解術 王女と暁姫の…-1
「イエルシュテインのエルシャ様が、お話したいことがあると仰っているそうです。」
翌日、朝の挨拶もそこそこにそう告げるアリアに、悠樹は(以前も似たようなことを別の人に言われたような気がする)と、その時とは別の理由で小さく首を傾げた。
「エルシャ姫が?……なんだろ。」
「なんでも火急の要件とか。昨夜通信が入ったそうです。」
その言葉に、悠樹の眉間に皺が刻まれる。腰掛けたベッドから立ち上がると、目にかかる髪を払いながらアリアを見つめた。
「火急の要件が、なんで昨日のうちに私のところに来なかったの?」
「日付が変わる頃だったとかで、アルマン様が明日でいいと仰ってくださったそうです。」
(そんな時間に緊急の通信って……一体どういうこと?)
腕を組んで考え込んでしまった悠樹を、アリアがおずおずと見上げる。その意味深な視線に話を促すと、彼女は小さく耳打ちをした。
「聞いた話ですと、エルシャ様はひどく取り乱していらっしゃって、とてもお話できるような状況ではなかったようです。ただ、悠樹様のお名前を叫ばれていたとか。」
「……わかった。すぐに出かける用意をお願い。」
ばさりと寝着を脱ぎ捨ててアリアの用意した服に腕を通す。ボタンがわりの胸元のリボンを結びながら歩きだす悠樹に、アリアは落ちついた様子で頷いた。
「用意はできておりますわ。通信室には伝えてありますから、まずは朝食をお召し上がりください。」
「あ、通信室じゃなくて直接エルシャ姫に会ってくる。だから、そのことを向こうに伝えてくれるように頼んでおいてもらえる?」
「そう仰ると思いましたから、通信室にはイエルシュテインに先触れを出しておくように連絡してあります。それから、ファルシオ殿下にもお伝えしてありますからご安心ください。」
「……あ、そう、だね。……ありがと……」
(そうだった。黙って出かけたら後が怖いんだった……)
前日の凍りつくような視線を思い出して悠樹は顔を引きつらせ、アリアはそんな彼女を盗み見て、くすりと小さく笑う。だがすぐに表情を戻すと二人は自分がするべき行動を再開した。