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あなたを正しく消し去る方法  作者: やきいもほくほく
ー猛毒ー

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33/44

③③

「あれは使い捨ての駒だろう? アーテルム帝国にも居場所がなかったのだろう。連れてきた侍女も一人だけだ」


「こんな状況で大切な王女ならばこの国には嫁がせるはずもない」


「はぁ……もっと愛想があって性格がよければな」



シュヴァルツは葉巻きの煙を思いきり吐き出した。

白い煙は大量に上に昇っていく。



「……俺があの女を愛することはないさ」


「それよりサフィードはどうしているんだ?」


「一度会ったがあまりいい状況じゃなさそうだぞ。まだそのままだったら最悪だな。だけど女遊びと酒が手放せないんじゃないか?」


「私も手紙を送ってますが、返ってきたことはないですね」



チェルヴォニもそう言って煙を吐き出した。

彼はアーテルム帝国との争いが終わったことで、一気に腑抜けたらしい。

シュヴァルツは何度か会いに行ったそうだが、見る影もなかった。

チェルヴォニも形式上は手紙は送ったものの、あとは放置していた。

もう落ちぶれた彼に関わるメリットもない。辺境は戦地だったこともあり廃れていて利用価値もない。

あそこから領地を盛り立ていくのは大変だろうし、嫁いだフィオーネも可哀想だ。


(まぁ……戦うことしか脳がない男だったからな)


自分は階段を駆け上がっていくのにサフィードは落ちぶれていくのだろう。



「チェルヴォニ、ヴィジョン伯爵のことについてなんだが……」


「ああ、彼の噂のことか? 実際どうなのかはわからないがガルビン男爵と何かをやっているようだが……詳しくはわからない」


「ガルビン男爵か。彼が献上したものをリリアンが気に入っていたな」



他愛のない話をしながら息抜きをしていた。


その日は帰りが遅くなってしまったがいつも通り屋敷に帰ってきた。

エリュテイカとはいつも別室で寝ている。

最初に忙しすぎて別室にしてからそのままだった。


しかし何故かその日だけは玄関にエリュテイカが寝間着で立っていたのだ。

暗闇の中でゴールドの瞳がギラギラと光を帯びているのを見て、チェルヴォニは驚き大きく肩を揺らした。



「な、なんだよ……! こんなところで何をしているんだっ」


「………………」



エリュテイカは何も言わずにじっとこちらを見つめていたが、すぐにいつも通りの笑みを浮かべていた。

彼女がこんな風なことをするのも初めてで、どう対応すればいいかよくわからない。


二人の間には気まずい沈黙が流れていく。



「な、何が言いたい!」


「こんな夜遅くまで何をしていたのでしょうか」


「…………!」



今までも夜遅くに帰ってくることは多々あった。

それこそ今日よりも遅くなった日もある。

彼女がこんなことを聞いてきたことは今まで一度もない。

それなのにエリュテイカは今日に限って問い詰めてくることが恐ろしい。


(娼婦を抱いたことがバレているのか……? いや、まさかそんなはずはっ)


エリュテイカはチェルヴォニに背を向けてから少しだけ振り返り口角を上げた。



「……おやすみなさい、チェルヴォニ様」


「あ、あぁ……」



いつもなら「なんなんだ、はっきりしろ」と怒鳴りつけるところだが、なぜか彼女の雰囲気に押されてどうすることもできなかった。

何故か心臓の音が鳴り止まない。

チェルヴォニは首を捻りながら部屋に戻る。



──数日後。


登城したチェルヴォニはシュヴァルツから衝撃的なことを聞くことになる。

なんと数日前に行った高級娼館で娼婦たちが惨殺されたそうだ。

二人は限られた人物、それこそ御者や護衛にしか行き先を言ってはいない。

そこに行くことを知られたら体裁が悪いどころか最悪の事態に発展するに違いない。


(クソッ……なんてタイミングの悪い)


チェルヴォニはすぐに口封じに動き出した。

ここで醜聞が表に広がるのは避けたいと必死だった。

アーテルム帝国出身の妻たちを置いて娼館に行っているのは体裁が悪いではないか。


運が良かったのか悪かったのか、娼婦たちは皆殺しされていたおかげで情報が漏れることはなかった。

一安心していたのも束の間、今度はエリュテイカの様子が徐々におかしくなっていくことに気づく。


最初は気のせいかと思っていた。

けれどどこに行くのか聞かれたり、いつ帰ってくるのかとどんどんしつこくなっていた。

いつものようにあしらえばすぐに引くかと思いきや、エリュテイカは珍しく食いついてくるではないか。



「わたくしに悪いところがあったら直しますわ。だから……」


「うっとおしい。なんなんだよ! いい加減にしてくれ」


「だからよそ見だけはやめてくださいませ。じゃないとわたくしは……」



エリュテイカは悲しげに眉を寄せた。

まるで娼館のことを見透かしているような発言に思えたが、そんなはずはないと言い聞かせる。


(エリュテイカが知っているはずはない……! 彼女は屋敷にいたはずなのだから)


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