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魔術の力と探索者の端くれ


自宅へと帰って私は食事の準備へと取り掛かる。

プラスチック製の容器から数粒、サプリメントを取り出す。

食事といっても、脂質だとかビタミンの入ったサプリメントを水で流し込むだけなのだ。

飯で時間をかけてはいられないからだ。

ゴクリとサプリメントを飲み終わり、服を脱ぐ。

ちなみに寝巻とか下着とかはきちんと女物を利用している。


着替え終わり今日手に入った宝物(アーティファクト)を取り出す。

羊皮紙の巻物…、おそらく魔伝紙(コデックス)か。

つまり魔法関連の宝物(アーティファクト)ということだ。

魔法はあんまり詳しくないんだよな。

魔法というのはこの世の理を無視した術のことだ。

つい五、六年前までは空想の産物として扱われていたものだ。

ま、デメリットはないわけだし使ってしまおう。

羊皮紙を束ねていた紐を緩めると、青い炎の字が浮き出てきた。


個人収納(インベントリ)


インベントリって、よくゲームとかで出てくるやつだよな。

これは便利な力だ、仕事の役に立つだろう。

魔伝紙(コデックス)で習得した術は一生その人のものとなるらしい。

試しに個人収納(インベントリ)にスピードローダー一つとリボルバーの弾薬を十発ほど放り込んでみた。

そしてスピードローダーを取り出す。

よし、異常はないようだ。

私は個人収納(インベントリ)に食料と水、スピードローダーと弾薬を少々入れることにした。


ラジオのスイッチを入れる。

テレビや新聞なんてものはもうないのでラジオくらいしか情報源はない。


特異空間(ルーム)関連の情報を報告します。」


若干ノイズのかかった声でニュースが始まる。


略奪者(レイダー)による暴行事件が拡大しています。」

「今日午後二時頃、特異空間(ルーム)556にて暴行事件が発生しました。」

「犯人はガスマスクをつけており、催涙ガスのようなものを投げつけ逃亡したようです。」


は?私が暴行したって?

アホかそんなこと私はやってないぞ。

まさか催涙ガスが暴行判定になったということか。

まずいぞ、より一層注意して仕事しないといけないじゃないか。

ダルいな。

もう寝てしまおう、ずっと気を張っていたら疲れてしまうからな。

そう思った私は倒れ込むように寝てしまった。


====


ピンポーン!


ドアベルが押されて甲高い音が鳴り響く。

くそっ、朝っぱらから何だ。

ベッドから飛び起き玄関へと向かう。

ドアスコープを覗くと、そこには昨日の探索者(サーチャー)の少年がただ一人立っていた。

まずい、まずいぞ。

これは捕まえられてムショに突き出されるパターンじゃないか。


「助けてください。」


あれ、私を突き出すつもりではないのか。

イヤイヤ、これは巧みな話術で私を誘き出そうとしているに違いない。

ひとまず様子見しないと。


「すみません、あなただけが頼りなんです。」


少年が泣きそうな声でこちらへ語りかける。

あー、これはマズイな。

上げないと近所迷惑になってしまう。

それに人を泣かせて帰らせるのも後味が悪い。

私はガスマスクをつけて少年へと語りかける。


「少し待っていろ。」


よし、今のうちに着替えなくては。

クローゼットへと走り、服をマッハで着替える。


「入れ。」


ドアを開き、少年を招き入れる。

少年はトボトボと家の中へ入った。


「何の用だ?」


最初は強気な喋り方にしなければ。

相手に甘く見られてしまっては困る。

少年は下に顔を向けながらボソボソと話し始めた。


「あなたの弟子にしてください。」


は?弟子してくれだって?

いきなり過ぎだろう。

ここは一つ聞いてみるとしよう。


「お前、探索者(サーチャー)じゃないのか?」


「辞表を…提出しまして…。」


「は?探索者(サーチャー)辞めたのかよ、なんでだ?」


「もう金がないからです…。」


よくある話だ、初期費用がなかったり運悪く私達のような略奪者(レイダー)に売却予定の品を盗まれたりしてスッカラカンになって辞めるハメになる。

でも、略奪者(レイダー)になる理由は?

そこを詳しく聞いてみるか。


「なんで弟子にしてほしいんだ?」


「もうそれしか道が無いんです。」

「僕には戸籍が無いもので。」


「なるほど、ならそれしかないだろうな。」


戸籍がないヤツのやれることは裏社会の仲間入りか略奪者(レイダー)堕ちか。

こいつは後者を選んだということか。

まあ、いいか。

昔から何かを教える事が好きだったし。


「まあ、いいだろう。」


「いいんですか…?」


「三食寝床付きでな。」


―――グゥーーー。


向かい合って座っている二人の腹が同時に鳴った。

そういや私、飯食べてなかったんだった。

そうだ、早速期待の新人君に君にお使いでも頼むとするか。


「早速おつかいを頼める?」


「はい!」


少年は威勢のいい返事をした。

少年の顔は雨雲の去った青空のように明るくなっていた。















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