解術 それぞれの…-1
「ファルの解術ができても、フィルドはそのまんまなんだね。」
セルナディアに戻ってしばらく経ったある日、東屋にいつもの面々が集まった。
ほとんどが三年の間に顔つきや雰囲気は変わっているのだが、悠樹はただ一人、全く変化の兆しの見えない少年に向かって言った。
「みたいだねぇ。僕も少しは期待してたんだけど。あ、リジュも変わってないよ。」
「そっかぁ。反動と術そのものは関係ないんだ。」
残念そうにため息をつく悠樹に、シルクが不思議そうな目を向けた。
「何か、気になることでもあるんですか?」
「気になるていうか……みんなは気にならないの?大人だった頃のフィルドの顔。あ、実は知ってるとか?」
しんと沈黙が落ちた。
あれ、と悠樹が周りを見ると、他の面々は何やら微妙な表情で顔を見合わせている。
「そう言われてましても……これがフィルド様ですから。」
「ああ。フィルドが急に老けたら、誰だか分らないだろうな。」
「触れてはいけない禁忌かと存じます。」
「これとか老けるとか禁忌とか、君たちなかなか酷いねぇ。」
シルク、ファルシオ、ローミッドの言いようにフィルドが苦笑する。その中で一人、黙ったままだったシェリスがおずおずと視線を上げた。
「自分は……記憶しております。」
「「「「え?!」」」」
フィルドを除く四人の声が揃う。わずかに身体を引いたシェリスを見て、フィルドは小さく首を傾げた。
「シェリス、ファルが生まれた時何歳だった?」
「十二です。」
「ああ。なら覚えてるだろうねー。」
納得したように頷くフィルドの言葉に、今更のように悠樹が問いかけた。
「そういえばみんなの歳って知らないや。何歳なの?」
「俺は二十一だ。シルクが二つ上で二十三、ローミッドが二十五、シェリスは今の話だと三十三だな。」
「で、フィルドは?」
頷きながら聞いていた悠樹が、くるりと身体ごと少年に向きなおる。その視線を受け止めて、彼はにっこりと笑った。
「永遠の十代♪」
「父上と同じだろ?五十半ばだ。」
「ごっ……」
フィルドの回答を綺麗に無視して、ファルシオが代わりに答える。その内容に、悠樹をはじめ全員が絶句した。