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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
54/166

直面した現実-7

 宣言の通り、ファルシオは精力的に王国の建て直しに着手した。

 深い森となった城周辺を拓く作業は継続して行われていたが、ファルシオは開拓に先行して避石(レイジ)の設置作業を進めさせた。避石は魔獣を遠ざける効果がある。それを近くの町や村、街道に設置することで、森を追われた魔獣が人里を襲う危険を回避したのだ。

 この事実が人々に好印象を与え、流れを良い方向へ向けた。

 返還された土地に住む人たちはこれを聞いて城の周辺への移住の不安を少なくし、政策に信を置くようになった。

 さらに、セルナディア側も移住のための資金提供を約束した。

 その財源は、眠りに着く前に蓄えた金などの資産価値の変わらないものや、城の調度品などであった。特に調度品は本来の物の良さに加え「骨董」としての価値も付加され、他国の好事家には好まれた。


 また、術師(デフィーノ)がセルナディアにしか存在しないごく少数の特異能力者であり、術具(デック)の製造はセルナディアの国家独占事業である点が百年前と変わっていなかったことが幸いした。カナカスタ、ヤンナチェルクへ術師を各国へ派遣することで、支援を受けるだけではない、対等の立場へとその関係を変えていくことに成功したのだ。

 生活に必要な便利機能を備えた術具は需要が大きく、そもそも術師がセルナディアにしか存在していないのだから、その影響は大きい。国家間の関係だけでなく、術具の輸出によって国庫を潤すことのできたことは、セルナディアにとって幸運だったといえる。

 ただ術具を巡っては、約束を反故にしたルクスバードに対して王族以上に腹を立てていた人物との間で物騒なやりとりがあったのも事実だ。

「術具全部停止させちゃおうか?便利さに慣れてる人たちは買わないわけにいかないだろうし、手っ取り早く外貨は手に入るよ」

「お前は戦争でも始める気か!そんな横暴な外交、聞いたことがない」

「なら、ルクスバードにあるものだけ停止―」

「だめだ!制裁は行わない」

「じゃ、ルクスバードに渡す術具は三年くらいで使えなくなるようにしちゃおうかー」

「質を落とすな。困るのは民だ」

「でもさ、そうでもしなきゃ土地を返してくれた国に申し訳ないと思わない?ファルの薄情もーん」

「……カナカスタとヤンナチェルクには、価格と流通量で優遇することで納得してもらっている」

「なんだ、つまんないの」

「何か言ったか?」

「なんでもー。あ、これ新作術具。悠樹の世界にあるやつを真似したの。遠くの人と顔を見ながら話ができるんだよ」

「ほう……おもしろいな。各国に贈って試してもらおう。うまく実用化できれば、会談で費やす移動時間や費用を削減できる」

「三セットしか作らない(・・・・)から、ルクスバードの分はないけどね♪」

「………………」


 こうして、目覚めた後の世界を見越して準備していたセルナディア国王の機転と蓄え、友好国の協力、そして何より多くの幸運によって、セルナディアは徐々に、国としての機能を取り戻していくことになる。

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