心の苛立ちを隠して、悠樹は笑みを浮かべた。

「良かったね」

「ああ、皆の病が回復してくれればこれ以上のことはない」

「それもだけど。ファルがかけられた眠りの術のおかげで、助かった人がいるんだよ」

 意味がわからないのか、ファルシオは目を瞬かせた。

 驚いたような顔は、一国の王子のものではない。同年代の男の子なのだと悠樹に思わせるほどのあどけなさがある。その表情に、悠樹の顔がほころんだ。作ったものではない笑顔を浮かべて、悠樹は言葉を続けた。

「どんなことも、全部が全部悪いことばっかりじゃないんだよ。呪いもそうだってこと、わかってよかったね」

 ファルシオの瞳を覗きこむと、金に近い茶色の瞳がわずかに揺れる。

 悠樹の言葉を反芻するように時間をかけて、やがてファルシオはふわりと笑みを浮かべた。

「そうだな。悪いことばかりでは……なかった。」

(呪いがなかったら、悠樹と出会うこともなかったのだから)

 自然と零れ落ちた言葉と花開くような笑顔。内面から生まれた笑みが端正な顔に広がり、それを正面から見ることになった悠樹の息が止まる。

「どうした、顔が赤いぞ?」

 にやり、意地悪そうに頬を上げてみせるファルシオはもう普段の彼だ。ぐっと握りしめた拳を前に出し、悠樹は目の前の男に指を突きつけた。

「その顔反則っ!!」

 明るくなった室内に、真っ赤になって叫ぶ悠樹の怒声とファルシオの笑い声がいつまでも響いていた。

地震被害に遭われた皆様、また身近な方々が被災された皆様、お見舞い申し上げます。


主人公のセリフに対しご不快に思われるかもしれませんが、今回の話はこのような決着をさせると決めておりましたので、そのまま掲載させていただきました。

ご理解をいただければ幸いです。

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