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眠れる城の王子  作者: 鏡月和束
眠れる城の王子 〜本編〜
10/166

少年と“約束”-5

(呪いを解く、って、要はコレを起こせばいいんだよね)

 呪いで眠っているのなら、目覚めさせることがイコール呪いを解くことになる…………はずだ。

(……えーっとぉ)

 浮かんだのは、某有名アニメーションの有名なシーン。ベッドで眠るお姫様に、王子はそっと顔を近づけて―――

(無理無理無理無理絶対無理ーーーっ!!!)

 ぶんぶん頭を振って、脳内再生された映像を振り払う。

(起こすだけ。寝ている人を起こすだけ。そう、起こすだけなんだから)

 自分自身に言い聞かせ、オーソドックスに肩を叩こうとして、無駄に広いベッドに中央には、到底手が届かないことに気付いた。一瞬の躊躇の後、悠樹は靴をぬぎ、そろりとベッドに乗りあげる。

 ふかふかした、でも身体が沈みこむことのない適度な硬さのベッドを四つんばいに進んで、男の隣に座る。悠樹の動きに合わせてベッドが揺れたが、その程度では王子は起きる気配がなかった。

 しばし様子を見てから、悠樹は男の肩を軽く叩いた。が、反応はない。

「起きてくださーい。時間ですよー」

 声をかけ、次いで肩を揺すってみた。が、やはり変化はない。

「あーさーでーすーよーーー!!」

 耳元で大きめに叫んでみる。が、眉一つ動かない。

「じきに日が暮れる時間は、もう朝とは言えないと思うよー」

 冷静に突っ込みを入れる声にため息をついて振り返り、こちらを見る翡翠色の瞳を見返す。言いたいことはヤマほどあったが、一番気がかりなことだけを口にした。

「本当に生きてんの?コレ」

 悠樹の問いに、少年の目が愉快そうに細められた。

「生きていてくれないと困るねぇ。主に君が。」

 なんでもないように言う少年にがっくりと肩を落とし、悠樹はのそのそと立ち上がって上掛けに手をかけた。

 そして、おもむろに上掛け布団を引きはがす。

「起きろーーーー!!」

 ほわりと暖かな空気が室内に溶け、代わりにそれよりも少し冷たい空気が男の身体を包んだ。その気温差で普通なら身じろぎくらいはするものなのだが、敵もさるもの。微動だにしない。

 その様子に感心しながら、悠樹は眼下の男を見下ろした。

「寝汚いわりに、寝相はいいのね」

 上掛けを剥いだ勢いで、胸の上に置かれた腕は身体の両脇に落ちたが、現れた身体は『きをつけ』の姿勢をそのまま横に倒した直立状態。睡眠中の生きた人間とは到底思えない。

「まぁ、本人の意思とも生理現象とも違うところで寝てるからね。意識を失ってるっていうほうが近いかなぁ」

「ふーん。……まぁ確かにね」

(寝相が悪くてベッドから落ちて床で寝てる王子とか、ありえない)

 どうでもいいことを考えながら、悠樹は、さて、と再び考え込んだ。

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