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【完結】あなたを正しく消し去る方法  作者: やきいもほくほく
ー解放ー

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8/52


五つ目の願いは『一緒に街に行きたい』だった。


彼女の誕生日まであと二週間、朝食にそう言われて迷うことなく頷いた。



「サフィード様、最近眠れていますか?」


「──ッ!」


「クマがひどいですが……」


「ああ、その……大丈夫だ」


「何かあればわたしが力になりますから」



毎晩、フィオーネではない女性と関係を持っているなど言えるはずもない。

フィオーネの前では少しでも綺麗でいなければならないからだ。

矛盾しているが、本気でそう思っていた。


それに星を見に行ってから、フィオーネをもっともっと外の世界へ連れて行きたいと思うようになる。


しかし何かを買ってやりたいがフィオーネが来てからまったく屋敷や領地のことを手につけていない。

執事のところに行くも「フィオーネ様の苦労も知らずに金をせびるとは……!」と怒鳴られる始末。

散財していた自覚はあった。酒と女にひたすら金を注ぎ込んでいたからだ。

しかしフィオーネに贈り物をしたいと言うと渋々、金を渡してくれた。

自分の情けなさを突きつけられて息が詰まる。


サフィードはフィオーネに連れられて街に出た。

こちらに向けられる軽蔑の視線、コソコソと聞こえる話し声。



『何を今更……よく顔を出せたね』


『ほんとほんと、フィオーネ様が可哀想だよ!』


『娼婦も買えずに女を引っ掛けているらしいぜ。最低だな』



フィオーネに聞かれたくない話題だったため、すぐにその場を離れた。


領地の人間も屋敷の人間も誰もサフィードを求めていない。

まるで味方はフィオーネ一人だけだと錯覚してしまいそうだった。

いや、実際そうなのかもしれない。

わかりやすいほどにフィオーネとサフィードの態度が違ったからだ。



「フィオーネ、好きなものを選んでくれ」



そう言ってもフィオーネは何も強請ることはない。



「わたしはサフィード様と一緒にいることができたら十分ですから」


「だが……」


「他には何もいりませんわ」



フィオーネはそう言ってにこやかに笑った。

しかしサフィードはどうしてもフィオーネに何か贈り物をしたかった。

毎晩、女性と関係を持っているという罪悪感を紛らわしたかったからかもしれない。

それでもというと彼女は「便箋を選んでくださいますか?」と言った。



なんと六つ目の願いは『一緒に買い物をしたい』だったのだ。

一瞬、フィオーネに断られた時に娼婦を買う金にしようとしたが、彼女にしつこく聞いて正解だったと思った。



「どうして便箋を……?」


「友人と手紙のやりとりをしているのです」



どうやらダルモンテ王国に嫁いできた令嬢たちと手紙のやりとりをしているらしい。

王太子妃のカーラーやチェルヴォニの妻、エリュテイカをカーラーに紹介してもらったそうだ。

それにダルモンテ王国からアーテルム帝国に嫁いだ友人とも連絡を取り合っているそうだ。



「ダルモンテ王国から? 貴族の令嬢か?」


「身分がとても高くて王族の血を引く方ですわ」


「……そうか」



そんな話は聞いたことがなかった。

だが辺境に住んでいる以上、情報が届くのがとても遅い。

いつもはペラペラと娼婦たちが話しているが、最近は会っていないため、その手の噂は聞かなくなってしまった。


(パーティーやお茶会にあまり出たことがないと言っていたが、積極的に連絡はとるのだな)


フィオーネはまるで狙ったかのようにサフィードの仲のいい友人たちの妻と親しくなっていることに驚いていた。

知らない土地でアーテルム帝国出身で支え合っているそうだ。

社交界の場には一切出ていないフィオーネだったが、どうやら色々なことを知っているようだ。



「ふふ、サフィード様のために頑張っているのです」


「……!」


「わたしをたくさん褒めてくださいね」


「…………」



誇らしげにドンと胸を叩いたフィオーネ。

だがサフィードが無言だったことで恥ずかしくなってしまったのだろう。

ポソリと「な、何か言ってくださいませ」照れているようだ。

堕落した自分を守るために、こうして動いてくれるフィオーネに胸が熱くなる。


サフィードはシュヴァルツとチェルヴォニとまったく顔を合わせていないことを思い出す。

未来を語り合った友人たちに酒と女に溺れた惨めな姿を見せたくなかった。


フィオーネは自分のことを犠牲にして、こうしてサフィードを……シーディリフ辺境伯を守ろうと動いていた。

サフィードは感動していたが自分の情けなさと罪悪感に心がひずむ。


サフィードは雑貨屋でフィオーネと共に可愛らしい花柄の便箋を買って店から出た。



七つ目の願いは『一緒にケーキを食べる』だそうだ。

どこまでも可愛らしいフィオーネの願いにサフィードは頷いた。

フィオーネがずっと行ってみたかったカフェだそうだ。

目の前には可愛らしいケーキが並べられていく。


サービスだとフィオーネの前にはもう一つケーキが置かれている。

サフィードの前には乱暴に紅茶が置かれた。

誰もここにいるのが領主だとは思っていない。

愛されているのはフィオーネ一人だけ。彼らの中で領主もフィオーネだけなのだろう。


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