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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
34/166

一筋の光明-3

 睨みつけるようでいて、どこか拗ねた様子のファルシオに首を振って、悠樹はカップを両手で包んだ。

「違うって。自分にできること全部やったら、ジタバタせずに結果を待てって意味。私はどっちかって言うと、やることをやってからもジタバタしたいほうだけど」

 琥珀色の液体の上に浮かんだミントの葉がくるくると回っている。周りの動きに流されるだけのその動きが今の自分と重なって見えて、悠樹は小さく笑って顔を上げた。

「気付いたの。……私はまだ、やるべきことさえやってない」

   (ウチに帰せって、文句を言うだけだった)

「まだやれることがあるはずだって思いたい」

   (自分にできることがあるなら、自分の力で帰る方法があるのなら)

 言葉にするだけで、萎れていた茎が立ち上がるような力強さが心の中に生まれてくる。

 ガタン、と椅子を鳴らして立ち上がり、悠樹は右の拳を真上に突き上げた。その顔は明るく、決意に満ちている。

「悲劇のヒロインぶるのはもうおしまい。やってやろうじゃない。せっかく異世界まで来たんだもん。魔法だってなんだって使えるようになってやる!」

 悲劇のヒロインを名乗るには些か男前すぎる表情を浮かべて宣誓する悠樹の左右から、感嘆の声と拍手があがる。突き上げた右腕を胸の前に戻しファイティングポーズのような格好の悠樹に、離れたところからフィルドが訂正をかける。

「魔法じゃなくて術ね。理を知り、理に従う。えーと、なんだっけ。……人を呪わば穴二つ?」

「怖いこと言わないでよ!」

「でも真理だよ。術には反動は付き物だから」

 笑顔でとんでもないことを言い放つと、フィルドは悠樹に向き直った。口角は上がっているが瞳は笑っていない。そのことに気付いて、悠樹も真面目な顔に戻る。

「術、特に苦手な属性の術は術師(デフィーノ)にかかる負荷が大きい。時には命に関わることだってある。この僕でさえ、苦手な時間(タクト)属性に関してだけは他の術師に頼らなきゃいけないくらい、大きな負荷がね」

 フィルドの瞳に、暗い影が落ちる。それを見て、悠樹の中に一つの疑問が浮かんだ。

(属性とか負荷とか反動とか、難しいことはよくわからないけど……)

「その、時間属性の術、私がやっても平気なの?」

(ウチに帰るための術で自爆したら、結局無事に帰れないんじゃない?)

 悠樹の問いかけに、フィルドは何を言われたのかわからないようにきょとんと悠樹を見返した。しばらくそのままの状態が続き、やがて、ああ、と納得したように頷く。

「そっか。自覚ないんだ。大丈夫、悠樹は時間属性との相性いいよ」

「何を根拠に……」

「僕と初めて会った時、時間を止めてたでしょ」

 言われた言葉に頷きかけて、悠樹は目を見開いた。

「え、でもあれ、フィルドが私を助けるために……」

「違うよ。言ったでしょ、僕は時間属性が苦手だって。僕が同じことやろうとしたら、たぶん死ぬ」

「死……」

 思わず絶句した悠樹に、フィルドが苦笑する。

「自分が身を置く世界の、すべての時間を止めるなんて滅茶苦茶だよ。……まぁ術が中途半端すぎて、自分も半分捕われてあの場所から動けなくなっていたのはちょっと間抜けだけど」

 でも、と、フィルドは苦笑を収めていつもと同じ笑みを浮かべた。

「あの時も言ったはずだよ。“僕はここにいて、ここにいないようなものだから”ってね。時間を止めたのは悠樹自身。僕はその停止した空間に潜り込んで君をここに連れて来ただけ。だから大丈夫。君は時間属性を負荷なく使うことのできる術師なんだよ」

 にこりと笑って少年は言い、悠樹は目を開いたまま、脱力するように椅子へと腰を下ろした。

術や属性、負荷・反動は、説明要員その1(アリア)と説明要員その2(シルク)が後ほどきちんと解説する・・・ハズです。

わからない会話が多くて申し訳ありませんが、しばらくお待ちください。

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