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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
120/166

決着の時-3

 地を蹴る蹄の音が聞こえ、神殿を挟んだ向こう側からローミッドが現れた。馬を降りて居並ぶ面々を順に見まわし、悠樹に視線を止めてほっと安堵の色を浮かべる。

 が、すぐにそれを隠してファルシオのそばで膝をついた。

「ルクスバードの者たちには薬を盛って朝まで眠ってもらうことになりました。少し強めですので意識の混濁が起きるはずです。その間に処理をすませよとの、陛下からのご命令です」

「わかった。……そうだな。医者を用意して全員酒に酔っていたと診断させろ。酔夢でも見たに違いないと押し切ることにしよう」

「では、水差しの容器で強い酒を用意させましょう。マグダード産なら原酒でも匂いは少なく飲みやすいですし、酔いも強い。水と誤って飲んだことにすれば、少しは格好がつくでしょう」

「できれば、少量でも本当に飲ませておきたいところだな」

「それは薬の効き次第ですね。服と口元、それから部屋の床には零しておきます」

(な、なんか恐ろしいこと言ってるーーーっ!!)

 淡々と悪巧みを続ける二人の男に悠樹の顔が引きつる。

 聞かなかったフリをしようと彼らから離れる悠樹の前に、リジュマールを伴ったアルマンが現れた。いつのまにか悠樹の隣にきていたシェリスが、彼女を庇うように一歩前へ出る。それを察したのか、ファルシオとローミッドが立ち上がり、アルマンたちと向きなおった。

「神殿を占拠していた兵は全員国境まで引いていただきました。抵抗した者には若干の手傷を負わせてしまいましたが、命に関わるものはないはずです」

 ファルシオの言葉に、実行部隊だったのだろうシェリスが申し訳なさそうに頭を下げる。アルマンは右手を上げてそれを制した。

「傷を負った者には申し訳ないが、仕方があるまい。先に無礼を働いたのはこちらのほうだ」

「失礼を承知でお伺いしますが、武勇だけでなく知略にも富むとお噂のアルマン殿がなぜあの男の言葉を鵜呑みにされたのですか?それも御自ら出向くなど、罠とは思わなかったのですか」

「数人の部下だけで乗り込んできたそなたがそれを言うか」

 ふ、と頬を緩めてアルマンが笑い、その場に苦笑が満ちる。

暁姫(エイル)と呼ばれる娘の拉致など、どのような理由があっても汚れ仕事だ。リジュマールには手伝ってもらわねばならなかったが、そんな仕事を部下だけに押しつけるのは好かんのでな。それに、そもそもは自分の娘のため。多少強引な手を使ってでも、この手で縁談をまとめたかったのだが……」

 そう告げて、アルマンは笑みを浮かべた。そこにあるのは国を治める王ではなく一人の父親としての表情であり、それを理解したうえでファルシオもアルマンに頭を下げた。

「ご息女の件、誠に申し訳ありません」

「詫びるのはこちらのほうだ。すまなかった」

 ファルシオと悠樹に穏やかな視線を向けてアルマンが頭を下げ、その後ろでリジュマールがほっと息をつく。やはりリジュマールは望んで自分に危害を加えようとしていたのではなかったのだと、彼女を憎みきれなかった悠樹の顔にもようやく安堵の笑みが浮かんだ、次の瞬間。


 地面が金色に輝き、悠樹の足元へと光が集まった。

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