6-1.もう一つの同盟国
『シュッツェ・ネイガウスの亡命について、ルフェーブル連邦大統領は「一切の協力はしていない」と改めて強調しました。また「国民の皆様には、冷静な対応をお願いする」とも述べました』
「及第ですかね」
パーソナリティーの声に耳を傾け、セアリアスは呟いた。
『亡命に関与したIMOは声明を発表し「これは人道的支援の一環である。事態収束に当たらなかった、同盟国の責任は重い」と政府を非難しています』
「流石は総司令。噛みつくのも忘れていない」
ストレングスの顔を思い出したのか、ジェネロは苦笑する。
ローカルニュースに変わったところで、ラジオの電源が落とされた。
二度の乱闘から一夜。
シュッツェ一行は『IMOアリステラ大陸方面・ヴェルメル支部』にいた。
セアリアスたちと合流し現在に至る。
「セルキオ政府とIMOができる、最大限の火消しだな」
あくびとともに、アウルは頬杖をつく。
「これ以上、セルキオに留まるのは難しそうだ」
どうする? とシキを見た。
「あー? うん」
返ってきたのは気の抜けた声。
ぼんやりとした顔で、シキはパンをかじる。
珍しくコーヒーを飲んでいるが、効果はないらしい。
目元には、うっすらとクマが広がっている。
支部に到着したのは午前二時を過ぎた頃。
眠るかと思いきや、シキは手紙を書き始めた。
そこから、朝方まで地図と睨み合っていたのだ。
その時、ヴォルクが戻ってきた。
ベイツリーへ帰還するストレングスを、軍港まで送ったらしい。
「手紙も出した。昼過ぎには届くって」
シキの向かいに座ると、断りもなしにパンを食べ始める。
「で、これからどうする?」
進展のなさに苛立ったのか、シュッツェは語気を強めた。
「……レヒトシュタート」と、シキが呟く。
それはセルキオに次ぐ、もう一つの同盟国の名。
「あの国は……」
シュッツェの目に、逡巡の色が浮かんだ。
「役立たずって言いたいんだろ?」
「……そうだ」
レヒトシュタート帝国は、大貴族ディアマント家が治める国。
二十年前までは、軍事面や経済面で強大な力を誇っていた。
しかし女帝の治世となってからは、保身と欲に塗れた国となった。
「近頃は異民族の独立が相次いでいる。アリステラで一番、不安定な国だ」
広げた地図に視線を落とし、シュッツェは唸る。
「頼りにするつもりは、なかったんだけどなぁ。セルキオにいられない以上、仕方がない」
半目で、シキは首を振った。
「レヒトシュタートには知り合いがいるんだ。書いた手紙は、そいつ宛」
「巻き込むことになるんじゃないか?」
「それは、向こうの返答次第」
背伸びとともに立ち上がると、シキはベッドへ向かう。
ようやく眠るらしい。
「じゃ、しばらく暇になるな。ポーカーでもするか?」
地図を片付け、アウルはトランプを出した。
シュッツェも混ざる中、アインは思案に耽っていた。
しばらくして、無言で立ち上がる。
「シキ」と、ベッドに寄った。
「んー?」
「……君は何者だ?」
それは抑揚のない、問いただす言葉だった。




