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あなたを正しく消し去る方法  作者: やきいもほくほく
ー解放ー

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9/44

露骨な嫌がらせを無視して紅茶を飲み込む。

強烈な苦味、彼女が淹れた紅茶の方がずっとずっと美味しいと思った。

カフェから出て、馬車へと帰ろうと道を歩いていた時だった。


見慣れた毒々しい色の体のラインが出るワンピースを着た女性が見えてサフィードはハッとしつつ顔を背けた。

顔を見られないようにしたかったのだが、どうやら遅かったようだ。

最近、関係を持っていた女性たちはサフィードに気づいてしまった。

まるでフィオーネなど見えないと言いたげに、サフィードの腕に絡みつく。



「おい、やめてくれ!」


「ウフフ、お昼に会えるなんて嬉しいわ」



サフィードの制止する声は女性たちの甲高い声に掻き消されてしまう。



「本当、偶然ね! ねぇ、何か買ってちょうだいよ」


「今日も来るんでしょう? また今晩も楽しみましょうね」


「そうだわ。あなたに紹介したい子がいるのよ! 会ってくれない?」


「……っ、離してくれ!」



サフィードの隣にいたフィオーネを押し除けて両脇には女性たちが囲んでいた。



「何よ、最近やることやって行っちゃうんだもの! 寂しいわ」


「そうよそうよ、今からイイコトしちゃう?」



地面に何かが落ちる音が聞こえて振り返る。

それは彼女の手から先ほど買った便箋が滑り落ちた音だ。

フィオーネのエメラルドグリーンの瞳は大きく見開かれていて、顔がどんどんと青ざめていくのがわかった。

女性たちはフィオーネに気がついたのか真っ赤な唇を歪めた。



「あらやだ、いたのぉ?」


「お子さまはお家に帰ったらどうかしら」


「……っ」



フィオーネは女性たちの声を聞いて肩を跳ねさせると震える手で便箋を拾い上げた。

女性たちは「地味すぎぃ」「相手にされなくて当然よね」と、クスクスとフィオーネを馬鹿にするように笑っている。



「私たちにはもっといいものを買ってくれるんでしょう?」


「ねぇ、早く行きましょうよ!」



彼女のこと娼婦とでも思っているのだろうか。

清廉なフィオーネを汚されたような気がして、サフィードは叫ぶようにして彼女たちを怒鳴りつける。



「──黙れっ!」



しかし女性たちは引くどころか眉を吊り上げて金切り声を上げる。



「何よっ! その子が大切なのにどうして毎晩毎晩、私たちを抱くの!? その子に魅力を感じないからこっちにきているんでしょう?」


「黙れだなんて意味わからないわ! 昨日も一昨日も入り浸って今更何言ってんのよ……!」



次々に暴露されていく真実に冷や汗が滲む。

恐る恐る彼女の方を見ると俯いているため表情を窺えない。



「……失礼します」



フィオーネは最後まで彼女たちの話を聞くことなく、背を向けてしまう。



「ま、待ってくれ……! フィオーネッ」



サフィードの制止を聞くことなく、フィオーネはどこかへ走り去ってしまった。

フィオーネが過ぎた場所からハラリとメモが落ちる。


そこにはフィオーネが書いたであろうメモがあった。

彼女はサフィードと叶えたいと言った願いが書いてある。


八つ目は『一緒にパーティーに出る』と書かれていた。

先ほどカフェで年に一度の王城で開かれる建国を祝うパーティーの話が出た。

その時に叶えるつもりだったのだろうか。

フィオーネの誕生日の二日前ほどに開かれる華やかなパーティーだ。


九つ目は『一緒にダンスをする』

パーティーでダンスを踊りたかったもいうことなのだろう。

『一緒に誕生日を祝いたい』と、そう書かれていたが涙で滲んで見えなくなっていた。

パーティーに出席して王都に行けば必然的に共に過ごす時間は増える。


それに十つ目の願いである『誕生日も一緒に祝う』という願いも自然と叶えられるというわけだ。


(お、俺は……なんてことを)


彼女は一生懸命に計画を立ててくれたのだろう。

サフィードを信じてくれていたのに裏切ってしまった。

フィオーネの想いをすべて踏み躙ってしまったことになる。


このままでは彼女の信頼を取り戻すことなどできない。

心臓はバクバクと脈を打っていた。

隠そうとしていた汚い部分がすべて晒されて彼女にバレてしまった。


彼女が嫁いできたばかりの時とは状況が違う。

徐々に距離は近づいていたはずなのに、一気に離れてしまったようだ。


果たしてサフィードは彼女を追いかけて手を取る資格はあるのだろうか。


(あるわけがない。フィオーネを裏切ったんだ。許されない……俺はなんてダメな奴なんだ。これ以上は……っ)


膝をついて頭を抱えるサフィードを見て女性たちは「もう相手をしてあげないから!」「愛想尽かされてしまえ、クソ野郎」と吐き捨てながら去っていく。


暫く経ってから馬車に戻ってみてもフィオーネの姿はない。

御者と共にフィオーネを探すがどこにもいないのだ。


先に帰ったのかもしれないからと屋敷に戻るがそこにもフィオーネはいなかった。

屋敷の従者や侍女たちから送られる責めるような視線。

彼らは薄々気づいているのだ。


フィオーネを傷つけたのがサフィードであることを……。


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