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あなたを正しく消し去る方法  作者: やきいもほくほく
ー欲望ー

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21/47

②①

光り輝く道を駆け上がるためには邪魔になったものを排除しなければならない。

それは当然のことなのだ。



「これでいい……これでいいんだ」



アスファルは自分に言い聞かせるように呟いた。

貴族であるアスファルがフラーを気遣うこと自体、馬鹿馬鹿しいではないか。



「お前たち、明日には迎えにくるから用意をしておけよ?」


「「「「「…………」」」」」



妹も弟も誰もアスファルの言葉に返事をすることはない。

ただ表情を変えないままこちらを睨みつけている彼らが弟や妹のはずなのに不気味に思えた。


あっさりと引いたフラーに気持ち悪さを感じていた。

胸のわだかまりは消えないままアスファルは屋敷に帰った。

何故かアスファルの弟や妹たちを心待ちにしていたヴィジョン伯爵に『明日迎えに行く』と報告した。


心臓はバクバクと脈打っていた。

フラーは……フラーだけはアスファルを信じていた。

約束通り、彼女だけはアスファルを待っていたのだ。

弟や妹たちがアスファルを睨みつける中、彼女だけが……。


(フラーには手切れ金でも渡すべきだったか? 明日は今まで弟と妹、母を面倒みていた分、金をやるか……それがいい! そうすれば少しは気が晴れるはずだ)


アスファルはフラーにとっては十分であろう金を持って出かけた。

これでやっと彼女を捨てられる。


いつもと変わらないボロボロの小屋のはずなのに何故か静かに思えた。

恐る恐る手を伸ばしてノックをしてから軋んで今にも壊れそうな扉を開く。

持っていた金が入っていた袋が落ちてバラバラと溢れていく。

そこには誰の姿もなくもぬけの殻だった。


(な、なんだこれは……! 妹と弟たちは一体どこに?)


もちろんフラーの姿とそこにはいない。

アスファルは震える手で金を一枚、一枚拾いながら考えていた。

状況がまったくわからない恐怖。


(フラーは……弟や妹たちに何をしたんだ?)


金がない彼女にそんなことは可能なのだろうか。

今まで自分の思い通りのままに事が進んでいると思っていた。

だけど、アスファルが見えていない部分で何があったというのだろうか。


アスファルはフラフラしながら小屋を出た。

メモもなくどこに行ったのかと見当もつかないため、彼らがどこに行ったのかもわからずに探しようもない。


周りの奴らに行き先を聞こうとするも金をせびってきた。

金をちらつかせて聞いてみたが、大した情報も持っていなかったため途中で切り上げる。


(何が……起こったんだ?)


アスファルは訳がわからないまま屋敷に帰る。

暫く考えていたのだが、これでよかったと思うことにした。

貴族としてのアスファルの経歴に傷がつかずに済んだのではないだろうか。


(そうだ。僕は間違っていない……! いらないものがなくなって清々しい気分だ)


次の日、ヴィジョン伯爵に報告すると「どういうことだ!?」と激しく怒鳴られてしまう。

その理由もわからないままアスファルは謝罪するしかなかった。


(どうしてヴィジョン伯爵はこんなにも弟や妹たちにこだわるんだ?)


彼らのことを話してから明らかにヴィジョン伯爵はおかしくなってしまったようだ。

それからラウラとの結婚の話にすり替えるも、彼は不機嫌なままだった。

これ以上、ヴィジョン伯爵の機嫌を損ねてはいけないと思った。


幸い、ラウラとの婚約が決まった。

彼は兄が二人いてヴィジョン伯爵の跡継ぎはいる。

これでアスファルの人生は明るく照らされる……はずだった。



それから半年後──。


ラウラと婚約したアスファルは貴族として順調に歩んでいた……はずだった。

想像とはかけ離れた生活。アスファルは焦っていた。

夜会やパーティーに出席することが増えたのだが、そこで彼女のドレスを毎回仕立てねばならず、あまりの金額に毎回悲鳴を上げていた。

見栄っ張りな彼女は見た目ばかりを気にして、アスファルのことなど気にもしない。


稼いだ金はすべてラウラに使い込まれてしまい、アスファルは遊ぶ暇もない。

また気性が荒く、雇った侍女を端からいびってやめさせてしまう。

それなのに「もっといい侍女を寄越しなさい」とアスファルに命令するのだ。


しかし貴族の婚約はフラーの時とは違い口約束ではない。

相当な理由がない限りは簡単に覆すことができないのだと後々知った。

そのことがアスファルをさらに追い詰めていく。

そんな時に決まって思い浮かぶのはフラーの顔だ。

彼女はアスファルを信じて優しく励まし続けてくれた。

今になってフラーを手放したことを後悔し始めていた。


(彼女だったらわがままを言わずに僕を支えてくれていたのに……!)


今はラウラに振り回されて生活も立ち行かない。

彼女は欲望の化身だった。


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