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あなたを正しく消し去る方法  作者: やきいもほくほく
ー欲望ー

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23/45

②③

二人の前に立ち塞がるようにして立っていたアスファルだったが、彼女の大きな瞳と目が合ったような気がした。

しかしフラーは表情をまったく動かすことはない。

彼女はただ……ゴミを見るような目でアスファルを見下しているではないか。

公爵もアスファルの存在に気がついたようだ。



「フラーウム、彼と知り合いかな?」



彼の優しい笑顔はフラーウムに向けられている。

それだけで彼女が特別な存在なのだと周囲に知らしめるには十分だったろう。


〝フラーウム〟


その名前を聞いた瞬間、アスファルは目を見開いた。

彼女は王太子のシュルベルツと、病弱な第一王女リリアン、そして悲劇の王女と呼ばれ第二王女フラーウム。

つまり第二王女と同じ名前だと思ったからだ。


よく見るとハニーゴールドの髪と青い瞳はダルモンテ王国の王族のものだ。

今は気づくことはできるが、元平民だったアスファルにはすぐに彼女が王族だとはわからなかった。


社交界に出てラウラと関わるようになってから知ったことだが、彼女はダルモンテ国王に寵愛された側妃の子として生まれたが、側妃の美貌を継がなかったことや後ろ盾が弱いことで冷遇されていたらしい。

側妃は産後の肥立が悪く亡くなってしまう。


噂では皆に溺愛されているが病弱なリリアンとフラーウムを毛嫌いする王妃にずっと虐げられていたのだとラウラが面白おかしく話していた。

そんな彼女が限界を迎えて城から逃げ出した時期とアスファルと出会った頃とが重なっているではないか。



「……ぁ、あっ……ッ」



アスファルは震えが止まらなくなってしまい、公の場であるにもかかわらず膝をついてしまう。

フラーウムにあんな扱いをしていたことがバレたらどうなるのだろう。

アスファルの前から消えた後、彼女はなんらかの形で公爵に出会った。

つまりアスファルは知らなかったとはいえ、ダルモンテ王国の元王女を裏切りラウラを選んだのだ。


(知らなかったんだ! 知らなかったんだから仕方ないじゃないかっ)


心臓が口から飛び出してしまいそうになっていた。

彼女のことを知らないふりをすればいい、気づかなかったふりをすればいいという考えに行き着いた。

ただフラーウムのこちらを責め立てるような青い瞳が恐ろしい。



「えぇ……よく知っていますわ」



彼女の薄く形のいい唇が綺麗な弧を描いた。

だけど目はまったくといっていいほどに笑っていない。

アスファルはフラーウムが発するオーラに圧倒されて動けずにいた。



「そうか。なら挨拶をした方がいいかな。私はルアン・ゲルへルだ。アーテルム帝国軍を率いているんだ」



長く伸ばした髪を束ねているルアンは柔らかい笑みを浮かべた。

アスファルはこういう腹の底で何を考えているかわからない奴ほど恐ろしいと知っている。

だか、ルアンよりも別人のようなフラーウムが怖くてたまらない。



「どんな関係かはわからないが、僕の愛おしい婚約者をあまりじろじろと見ないでくれないかな?」


「……っ、申し訳ございません!」



アスファルは反射的に頭を下げた。

周りからどう見られているかなんで最早どうでもよかった。



「フラーウムが美しいから自然と視線を集めてしまうんだろうね」


「すべてルアン様のおかげですわ」


「そんな控えめなところも大好きだよ。フラーウム」


「ありがとうございます。ルアン様」


「淡々としているところも可愛らしいね。早く君と二人きりになりたいなぁ」


「……そうですわね」



ルアンは相当、フラーウムに惚れ込んでいるように見える。

だが、アスファルがフラーウムと一緒に暮らしていたことなどはまだ知らないらしい。


(捨てた女のことで動揺している場合ではない。これはチャンスなんだっ! しっかりしろ、アスファル)


アスファルはルアンとここで話をしなければ未来はない。

むしろこれはチャンスではないだろうか。

アスファルは自分を売り込もうと口を開こうとした時だった。



「今日は皇帝陛下からある命を受けてここにいるんだ」


「…………ある命、ですか?」



ルアンは優しい笑みを浮かべてはいるが、どこか恐ろしい。

アスファルは鳥肌が立っていた。

しかしまだまだ上にいきたいという欲が勝る。



「ああ、そうだよ。デイビス・ヴィジョンとアスファル・ガルビンのことについてなんだが……」


「……っ!?」



まさかここで自分の名前が出てくるとは思わずに『アスファル・ガルビンは僕です』と言おうと意気揚々と口を開こうとした時だった。



「彼らを処罰して、帝国に首を持ち帰らないといけないんだ」


「…………え?」



彼が何を言っているのか理解できなかった。



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