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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
123/166

そうして新しい日常が始まりを告げる-2

「――――――」

 声が、また彼女の名を呼んだ。

「……誰?」

 小さく呟く。胸が締め付けられ、目に涙が浮かぶ。耳を澄まそうと瞳を閉じ、息を吐いた。


 以前どこかで、その声を聴いた気がする。

 以前その声が、自分の名を呼んでくれた気がする。

(……どこで?……いつ?……あなたは、誰?)

 脳裏に浮かぶ点を一つ一つたどり、それを線で結ぶ。

 瞬間、ざわりと音をたてて木々が揺れた。突然吹いた風はくるりと悠樹の周囲を一回りすると、悠樹の涙と共に天へと昇っていく。

 ふ、と悠樹の口元が緩んだ。微かに浮かんだのは紛れもない笑み。閉じたままだった瞳から涙がこぼれ、新しい筋を作りだした。

「悠樹ー!ホントどうしたのー?」

 道路の向こうから呼びかける声にはっと目を開いて、悠樹は友人達に手を振る。

「ごめーん!私、行かなきゃいけないところがあるの。……またね!」

 大声で叫んで、悠樹は走り出した。校舎に戻って階段を駆け上る。すれ違うクラスメートに声をかけられ返事を返し、そうしながら向かった先は屋上。内鍵を開けて外に出ると、一際大きく鐘の音が聞こえた。先程聞こえた学校のチャイムに似た、でも明らかに異なる響き。

 柔らかく温かく、そして力強い。それは以前、あの場所で聞いた、深みのある音。

(黎明の塔の鐘、だ)


 カバンを放り投げ、全力疾走の後の呼吸を整える。自分の中に精神を集中させれば、懐かしい感覚が徐々に戻ってくる。

 それはこの世界にはない、術と呼ばれる力の気配。

次元転移(ミンツ・テレア)空間隔絶(ノルン・ペルフィクス)

 自分の周囲だけを切り取るイメージで、手の平を下に向けて腕を交差させる。すると、悠樹の足元に金色の光が現れた。それは表面に複雑な幾何学模様を描くと、球状になって悠樹を包み込んでいく。

未来へ進むための光よメンテ・スキット・ツァルン希望を繋ぐ道となれソナ・アストゥール・カタ・ディア失われた詩に(マン・セット・)導かれし力よ(ラクド・フォルタ)閉ざされた扉を開け(セサ・ペルド・オート)

 一度だけ、聞いたことのある言葉。その時は何を言われたのかわからなかったが、今ならわかる。

求める地はファナ・ティアード・ア・日方294(カル・テトリ)星度91(アラ・トク)海高46(トート・リユ)スキルフォート大陸スキルフォート・ルソンセルナディア(セルナディア)黎明の塔(ファラマ・ドーナ)我は禁じられた(ディス・マーク・)古の術を識る者エレ・ガルド・デフィーノ空間を司る精霊よ(ミンツ・エージェン)加護せし者を(コア・ザック・)守りたまえ(マナ・ソード)

 ゆらり、光が揺らめいて、ふっと消える。そこに悠樹の姿はなく、ただ風だけがそこを駆け抜けていた。

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