表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/145

5-2.闇に注意

 グロワール邸の灯りが、全て消えた頃──。

 闇より、狩人たちがやってくる。


 夜風とともに森を抜け、柵を音なく飛び越える。

 狼の横顔をかたどったエムブレムが、月光に煌めいた。


 ピッキングによって、離れの扉は難なく開錠。

 わずかに開けた隙間から、内部の様子を探る。異常なしと判断後、手のひらを前後へ振った。


「進め」の合図とともに、先遣隊が内部へ。階段や柱の裏、談話室の扉を開け死角を確認。

 一人がクリア──OKサインを作った。


 警戒しつつ、半数が二階へ。行き先は、標的ターゲットたちが眠る部屋。

 アイコンタクトを取ったあと、一人が手のひらを前後に振った。


 扉を蹴破る音が、離れに響く。しかし、銃声や悲鳴は上がらない。


 すぐさま、襲撃者は異変に気づく。毛布の中央は膨らんでいるが、起きる気配がないのだ。

 早足でベッドまで寄り、毛布を剥がす。

 そこには、簀巻すまきにされた別の毛布が転がっていた。


 その時──。

 真っ暗な部屋の、扉の影から何かが動く。伸びた銃口と、光る緑色の目。


 襲撃者は振り返るも、すでに遅い。ゴリ。と額に銃口が当てられる。

 消音器サプレッサー越しの小さな発砲音とともに、マズルフラッシュが閃いた。


 眉間に空いた穴から、血と脳漿のうしょうが飛び散る。

 伐採された木の如く、襲撃者はベッドに倒れた。


 物音に気づいた、隣室の仲間が動く。しかし、闇から伸びた腕に首を掴まれた。

 数秒後には、死体となって廊下へと投げ出された。


 突入した仲間たちが、一人も戻ってこない。

 廊下で待機していた後続は、闇に銃口を向けた。不気味に広がる黒に、踏み込めずにいる。

 

「こっちだ、マヌケども」

 どこからともなく、罵声が上がる。

 

 廊下の最奥に、人が立っている。その手には短機関銃サブマシンガン

 

 刹那──。

 マズルフラッシュが稲妻のように閃き、乾いた銃声が轟いた、


 次々と空薬莢からやっきょうが排出され、冷たい音を立て落ちる。

 廊下には飛沫血痕が飛び散り、天井まで到達した。

 手足と臓器を撃ち抜かれた襲撃者たちは、叫びを発することもできない。


 短機関銃を肩に載せた、アウルから会心の笑み。

 シュッツェ、アイン、ディア、ヴォルクが部屋から出た。


 一階にいた別働隊が、一斉に二階へ。

 階段を上がった先に待っていたのは、狼のような黄色い目。


「待ってたよ」と、ヴォルクが先頭を蹴飛ばした。


 ドミノのように、襲撃者たちは転がり落ちる。ある者は、首を折って即死した。

 

 騒音を皮切りに、戦いがついに動き出す。外で待機していた、第二陣がなだれ込む。

 

 だが、形勢逆転とはいかない。

 全員が、エントランスホールに入った瞬間──。

 

 最後尾の後頭部に、銃口が当てられた。衝撃で体が押し出され、頭がぜた。

 

 背後を取ったのは、漆黒のガウンをまとうエクレレ。

 反撃の隙を与えず、さらに発砲。


 絶叫とともに、数人が崩れ落ちる。もちろん、一切の慈悲は与えない。

 ヴォルクが首が裂き、アインとディアが淡々と仕留める。


 シュッツェは、照明のスイッチに手を伸ばす。

 いうまでもなく、血の海が広がっていた。


「どいてろ!」と、アウルが吠えた。

 タタタン。と三点バーストを繰り出せば、確実に急所を貫く。


 今の襲撃者たちは、ほふられる運命を待つ生き物。

 だが、暗殺者としての矜持きょうじは折れていない。


 短剣を手にした生き残りが、公世子こうせいしを襲う。

 一矢報いなければ。と必死の形相だ。


「死んでたまるか」と、シュッツェは拳を構えた。

 

 スウェーでかわし、渾身こんしんのストレートを叩き込む。

 十五歳から始めたボクシングが、ここで役立つとは。

 傍観者さえ、快感を覚えるほどのクリーンヒットだ。


 不意に、銃声が止んだ。

 目の前の光景には、死屍累々《ししるいるい》という言葉が相応しい。


「よくも、人様の家で暴れてくれたな」

 腕を組み、エクレレは不機嫌そうだ。


 あんたもノリノリだっただろう。とは言えず、一同はうつむく。


「まさか、こんなに早く来るとはね」

 アウルは、くわえた煙草に火を点けた。


 最大の障害であったシキを排除し、シュッツェを捕らえに来るだろう。

 それが、一同が導き出した答え。


「生き残りは二人か。十分だな」

 煙を吐き出し、悶絶する襲撃者を見た。


「居場所を吐かせるの?」と、ディアが問う。


「あぁ。どんな手を使ってもな」

 猟奇的な光を目に宿し、アウルは笑った。


 拷問。と即座に察したシュッツェは、震える手を組んだ。


「こいつらは必要ない」と、ヴォルクが割って入る。


「はぁ?」

 当然、黙っている男ではない。煙草を指で挟み、アウルは詰め寄った。


「死体は『カラス』に処分させる」


「正気か? せっかく手に入れた情報源だぞ?」


「……シキの居場所は、俺が知ってる」

 普段通りの能面顔で、ヴォルクは言った。


「おまっ……何言ってんの!?」


「どういうこと!?」


 誰も彼も、不意を突かれた間抜けな面だ。次々と頓狂とんきょうな声が上がる。


「静かに」と呟くヴォルクは、うんざりした様子。

 

「ちゃんと話すから。……長くなるよ」

 そう言って、短剣に付いた血を拭った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ