表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/145

4-1.重なる解①

 ハロードヌイ国境警備基地から、南へ十キロ。

 粉雪の中、空間が歪む。転がり落ちるように、勇利ゆうりとシキが飛び出した。


 受け身を取れず落下したせいだろう。

「うっ」と、シキから呻き声。


「早く立て」

 暇を与えず、腕を引っ張る勇利。


「いてぇ! 肩、怪我してるから!」

 貫かれた肩と連結していたため、シキは激痛に悶えた。


「はぁ」と、勇利は手を離す。

 懐から包帯を取り出すと、応急処置を始めた。


「……まさか、お前にかばわれるなんてな」


「死なれたら困るんだよ」

 処置を静かに見守る、シキの目は鋭い。


「けど、褒めてやるよ。やっと『地脈』を開けるようになったな」


「地脈? 瞬間移動のことか?」

 目の前が歪んだ瞬間を、シキは思い出した。


「あぁ。地球のあちこちに走る不可視の道だ。気象兵器はそいつを使って移動できる」

 包帯の端を処理し、勇利は頷く。


「地脈を開けるようになって、気象兵器と呼べる」


「……お前、俺を試したのか?」

 

「そうだ、お前が未覚醒だったのは想定外。だから強引な手段を取った」

 恨むなよ。と勇利は笑った。


「……己の惨めさに腹が立つ」

 責めることはできず、シキはうつむいた。


「風は現象のきっかけに過ぎない。その上、利用されるだけ。……何のための力なんだ」

 珍しく弱気な言葉だ。


「お前はバカか」と、勇利からため息。


「風はきっかけを作るだけじゃない。スニエークも言っていただろう。現象を活性化させると」


「活性化……?」


「例えば、さっきの炎。お前、どこかで炎の眷属けんぞくに触れたな?」


「あっ」と、シキは顔を上げた。

 暖炉から現れ、自身へ消えたトカゲを思い出す。

 

「お前の怒りに炎の眷属が呼応し、風によって巨大化した。あれが活性化だ」

 あとはわかるな? そう言って、勇利は口角を上げた。

 

「……風は現象の根源。だから、他の気象兵器の眷属が見えるのか」

 ついに、シキは答えに辿り着いた。


「早くに知っていれば、俺に負けることはなかった……かもな」

 勇利は目を細め、天を仰ぐ。


「吹雪が収まった、すぐに追手が来る」


 行くぞ。と差し出された手を前に、シキは戸惑った。


 窮地を脱するには、この手を取る選択肢のみ。

 今は勇利を頼るしかない。覚悟を決め、手を掴み立ち上がる。


「スニエークはどうなった?」

 歩き出してすぐ、シキは口を開く。


「炎はかなり効いただろうが、死んではいない。氷の気象兵器は脆いが、再生速度と不死性がずば抜けている」


「あいつ、どうすれば仕留められる?」


 心臓がある場所を貫こうとも、半身を欠損しようとも死なない。

 肉体がなければ、殺す術がないのだ。


「『核』を取り出す」


「核?」


「いわゆる心臓、気象兵器の本体だ。普段は全身を循環しているが、戦闘状態になると一点に集中する。取り出すのは簡単じゃない。宿主を極限まで弱らせる必要がある」


「さっきの戦いで相当の痛手は与えただろう? 俺とお前で、あいつを倒そう」


「……そうだな」

 勇利は目を伏せ、微笑を浮かべた。


 どちらも満身創痍だ。歩くたびに血が落ち、雪上に赤い花が開く。

 追手に辿られてしまうが隠す術はない。


 足を引きずりながら歩く勇利に、シキは肩を貸した。


「お前のお人好しも、相変わらずだな」


「言ってろ、今だけだ」

 軽口を叩き合う二人は、かつての友人同士に戻りつつあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ