6-2.強さの理由
ポーカーに興じようとしていた一同が、口をつぐんだ。
全ての視線が二人へ集まる。
「昨日の君の戦いぶり。あれは人間の成せる技ではない」
ためらいがちに、アインは口を開いた。
車から車へ飛び移る、脅威の身体能力。
青い光が刀になった瞬間。警官を吹き飛ばした突風。
一つ一つを思い出し、さらに続けた。
「初めて会った時、君に恐怖した。私には、君が人間の姿をした『何か』に見えた」
「……へぇ」
その言葉に、シキが起き上がる。
アインは、反射的に身を固めた。
静かな睨み合いに、中弛みが広がった頃──。
「やっぱり、アインにはわかるか」
降参したように、シキは微笑む。
「あぁ。半分はパライ人の血が流れているからな」
竜人や獣人は、動物の特徴が濃く出る種族。
人間よりも五感が鋭く、危険察知能力に優れる。
「お察しの通り、俺は『風の気象兵器』だ」
「……まさか、本当にいるとは」
鳥肌が立つ腕をさすり、アインは首を振った。
遥か昔──。
青銅の武器が台頭し始めた時代に、それは生まれた。
暴風、火災、万雷、豪雨、吹雪、地震。
地球活動に意思が宿り、人の姿となったもの。
いわば自然の化身であり、災害級の力を持つ。
それらは『気象兵器』と呼ばれ、畏怖の対象となった。
時代の流れとともに姿を消し、今や忘れ去られた存在。
「……だとすると、シキは人間ではない?」
「いや、生物学上は人間だ。俺は気象兵器の『器』ってやつ」
「『器』って?」
聞き慣れない言葉に、アインは首をかしげた。
「簡単に言えば、気象兵器の核を宿す存在。核は不安定だから、何かに収まってないといけない。俺はその役割を担っている」
「なぜ、その力を持っているんだ?」
追求の手を緩めないアインに、シキは苦笑した。
「悪いな。それは言えない」
不意に、口元から笑みが消える。
何も話さない。という確固たる決意を感じたのか、アインは息を吐いた。
「わかった。不快にさせたなら謝る。すまない」
「いいよいいよ。……で、俺が気象兵器だと知って怖くなった?」
「いや。全然」と、アインは即答した。
「そちらのお兄さんは?」
シキは、続けてシュッツェを見た。
「怖いわけあるか。むしろ納得したよ」
ぶんぶんと首を振り、シュッツェは快活に笑う。
「お前、物怖じしなくなってきたな」
「気象兵器が味方だなんて、この上なく心強い。これからも頼りにしてる」
皆も。そう言って、シュッツェは仲間たちの顔を見た。
「任せとけ。どこまでも付き合うさ」
頼もしげに得意げに、シキは頷いた。




