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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
19/166

暁姫-4

 それからしばらくして、国王への挨拶を兼ねた晩餐会に出て欲しい、と別のメイドが呼びに来たが、その場にファルシオと術師(デフィーノ)フィルド・ローランも臨席すると聞き、悠樹はにっこり笑って辞退した。

「国王様には申し訳ないけど、今は王子と詐欺師の顔は見たくないの。」

 彼女の言葉はアリアによって通訳され、国王のもとには

暁姫(エイル)次元転移(ミンツ・テレア)と呪いの解術(シーク)による疲労のため、すでに休んでいる」

とだけ伝えられた。

 国王夫妻は心配そうに表情を曇らせたが、別れ際の悠樹の剣幕を知る王子は密かに頭を抱え、術師は天使のような笑みをさらに深めたという。


 そして、晩餐を断った悠樹のため、アリアは個室での夕食の用意をすると言って部屋を出ていった。話し相手がいなくなり、しん、と沈黙が部屋に満ちる。知らず、大きなため息が零れ落ちた。革靴を脱ぎ捨て、膝を抱えるように座り込んだところで、また一つ。

 ころりと転がるようにソファに横になって窓を見れば、外はすっかり暗くなっていた。天井から下がる小振りのシャンデリアと壁際の間接照明は、柔らかくて暖かな光を室内に投げかけている。蛍光灯の白く煌々とした明るさとは異なる優しい光。

 ぼんやりとそれを眺めてから、悠樹は目蓋を閉じた。

 夕方事故にあって、昼間のこの国に連れてこられたのだ。時差ボケに近い感覚はずっと付きまとっているし、加えてこの状況。疲れているというのは晩餐を断るためにアリアがひねり出した口実だけではなく、紛れもない事実だった。

(着替えなきゃ。このままじゃスカートがシワになる。プリーツ消える。朝大変。あー、数学の宿題あったんだった。英語の予習も終わってないし。明日はきっと……当てられる……)

 自分を取り巻く現実を厭うような思考が浮かんでは消えていく。ふわふわと漂い始めた意識はやがて溶け、アリアが戻ってきたとき、悠樹はすでに夢の中へと落ちた後だった。

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