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出会いと死期

「いやー、楽しいな」


俺は山登りを日課にしている。片道三十分ほどで登り切れる低い山だから苦もたいしてない。

楽しそうに鼻歌までしていると横穴つまり洞窟を見つける。


おかしい...この山を一年ぐらい登っているが洞窟なんて見たことがない。

鼻歌は止まり、視界をはっきりとさせ、慎重に洞窟の中に入ることにした。この時、なんで入ったのか自分でもわからなかった。


洞窟の中なのに生物の一匹も見つけられず奥に進んだ。


「あ」


四肢にお札が貼って、宙に浮かんで目を閉じている男性を見つけた。他にも角が生えているがそんなことはどうでもよく、俺はお札を無意識の内に剥がした。お札は粘着しておらず滑るように取れた。


そうして彼は目覚めた。


「そうか、お前が俺のことを目覚めさせたのか」


心の内を見通すような瞳を向けてくる。不思議な感覚に陥っていると黙っている俺に口を開いた。


「俺の名前は斧擬(ふぎ)鬼神、鬼だ」


沙良(さら)(とおる)です」


鬼?自己紹介文に疑問に思いながらも質問することにした。


「どうして眠っていたんですか?」


「眠らされていたって言った方がいいかな、とりあいず徹、俺の弟子になれ」


「は?」


「お前は変われる、俺は弟子を取れるwinwinな関係なわけだ」


話が見えてこない。どうして俺が変わりたいと気付けたのか、どうして弟子を取る必要があるのか。

疑問を抱えながらも俺は斧擬鬼神の弟子になった。


それからというもの散々だった。学校が終わればすぐに向かい、斧を振り、休日は朝から斧を振り、時には師匠に歯向かって斧を振るい、ボコボコにされ、試練も受け、七年も過ぎた。そのころには師匠の喉元に斧の刃が届くまでになった。犠牲になったのは青春だった。





「大学とやらに行くのか」


「はい」


「...そうかそうか」


桜がもうすぐに開花するかといった時期だった。大学のため、俺はここから離れなくてはならない。

師匠は世界に疎かった。正しくは古い。平安時代の文化で生きていた。その点から数百年封印されていたというのは間違えではないだろう。


「最終試練を行う前にこれを」


師匠は手斧を投げてきた。


「まったく危ないですよ」


「構わん」


柄を掴む。危険性を訴えても構わんってえぇ...。いつも通り困惑している俺をよそに師匠は話始める。


「その武器は斧動回帰、通常、それは異空間に収納されている。使用者が念じれば収納、取りだしができる。また使用者の意思によって大きさ、重さが異なる武器だ」


そうなんだ。俺はさっそく異空間に収納をしてみると斧動回帰は手元から消え、また手元に取り出すこともできた。


「それが無意識にできるようになれば、その武器に自信がつくだろう。また霊力だっけ?まぁ、この前に習得させた力を纏えば霊とかの物理が効かない相手にも通用するから...それじゃあ最終試練をする前に覚悟を示してきてね」


「は?」


話を聞きながら斧動回帰を振り下ろしている俺は突如として視界が変わる。


空は血染めしたかと思うほど赤く、月はない。地面は少しぬかるんでいた。

少しの間、呆然としていると足に痛みが走る。


「痛!!」


足の方に視線を移すと蛇が噛みついていた。無数のヒルも蛇とは別の足に吸い付いていた。


「うわぁあああ!」


驚き、ヒルを無理矢理払いのけて、蛇は頭を掴んで、牙を外し、適当に投げる。


この場にいては繰り返しになる!そう思い、沼地から脱出するために足を上げ、踏み出した瞬間、体が落ちた。抗う暇すらない。

肩より下が泥に埋もれる。

迫るのは無数のヒルと蛇。

視線が合い、なおさら怖くなる。

このままでは死んでしまう。そう感じる。

俺はそこで臆してしまった。



読んで下さり、ありがとうございます。

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