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あなたを正しく消し去る方法  作者: やきいもほくほく
ー欲望ー

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19/42

①⑨

アスファルはニヤリと口角を上げて笑った。

貴族になりすっかり表情を取り繕うことに慣れたアスファル。

フラーは必ず騙されていうことを聞くに違いない。

アスファルは眉間に手を当ててわざとらしくため息を吐いて気持ちを切り替える。

悲しげな表情を作ってから顔を上げた。



「すまない、フラー……君に苦労をかけ続ける自分が許せなくて、ついきつく当たってしまったようだ」


「……アスファル」


「みんなに楽をさせたくて男爵になったんだ。お願いだ。もう少しだけ待っててくれないか?」



しかしフラーは頷くどころか、アスファルの気持ちを見透かすようにじっと見つめている。

またもや彼女の目をまっすぐ見ることができなかった。

もしかしたらアスファルが嘘をついていると疑っているのかもしれない。



「そ、そしたら結婚しようじゃないか! 今までの分まで楽をさせてやりたい。今はフラーには苦労をかけてばかりいて申し訳なく思っている」


「…………」


「だから、僕を今だけは信じて待っていてほしいんだ。必ず迎えに行く……それまで僕の代わりに家族と僕たちの思い出が詰まったこの家を守っていてくれないか?」



フラーは瞼を伏せて考えているようだった。


(この僕がここまで言ってるんだ。絶対に大丈夫だ)


扉の外では弟や妹たちがじっとアスファルを見つめていた。

まるで値踏みされているようだ。



「…………わかったわ」



やはり結婚という言葉は今のフラーにとって効果は絶大だったようだ。


(やった! これで僕の計画は崩れることはないっ)


頷いた彼女の強張っていた表情が緩んでいく。

ホッとしたように息を吐き出しているフラーを見て、アスファルはにやけた唇を隠すように彼女を抱きしめた。


フラーの細い腕が背に回った瞬間に鳥肌がたつ。

貧乏くさい彼女に触れるのは嫌だったが仕方ない。

時には我慢することも必要だろう。



「すぐに迎えにくる。フラー、みんなを頼む」



フラーは頷いて、ボロボロの小屋に戻っていく。

彼女の姿が見えなくなったことでアスファルは急いでフラーが触れた場所を手で払っていた。


(クソ……どうして僕がこんな思いをしなければならないんだ。もう貴族になったというのに)


舌打ちをしながら馬車へと戻り、立派な屋敷を見上げていた。

この屋敷はいわばアスファルの努力の結晶だ。

先ほどの嫌なことは忘れて胸がスッとした。


そのままアスファルは自分が貴族として振る舞うようになっていった。

商会は順調に大きくなっていった。

それにヴィジョン伯爵の力は大きく、彼の手伝いをするだけで多額の金が手に入る。


アーテルム帝国に食料を運んだりと利益は右肩上がりだった。

今ならばどんなものだって手に入るような気がした。

社交界にでれば貧乏貴族だと言われることもあるが、そのうちそうではなくなると耐えていた。



「君に嫉妬しているだけだ。ガルベン男爵。気にすることはないさ」


「ヴィジョン伯爵……!」


「君のおかげでこちらの事業もうまくいっている。また頼むよ」


「任せてください!」



そんな矢先だった。アスファルはある噂を聞いた。

それはヴィジョン伯爵家が違法な人身売買に手を染めているという黒い噂だった。

アスファルも彼がどんなことをして富を築いて登り詰めたのかを聞いたが、うまく濁されてしまったことを思い出す。


それにアスファルがよく内容を知らないものを運ばされていたことで疑念を抱くようになる。

『とにかく素早くバレないようにしてくれ』

その噂を聞いてからヴィジョン伯爵が何をしていたのか気になって仕方がない。


(僕はヴィジョン伯爵に一体何を運ばされているんだ?)


中身を聞いても『我々が素晴らしい富を得ることができるものだ』としか言われない。

だが、アスファルも大金をもらえるので文句はなかったが不安が頭を過ぎる。


それにヴィジョン伯爵はアスファルの恩人だった。

そんな彼が悪どいことなどするはずがないと信じきっていた。

彼はアスファルに色々なことを教えてくれる。

夜の世界はアスファルにとって刺激的だった。

酒にゲーム、いい女との情交は最高の気分にさせてくれる。

特に女遊びにどっぷりとハマったアスファルは稼いだ金のほとんどを女性へのプレゼントなどに注ぎ込んでいた。


『アスファル様は素晴らしいわ。きっと天才だわ』

『本当にアスファル様は選ばれた方なのね!』


アスファルを称賛する声は気持ちいい。


フラーたちに最後に会ってから半年くらい経ったが、彼女たちの元に足を運ぶことは一度もない。

アスファルがどこに住んでいるのかも知らないから当然だが連絡のしようもないのだろう。


だけど彼女はずっとあの場所でアスファルを〝待っている〟のかもしれない。


(そろそろどうにかしないとな……明日はきっと。明日は行けるさ)


そう思いだけで一日、また一日が過ぎていく。

もちろん会っていないということは金も渡していない。


(今まで僕が家族を支えてきたんだ。これくらい許されるはずだ)


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