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あなたを正しく消し去る方法  作者: やきいもほくほく
ー解放ー

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【あらすじ】


フィオーネは辺境に嫁いだが辺境伯であるサフィードが戦いがなくなりすっかりと腑抜けてしまう。

酒と女に溺れて堕落した生活を送るが、妻のフィオーネは懸命にサフィードのために尽くしていた。

フィオーネが十六歳の誕生日にあることを提案する。

『わたしの願いを一緒に叶えてください』

サフィードはフィオーネと共に彼女の願いを叶えていくがやがて──。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ああ……最後まで××人ね」



聞いたこともないような低い声。

その声色には軽蔑や嫌悪がありありと滲み出ている。


(目の前にいるのは……誰だ?)



「おやすみなさい、サフィード様」



サフィードはもうすぐ苦しみから解放される……それだけは不思議と理解できた。 



* * *



サフィード・シーディリフはダルモンテ王国で辺境伯として国境を守ってきた。

父は戦死した。サフィードが十五歳の時だ。

矢が頭に刺さったのだ。一瞬で亡くなってしまう。

あんなにも厳格で誰よりも強いと思っていた父の死はあまりにも呆気なく思えた。

憔悴した母は父の後を追うように亡くなってしまう。


爵位を継いだサフィードは毎日死にものぐるいで国境を守ってきた。

面倒な社交の場にも出向くことなく戦いに明け暮れたせいか令嬢たちから倦厭されて婚期を逃すこととなる。

サフィードは貴族としての華やかさも恋愛の才能もなかったが、戦いの才能はあったようだ。

ただでさえ強面で戦場に出てばかりいたせいか肌は傷だらけだった。

口下手なこととあいまって女性や子どもに怖がられてしまう。


そのうち戦ってばかりいる方が楽だと思い始める。

パーティーに出席しても居心地の悪い時間を過ごすくらいなら一人で酒を飲んでいた方がまだマシだった。

華やかな場にどうしても苦手意識があったため、サフィードにとってこの環境はありがたかった。


そんな時、ダルモンテ国王からシーディリフ辺境伯領に手紙が届いた。

それはアーテルム帝国との同盟を告げるものだった。

この手紙を持ったままサフィードは暫く動けなかった。

もう自分の役目が終わったのだと告げられているようなものだ。


ダルモンテ王国とアーテルム帝国とはずっと敵対していた。

アーテルム帝国は三年前に皇帝が変わった瞬間、急速に周辺諸国を飲み込んでいきどんどんと勢力を拡大していった。

このまま飲み込まれる前に同盟を組もうとダルモンテ国王は動いたのだろう。


ダルモンテ王国は海に面していて温暖な気候は豊かな恵みをもたらしてくれる。

そんな帝国からの和平の提案にサフィードは疑念を抱いたが、争いばかりでアーテルム帝国に食糧が枯渇しているのは確からしい。

そこでダルモンテ王国の力を借りたいそうだ。

サフィードは馬に乗りすぐに王都へと向かった。

この事実を確認するためだ。

サフィードを迎えてくれたのは王太子で友人のシュヴァルツだった。



『大丈夫なのか?』


『ああ、彼らとは表向きでもいい関係を築かなくてはな。それにアーテルム帝国の女は皆、宝石のように美しいらしい』


『……おい』


『お前にもアーテルム帝国のレラ辺境伯から婚姻の申し込みが来ているぞ。このタイミングで娶ってみてはどうだ?』



そう王太子のシュヴァルツに言われたのが昨日のことのようだ。

シュヴァルツも和平の証にカーラー・リィ・アートルムとの婚姻が結ばれることになるそうだ。

つまりアーテルム帝国の第一皇女を正妃に迎えるのだ。



『どんな美女が現れるか楽しみだな。ボクの結婚を期にチェルヴォニも落ち着いてくれるといいがな』



チェルヴォニはシュヴァルツの幼馴染でサフィードの学友だ。

宰相の息子で頭は飛び抜けてよく品行方正。

次期宰相として厳しく育てられた反動なのかもしれないが、華やかな評判とは裏腹に女性問題が絶えない男だった。

その影響なのかシュヴァルツもよくない方向にいっていたらしいが、結婚を期に落ち着くだろうか。

三人ともいい縁に恵まれずにこの歳にまでなってしまったが、そろそろ腰を据えなければならないようだ。


彼と話した数ヵ月後、同盟が結ばれた瞬間から辺境は恐ろしいほどに静かになった。

戦いに明け暮れていた自分にまるで戦利品のように嫁いできた少女フィオーネはずっと敵対していたアーテルム帝国の辺境伯、レラ辺境伯の末娘だそうだ。

こんな幼い少女を嫁がせるレラ辺境伯にも驚きだったが、この同盟がきっかけで争いはピタリと治った。

王家の血筋を引く彼女を無碍にもするわけにもいかずに、受け入れるしかなかった。



「はじめまして、シーディリフ辺境伯。フィオーネと申します」



ホワイトシルバーの髪、エメラルドグリーンの瞳は何もかも見透かすように透き通っていた。

恐ろしいほどに純真で血に濡れた手のひらでは触れることはできない存在。

人を殺めてばかりいた自分にはフィオーネは美しすぎた。



「サフィード様と、呼んでもよろしいでしょうか?」


「…………好きにしろ」



この時、フィオーネは十五歳、サフィードは二十五歳だ。

見た目も真逆。フィオーネは美少女でサフィードは野獣だった。

夫婦というにはあまりにも歪つで不恰好に思える。

自分よりも小さく弱々しい少女にサフィードはどう触れていいか戸惑っていた。

彼女は自分の運命を受け入れていたのかいないのか、それすらもわからないからだ。



「あっ……気に障りましたら申し訳ございません」


「…………」



サフィードは泣きそうになりながら謝るフィオーネを見つめながら眉を寄せた。


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