5-3.二つの隠し事
生け捕りにした襲撃者に、弾が撃ち込まれる。
体が跳ねたあと、動かなくなった。
「で? 話を聞かせてもらおうか」
血の海を歩き、アウルは拳銃をもてあそぶ。
「待て」と、エクレレが制した。
「母屋に場所を移そう」
死体の山を一瞥し、首を振る。
「……そうですね」
願ってもいない提案に、一同は素直に頷いた。
母屋は全ての雨戸が閉じられ、要塞と化していた。
扉を叩くと、ガチャガチャと解錠の音。しばらくして、ニコラが顔を出す。
「ご無事でしたか」
安堵した様子で、エクレレを見た。
「母屋は無事か?」
「はい。使用人たちは地下に避難させています」
「まだ油断はできない。朝まで待機させておけ。あと、飲み物をくれるか?」
「かしこまりました」
ニコラは一礼し、早足で去った。
「みんな! ……よかったぁ」
リビングから、セアリアスとジェネロが飛び出した。
非戦闘員の二人は、母屋に避難していたのだ。
「怪我は……なさそうだね」と目を細め、ジェネロは息を吐く。
「すごい銃撃だったね」
「アウルの馬鹿が大暴れした」
「お前だって、やりたい放題だったろ」
ガルル。と唸る勢いで、アウルはヴォルクに詰め寄る。
「で、さっさと話せよ。シキはどこにいるんだ?」
「ザミルザーニの、ハロードヌイ国境警備基地」
もったいぶることなく、ヴォルクは即答した。
ハロードヌイとは、ザミルザーニの南端。
レヒトシュタートからどんなに急いでも、二日はかかる。
「……なぜ知っている?」
胡乱な目つきで、アインが声を上げた。ここにいる全員が、抱いている疑問だろう。
「俺は帝国育ちの人狼だ。……そんなに身構えないで」
シュッツェとアインの、動揺を感じ取ったらしい。
ザミルザーニは嫌いだ。とヴォルクは付け加えた。
「それなりにパイプがある。だから知っていた」
「……その情報は信用できるのか?」
なおも、アインは追及を止めない。
「半々かな。だから俺一人で行く。これは俺にしかできない役割だ」
有無を言わさない口調に、反論する者は一人もいない。
「……そうだな」
最初に口を開いたのは、アウルだった。
「帝国の端っこだとしても警備は厳重だ。俺たちが殴り込んだところで、蜂の巣にされるだろ」
不満そうだが、最善の手だと判断したらしい。
意外と、思慮深さも持ち合わせている。
「じゃあ、俺たちは宴会の準備でもするか」と歯を見せ、軽口を叩く。
一同の頬が緩み、陰鬱な空気が和らいだ。
しかし──。
ヴォルクのさらなる告白で、振り出しに戻るのだった。
「もう一つ、隠し事があるんだけど」




