表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/145

4-2.本当の真実

 運転席のアウルは、三本目の煙草に火を点けた。

 換気のため、全ての窓は開いている。


「なんか退屈だな。話でも振ってくれ」

 くわえた煙草を上下させ、暇そうな声だ。


「煙草、それで終わってくれるなら」

 シキは、不快そうに鼻をつまむ。


「じゃあいいや」


「ふざけんなよ」


「喧嘩しないで」とシュッツェは、ため息を吐いた。


 煙草の臭いも不快だが、窓から入る風が痛い。

 かじかむ手を擦っていたが、あることを思い出す。


「……何?」

 名前を呼ばれたことに、シキは気づく。


 しかし、シュッツェの声は吹きすさぶ風にかき消された。


「話がある! 窓を閉めてほしい!」

 シュッツェは大声を出し、窓を指差した。


「煙草をしまえ! 話があるってよ!」

 アウルの耳に顔を近づけ、シキはわざとらしく怒鳴る。


「うるせぇ!」と、アウルから舌打ち。

 渋々、灰皿に煙草を押し込んだ。意外にもポイ捨てはしないらしい。


 窓を閉めたことにより、騒音は和らいだ。

 

「あのさ。『X』について色々と考えたんだ」

 冷え切った手を組み、シュッツェは語り始めた。


「『X』はなぜ、レーヴェの死体しか残さなかったのかな。かなり用心深い人物だ。自分の死体も用意して、死んだことにすればよかった」

 そこまで言うと、歯の隙間から息を吸う。


「そうすればIMOはレーヴェの死を断定し、疑うことはなかった。……シキも気づいていただろ?」

 機嫌を窺う犬のように、シュッツェは視線を上げる。


「あぁ」と、シキは頷いた。


「矛盾というか、計画の綻びで『X』はIMOに追及されることになった」


「まさか『X』は、わざと自分の存在を匂わせたのか?」

 助手席のアインは、顎に手を当てる。


「そう。で、その理由なんだけど……」

 シュッツェは、どこか言いにくそうだ。

 これが真実なら、()()()()()が遠ざかることを心配していた。

 

「『X』の中途半端な計画で、たった半日でレーヴェ生存説が持ち上がった。今思うと展開が早すぎる。その理由は──」

 大きく息を吸い、シュッツェは拳を固めた。


「俺が、再起不能にならないようにするためだ」


「……ほぉー」

 アウルの感嘆詞が、騒音に吸い込まれる。


「なるほどねぇ。お前、なかなかの頭脳派だな」

 嬉しそうに、シキは声を弾ませた。


「でも。それが当たっていたらレーヴェは……」

 本当に死んでいるかもしれない。と弱々しく呟いた。


「答えを出すには早すぎるぜ」

 サイドミラーを一瞥いちべつし、アウルは頭を振る。


 結局、本当の真実──レーヴェの生死はわからないまま。

 気を取り直し、シュッツェは窓の外を見た。


 変わり映えのない景色が続く中、川が姿を現す。

 川幅が広く流れが早い。

 その証拠に、ホワイトウォーターが発生している。


 川を横断する橋へ、車は向かう。

 数台のトラックと高級車が、対向車線を走り抜けた。


 晴天の下、順調に走っている。

 あと三十分もあれば、レクタングル市に到着するだろう。


「おい、アウル」

 不意に、シキが唸った。


「わかってる」と、アウルは口角を上げる。

 左手でハンドルを操作し、懐に手を突っ込んだ。


 右手には、自動式拳銃オートマチックが握られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ