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あなたを正しく消し去る方法  作者: やきいもほくほく
ー欲望ー

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18/42

①⑧


アスファルは貴族たちから常に値踏みされるような視線を感じていた。

この世界に足を踏み入れるのに相応しい人物なのかを試されているのだ。

あんなに大切に思っていたはずなのに、今は邪魔で邪魔で仕方ない。


それに今はどこまでも後をついてきそうなフラーを追い払わなければならない。

アスファルの成功のために、今は家族や恋人といえど必要ない。

母にも申し訳ないきもちはあったが、今は自分が上にいくことしか考えてはいけない。

その後にゆっくりと母の墓参りをすればいいだろう。

アスファルは低い声で威圧するように言った。



「……何か用か?」


「いつ帰ってくるの!? このままだとみんなが飢えてしまうわ」



フラーの縋るような声にアスファルは彼女を怒鳴りつけるように声を上げた。



「──うるさいっ! お前に僕の苦労がわかるのか!?」


「……っ!」


「ただ家で待っているお前とは違って、僕は男爵まで登り詰めたんだぞ!?」



フラーはアスファルの言葉にブルーの瞳を大きく見開いた。

アスファルがどんな思いで男爵を手に入れたのか、彼女には決して理解できないだろう。

貴族の仲間入りするということはフラーでは決してわからない苦難があるからだ。


フラーは俯いた後に、乾いてガサガサ下唇を噛んだ。



「私は……もうあなたを信じることはできないわ」


「は……!?」


「もう限界よ。ここにはいられない」


「……なっ!」



限界、ここにはいられない……つまりフラーはアスファルの弟と妹たちを置いて家を出ると言いたいのだろう。

当たり前だがフラーは母やアスファルの妹や弟たちと血が繋がっているわけではない。

けれど彼女を広いここに置いてやったのはアスファルだ。

生意気なフラーに腹が立って仕方ない。


(なんで薄情な女なんだ……!)


フラーの脅しのような言葉に驚くのと同時に、このままではいけないと焦りが込み上げてくる。


(もしフラーがいなくなったら……? コイツらの世話をしてもらえない。そうなれば僕が面倒を見なければならないということか!?)


彼らを新しい屋敷に連れ帰らなければならないのだとしたら事態は最悪な方向へ向かうに違いない。

それだけは絶対に避けなければならない。 

これ以上、足を引っ張られてアスファルの輝かしい未来が消えてしまうではないか。


(フラーはまだここにいてもらわなければ困る……! 折角、苦労して手に入れた地位を手放してなるものかっ)


一番上の妹ももう大きい。

あと一年ほど経てば下の子たちの世話もできるだろう。

フラーがいなくなったとしても仕送りをすれば、七人で暮らしていけるほどの金は送ることができるはずだ。

貴族は醜聞を嫌う。

醜聞が広まれば積み上げてきたものを一瞬で失ってしまう。

社交界での信頼もなくなってしまう。それだけは避けなければならない。


(それまではフラーは手放せない。どうにかして引き留めなければ……!)


もうフラーと結婚しようなどという頭はなかった。

彼女にこれ以上の価値はない。

今、アスファルが狙っているのはヴィジョン伯爵の娘と婚姻を結び自分の爵位を上げることだ。

そしてゆくゆくは領地を広げて成り上がるという壮大な夢がある。


ヴィジョン伯爵家の令嬢、ラウラは貴族らしい女性でとにかく美しく華やかだ。

アスファルにはもったいないくらい綺麗な女性である。


(ライラは利用価値がある。彼女を手に入れるためなら、僕はなんだってしてみせる!)


フラーはこの姿を見ても、まだ自分がアスファルと結婚できると思っているに違いない。

今、男爵を賜ったと聞いて必死にアスファルを離さまいと気を引こうとしているのだ。


(なんて卑しい女だ……こうすれば僕が困ると知っているのだろう)


アスファルは瞬時に思考を切り替える。

地位が固まるまではフラーを利用し続ければいい。

結婚をちらつかせさえすれば、フラーはここにいて家族の面倒をみてくれるはずだ。

フラーはどうでもよくても、さすがに弟や妹たちを見殺しにするのは後味が悪いではないか。


一年後までに体制を整えて、弟や妹を屋敷の使用人として雇えば問題はない。

使用人を雇う金も減り、彼らもボロボロの小屋ではなく豪華な屋敷で暮らせるのだ。

まさに一石二鳥、彼らも今よりもいい暮らしができて満足だろう。


(今だけは我慢してもらわなければならないが必ず迎えにいくからな)


しかしフラーに関しては、元々身寄りがなく帰る場所はない。

恐らく娼館から逃げ出してきたのだと考えていた。

貴族の女性とは違って、もう誰かの唾がついているかもしれない女だ。


今思えば何も持っていないフラーと結婚しようなどと言っていた自分の考えが理解できない。

彼女はどこで生まれて今まで何をして生きていたのかを絶対に話そうとはしなかった。

アスファルに本当のことを話さないフラーに、今になって苛立ちが込み上げる。

それと同時にこうなることは最早仕方ないと思えた。


(ははっ……利用するだけ利用して捨ててやる!)


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