この国の王が不治の病にかかったという事で急いだら、最悪の最後だったんだが。
「紀如呂様が不治の病に!?」
「うん、そうみたい……華子団長から手紙が来たわ。これ。」
そう言って、上級薬師仲間の粕麻李は少し汚れている白く細長い封筒を私に差し出した。
私はそれを奪うように取り、封筒を投げ捨てて、中に入っていた手紙を読んだ。
急いで書いたのだろう。
筆跡がとても荒かった。
一番上には、如呂宮薬師団所属上級薬師へという文字と共に、緊急出勤を要請するという、いわゆる緊急出勤命令が下されたということも書いてあった。
その後は、この国の王、紀如呂様が不治の病、亜多離阿という、不治の病にかかったことも書かれてあった。
「大変じゃない! 早くいかないと、紀如呂様が……!」
「あっ、瑠璃! ちょっと!」
私は自分の部屋に飛び込み、大きなバッグに荷物を詰め込んだ。
紀如呂様が住んでいる如呂宮までは、緊急出勤命令で使う『薬師用宿泊馬車』を使っても最低十二時間はかかる。
私はありったけの薬草、道具を詰め込んだ。
準備が終わって部屋の外に出ると、同じタイミングで隣の部屋の粕麻李が出てきた。
「ちょうど良かった! 粕麻李も一緒に行こう!」
「あ、うん!」
私は粕麻李と共に、薬師寮の門へ向かった。
この寮には初級薬師も住んでいるため、突然バタバタしながら馬車が来たことにとても驚いているようだ。
もちろんこんなことを気にしている場合ではないので、お構いなしに私たちは門まで行き、馬車に乗り込んだ。
つくまでの間、私たちは如呂宮薬師団であることを示す服を着て、仮眠をとった。
「瑠璃ー? もう着いたよー!」
「んっ、ん? ああ、もう着いたんだ!」
粕麻李の声で、私は目覚めた。
「ほら、行くよ! 紀如呂様が大変なんだから!」
「あ、うん!」
私と粕麻李は馬車を下りて、如呂宮に足を踏み入れた。
如呂宮の紀如呂様の部屋に行くと、すでに何人か薬師団の団員、そして医師団の団員が治療を進めていた。
「ああ、粕麻李、瑠璃。よく来ましたね。」
声のした方を向くと、薬師団の団長、華子団長と、医師団の団長、乃医来団長が立っていた。
「紀如呂様を改めて診断しましたが、やっぱり亜多離阿であることは間違いないです。推測で一番適したお薬を紀如呂様に飲んでいただくか、今薬師団と医師団で検討中なんです。」
「それはどのような理由で?」
粕麻李が間髪入れずに団長たちに聞く。
「検討中のお薬は、副作用があるのよ。これを飲むと、それから一週間は、立てなくなったり、手や足が動かなくなったり……人によって様々だけど、必ずどこか、一週間麻痺して動けなくなってしまうの。」
「!?」
粕麻李は息をのんだ。
無理もない。
この街……いや、この国の全ては、紀如呂様に託されている。
また運の悪いことに、明日には隣国との懇談会も開かれる予定だ。
外交関係を深めるいいチャンスなのに、もし紀如呂様がご出席されないとしたら、将来的にも、経済的にも多くの損失がある。
「それはいけない!急いで適したお薬を処方しなければ!」
粕麻李は紀如呂様に駆け寄った。
「粕麻李!慌てずに。急いで雑に処方しても何の意味もありません。それどころか容態が悪化してしまう可能性もあります。瑠璃。どのようなお薬がいいか、ちょっと考えてくれない?」
「はい。」
私は団長の言葉にこくりと頷くと、処方するお薬を考えた。
今の研究で分かっている亜多離阿を最大限治す薬は、やっぱり今検討中の薬……おそらく守十夜の薬草しかない。でも副作用がある。麻痺する副作用を防ぐため、麻痺を和らげる廼簑加の草をすりつぶしたものを混ぜるしかない。一回これを処方してみよう。
「粕麻李!そして薬師団の団員!聞いてください!」
私の声で、薬師団の団員が一斉に振り向いた。
「その今検討中のお薬……おそらく守十夜でしょう。それに廼簑加の草をすりつぶしたものを混ぜて!廼簑加は近くの湖のほとりでとれます。今すぐつんできて!」
「はい!」
粕麻李をはじめた薬師団の団員は大きく頷き、急いで湖に向かっていった。
あっ、私も指令塔になってるだけじゃいけない、一緒に行かなきゃ!
私は必死に、湖目指して走り出した。
「あっ!」
私は足を滑らせ、湖の中に落ちた。
目覚めると、そこは見慣れた薬師寮の廊下だった。
「あ、瑠璃! 落ちついて聞いて、紀如呂様が不治の病にかかってしまったらしいの…」
「紀如呂様が不治の病に!?」
そこで、私は気づいた。
時が、繰り返していることを。




