④⑦
(これはチェルヴォニや父上の仕事だ。王太子であるボクはっ、ボクには関係ない……!)
王国がどんどんと追い詰められていっているのをシュヴァルツは見て見ぬフリを続けていた。
そんな時、サフィードが亡くなったことを知る。
その死に方はわざわざフィオーネの前で自害したという惨いものだった。
サフィードがいなくなり、辺境の壁が崩れたことで一気に緊張感が高まった。
今まで彼が帝国の攻撃をいなしてきたからだ。
愕然としていたシュヴァルツだったが、続いてチェルヴォニまでも屋敷で無惨に刺し殺されてしまったと聞いて言葉を失った。
侍女や執事たちは屋敷にいたはずなのに、犯人の目撃情報はまったくない。
悲鳴も何も聞こえなかったと彼らは揃って証言していた。
それはチェルヴォニの妻、エリュテイカも同じ。
チェルヴォニは死ぬ前日まで城に滞在していたそうだ。
彼の世話をしていた侍女に話を聞いてみるが、彼女はガタガタと震えていて話すどころではなかったそうだ。
そんな彼女が怪しいと今、調査を行っているそうだ。
しかし結局わかったのはチェルヴォニと関係を持ったという事実だけ。
チェルヴォニの父親である元ベリガール公爵と同じ。
女性と関係を持った後に亡くなったことからベリガール公爵家の評価は下がっていく。
結局、チェルヴォニを殺した犯人は見つかることはなかった。
彼に恨みを持つものの犯行だろうとのことで結論がついた。
そうでなければ説明がつかないのだ。
エリュテイカにも調査をしたが、彼女はチェルヴォニに裏切られた悲しみで言葉を詰まらせていた。
元ベリガール公爵夫人と同じようにエリュテイカはあまりのショックに体調を崩して、帝国に帰ってしまったのだ。
そこで改めてチェルヴォニのエリュテイカに対するひどすぎる態度などが執事や侍女から暴露される。
(……サフィードも、チェルヴォニも一体何故こんなことになってしまったんだ)
ダルモンテ王国は彼らの死をきっかけにして、どんどんとバランスが崩れていく。
評判が地に堕ちてしまったベリガール公爵家の屋敷を管理するものはいない。
次々にベリガール公爵から去っていく執事や侍女たち。
すぐに宰相として動ける者もおらず混乱は続いている。
ダルモンテ王国はかつてない大パニックになっていた。
国を守っていた壁がなくなり、宰相もいない状態で不安定だ。
父も大臣たちを集めて国を建て直そうと躍起になっていく。
さらにルアンがフラーウムを虐げていた母とリリアンを執拗に責めてくる。
極刑にするまで許すつもりはないらしい。
特にリリアンはルアンの前で暴言を吐いたこともあり、彼の怒りは増すばかり。
化けの皮が剥がれた二人は、侍女たちにも手を上げたりとひどい状態であった。
リリアンは「わたくしは悪くない! 悪いのはフラーウムよ!」と、必死に言い張っていたがフラーウムのことやカーラーにしていたことが表に出てくるのと同時に誰も彼女を信用しなくなった。
リリアンの立場が悪くなり矛先が侍女たちに向くと、リリアンを診ていた医師たちや母の侍女たちも自分たちだけは助かりたいと王家を裏切り始めた。
ルアンに情報を流したのも彼女たちではないかと思っていた。
リリアンと母が口裏を合わせて、フラーウムやカーラーを孤立させようと動いていたこと。
実はリリアンの病はとっくの昔に完治していて、今は元気で健康であることも暴露されていた。
(そんな……父上はこのことをわかっていたのか!? どうしてボクは気付けなかったんだ。何故父上は教えてくれなかったんだよぉ……)
アーテルム皇帝はアーテルム帝国から子どもを攫って奴隷にしていたことも含めて、ルアンはリリアンと母への極刑を強く望んでいる。
しかし父は今、二人を失うのはまずいとなんとか食い止めていた。
今、リリアンは部屋に軟禁状態。
母はシュヴァルツに助けを求めるために必死に縋りついてきたが「今は忙しい」とその手を振り払う。
(ボ、ボクはどうしたらいいんだ……どうすればこの地獄から抜け出せるんだ? そもそも父上が教えてくれていたらこんなことにならなかったんだ)
自分の見る目のなさが原因だとは思いたくはなかった。
だからシュヴァルツはリリアンと母に騙されたことにしたのだ。
リリアンは病弱などではなかったし、母もただシュヴァルツを利用して楽しみたかっただけ。
彼女たちに責任を擦りつけることでシュヴァルツは逃げることを選択する。
『まさか二人がボクを騙していたなんて……』
そう言って同情を集めようとしていたが、周囲は冷ややかな目でシュヴァルツを見るのだ。
どうしようもない状況から逃げたくて逃げたくてたまらなかった。
(騙されていたのはボクだけじゃないはずだ。ボクは悪くないぞ……!)
それからフラーウムがいなくなってからは侍女たちをしつこく虐げていたそうで、彼女たちは恨みをたくさん買っていた。
二人で協力して精神的に追い詰めて遊んでいたらしい。
フラーウムが消えてから感じていた違和感の正体はコレだったようだ。
この噂を聞きつけた元侍女は今までの復讐とばかりにリリアンと王妃を弾糾していた。
ダルモンテ王国の国民たちもヴィジョン伯爵やガルビン男爵が消えたことで、怒りの矛先はリリアンと王妃である母に向かう。




