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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
30/166

出会いと再会-4

「ごめんなさい。あんまりおいしくって、全然聞いてませんでした」

 スコーンと追加で用意されたサンドウィッチを平らげた後、悠樹はぺこりと頭を下げた。

「かまわない。大した話はしていなかったさ」

 悠樹の右隣でファルシオが笑いをかみ殺しながら答える。左隣ではシルクが苦笑し、ローミッドはワゴンからクッキーの乗った皿を取り出して中央より少し悠樹の近い場所へそれを置く。

「そ?あ、これもおいしい」

 ココナッツに似た甘みのクッキーを一枚頬張って周囲を見回すと、東屋の隅に立つ大柄な男が目に入った。

 短く切りそろえた紺色の髪とたくましい精悍な顔立ち。華奢な外見の男性が多い中、彼は際立って男くさい風貌をしていた。黒い鎧に身を包んでいるが、その中も鍛えられた筋肉があるのだろうと容易に想像がつく。

 悠樹の視線を追って男の姿を認めたらしいファルシオが、ああ、と頷いて声を発した。

「シェリス、お前も座れ」

 ファルシオの声で自分に集中した視線を受けて彼は頭を下げ、大きな身体を萎縮させた。

「いえ。自分はここで」

「そんな所に立っていたら悠樹様が落ち着きませんよ」

「しかし……」

 シルクが言葉を続けるが、悠樹を見て言いよどむその大男に、あ、と小さな声をあげた。昨夜、ファルシオと共にあの場所に現れた男が、シェリスと呼ばれていたことを思い出したのだ。

 悠樹は椅子から立ち上がると、ぺこりと頭を下げた。

「あの、昨日は迷惑をかけてごめんなさい」

「は、あ、いえ、そのような。あの、どうかお顔を……」

 悠樹からの突然の謝罪にかわいそうなほどにうろたえるシェリスを見て、卓についた男達が苦笑する。

「悠樹、言うなら礼にしろ。詫びたらあいつが困る」

「え、そうなの?えと、ありがとうございました」

 再び頭を下げる悠樹に、シェリスが困ったような顔をする。助けを求めるような視線をローミッドに送り、彼もそれに応えるように頷いた。

「彼はシェリス・ウィルダー。近衛騎士で、普段は殿下の警護にあたっております。昨夜のことも彼の職務の範囲内ですから、あまりお気になさらず」

 言いながら、悠樹たちと同じ卓にシェリスの分のティーカップを用意し、彼に席を勧める。

「シェリス、あなたからもご挨拶を」

 話を振られたシェリスは姿勢を正し、悠樹に向かって頭を下げた。

「…………」

 悠樹も彼に会釈を返し、そしてそのまま次の言葉を待つ。が、いつまでたっても彼の声は聞こえてこない。

「…………」

「…………?」

「…………」

「……あの、えっと……」

 数十秒の沈黙の後、揃って眉を寄せた二人を見て、くっとファルシオが笑い出した。

「ま、腕は昨日見た通りだ。無口だが悪い男じゃない」

 笑いながら言うファルシオの言葉にはシェリスに対する信頼が溢れている。悠樹は頷いて、よろしく、と三度頭を下げ、シェリスも下ろしかけた腰を上げて頭を下げた。

ストーリーとは関係がありませんが、ご挨拶です。


いつもご訪問いただき、ありがとうございます。

公開から1ヶ月足らずで、お気に入り登録してくださる方が100名様を超えました。本当にありがとうございます。

ブログなど個人サイトも持っておらず、まったく広報活動をしていないのですが、こんなにたくさんの方に読んでいただけて本当に光栄です。


キリの良いところで、お気に入り登録100名様突破記念のお礼小話を番外編として投入したいと思っております。

今後も精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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