4-2.重なる解②
針葉樹の森へ入ったところで、シキは問う。
「いつから騙していた?」
勇利は、純白の大地に視線を落とした。
「……初めて会った時から。かな」
「だな。お前が『ストランノスチ事件』の生き残りだって、さっき知ったし」
「母にかばわれ、俺だけが生き残った。……吹雪の中をスニエークが歩いていた。水色の目に真っ白な髪。今でも鮮明に覚えている」
当時を思い出したのか、勇利の目元は険しい。
「全部あいつの仕業だ、人間じゃない。ってすぐにわかった。調べた末に、気象兵器に行き着いた」
「それで、対抗するために力を?」
「あぁ。グロワール家には赤子の頃から世話になっていたから、気象兵器の存在は知っていた」
『グロワール』の名が出た瞬間、シキは足を止めた。
「……半殺しにするほど、エクレレが憎かったのか?」
青い目は瞬き一つせず、口調は固い。
「違う」と語気を強め、勇利は即答した。
「要人を殺害しかけたという、事実が欲しかった。裏社会に溶け込むために、仕方がなかったんだ……!」
感情を押し殺しているのか、首の筋肉が動く。
「どうして黙っていた? 俺とお前の仇なら協力できたはずだ」
「……お前にはわからない」
詰め寄るシキから視線を逸らし、勇利は吐き捨てる。
「エクレレ様を傷つけ『サイファ』の首を手土産に、帝国に潜入した。……長い年月だった」
「は?」と、シキの顔が強張った。
「お前がサイファを殺した? じゃあ、公女に接触したのは──」
「俺だよ」と、勇利は笑う。
つぅ。と口の端から血が滴り落ちた。
「お前を引き込むためにサイファを演じた。……いいか、よく聞け」
木の幹にもたれると、空を見上げる。
「クローネ大公は、サイファを匿っていない」
「は?」と、シキから間抜けな声。
もう、似通った反応しかできない。
「あれはサイファの存在を、証言させないための嘘だ。死んだはずのサイファが生きていたら、殺したはずの俺が疑われるだろう」
腹部に手を当て、勇利は片目を閉じた。
「お前、そこまで考えて……」
さらなる告白に、シキは息を止めた。
「サイファの存在をIMOに露見させたのも、皇太子を暗殺未遂で終わらせたのも、わざと計画に綻びを作った」
背を幹に擦りながら、勇利は雪上に座り込む。
「そして、俺との再会。この計画に、お前は自ら身を投じたんだよ。ッ──!」
湿った咳とともに、大量の血を吐いた。
「勇利!?」
我に返ったシキは、勇利の体を支える。すぐに濡れた感触を覚えた。
寒さで感覚がなくなりかけた手には、温かい血が付着していた。




