3-2.交差②
「アイン!?」
呼ばれたシュッツェは、目を丸くした。
「嘘だろ」と、掠れた声が上がる。
破顔した瞬間、固い抱擁を交わした。
「無事でよかった。……本当に、安心したよ」
雑踏で親を見つけた迷子のように、アインは笑う。
諦めていた再会が、叶ったのも束の間──。
何も知らないアインが、疑問を口にする。
「レーヴェは?」
「……一緒に逃げたら目立つから、あとで合流するんだ」
シュッツェは、固い笑顔を作った。
「そうか。じゃあ、すぐに会えるな」
疑うことなく、アインは喜ぶ。
二人が談笑を始めたため、IMO隊員は互いを労った。
「お疲れさん」
いつものように、交わされるローファイブ。
「ウルフはどうした?」と、アウルは小声だ。
「トラブルがあった。あとで話す。……そっちも一人足りないな」
「こっちは正当な理由だ」
「そうか……。どうも、上手くいかない」
腰に手を当て、ジャガーはため息を吐いた。
「再会を喜ぶのはここまで。アウルとアインは、軍服から着替えて」
気を取り直すように、両手を叩く。
「もしや。大使と話していたのは、このためか?」
アウルに問いつつ、アインはコートに袖を通した。
「そ、越境する時に伝えた方が、大使に気を遣わせなくて済む。あんたに言うと、取り乱しそうだから黙ってた」
軍服を鞄に押し込み、アウルは笑った。
「少し、よろしいですか?」
申し訳なさそうに、クレモンが片手を上げた。
「大使の提案で、外務大臣との面会を設けてあります」
「本当ですか? ありがとうございます」
シュッツェは、驚きと喜びが混じった表情だ。
「人目を避けるために、支部に来て頂くことになります」
ご了承くださいと、住所が書かれたメモを差し出した。
「構いません。何時に伺えばいいですか?」
「十三時でお願いします。では、この辺で失礼します」
特別改札の通過後に、クレモンは腕時計を見た。
「お世話になりました」
謙遜の言葉を返し、クレモンは雑踏の中へ消えて行った。
「お帰りなさい」
ミリュー中央駅の一般車乗降場で、手を振る男。
「初めまして、ジェネロ・シティです」
下がった目尻は、見るからに人が良さそうだ。
「ジェネロもIMO隊員だ。彼は医者だから、不調があったら遠慮なく言ってくれ」
ジャガーは助手席に、残りは後部座席へ。いうまでもなく、車は超満員だ。
「すぐ着くから、我慢してください」
ジェネロは苦笑いを浮かべ、ウィンカーを出した。
「……二往復すると思っていたけど。何かあったのかい?」
少し経って、ジャガーに耳打ちした。人数が足りない理由を、それとなく聞いている。
「色々とね。……何だか、怪しい雲行きだ」
ヘッドレスに頭を預け、ジャガーは目を細めた。




