前章「金髪童貞のコンビニ店員」
俺は田代伝慈郎。みんなからデンジやデンジローと言われている。
唐突だが俺は牧野さんのオッ〇イを揉みたい。
何度でも言うが牧野さんのオッ〇イを揉みたいのだ。
あの大きすぎることもなくて、それでいて立派に膨らんで程よい形の。
ん? 牧野さんって誰かって?
俺の職場の上司だ。店長だ。それぐらい察しろ。
「おい、金髪、さっさと動けよ!」
唐突に俺に指図をしてくるコイツは早崎明来というチョンマゲの男だ。
俺よりこの職場では1年先輩だけでメッチャ偉そうに命令や説教をしてくる。
「うるせぇよ。チョンマゲ。俺は今ブログを更新しているんだ!」
「仕事中にする事じゃねぇだろ!」
「やるから。さっさとあっちいけ」
チョンマゲは舌打ちをして牧野さんのところへ行った。
あの野郎、俺をチクって牧野さんにへぇこらするつもりだな。
ブログも書き終えたし今から電光石火のスゴ技をみせてやる。
俺がこのコンビニで働き始めたのはここ2年前からだ。
つまらない理由で校内決闘をした俺は敵を完膚なきまでボコボコにさして病院送りにしてやった。敵も敵で悪名高い野郎だったが、ボクシング部の俺を小馬鹿にしたのが運のツキだった。
俺はそいつをぶっ倒したが、俺も重傷を負ってしまった。ボクシングの再起は不可能だと医者のハゲジジィに言われて、喧嘩の件も俺が一方的に暴力を振ったとか奴の取り巻きがでかい声をだしたお蔭でやむなく高校も中退する事に。
俺は絶望した。もうニートになるしかないと思ったけど、鬼のような両親らが「働け」と釘を刺してきた。俺は退学してからの半年でエロゲーというエロゲーをやりこみ、ユーチュバーになる計画をたてていたが全てぶっ壊された。
親父が俺のビデオカメラとパソコンを破壊したのだ。
俺は勿論キレたが俺の親父は俺よりも遥かに強かった。
俺は親父に病院送りにされてから職を転々とした。
とび職やガソリンスタンド、引っ越し屋さんやホストの見習いまで様々な事に挑戦してきたが、3カ月と持たなかった。そして10年の年月が流れた。
ただコンビニの仕事だけは1年続いた。1年続くが店のなかで喧嘩してしまうクセがどうしてもあるので、1年経つ頃には自然と辞めていた。
しかしある日ある時、俺はスカウトを受けたのだ。
「ねぇ、君、ウチで働かない?」
「え?」
俺がレジで会計を読み上げているときに突然彼女がこう切り出した。
いわゆる「引き抜き」ってヤツかな。
いや逆ナンってヤツだ。
俺はそう確信した。
面接の日、スカウトにきたその女性がその店の店長だと知った。
「君の接客。私はいいと思ったの」
「は、はぁ……」
「でも君さ、他の店員さんと喧嘩をしていたよね?」
「はい。俺が無断で休憩入ったのに腹たったらしく」
「ふうん」
「あの? 俺ってそれ平気でするけど大丈夫です?」
「勿論駄目よ。ルールは護らなきゃ。でも、ちゃんと働いてくれたら給料以外に何かしてあげようか?」
「え? 何かしてくれるのですか?」
「うん! 私のいう事をちゃんと聞くの! それを3年やりきったらね!」
「はい! やりきります!!」
「そう。何か欲しい物ある?」
「欲しい物……」
「やりたいことでもいいよ?」
俺はゴクリと息を呑み、そして視線を落とした。
俺はずっと気になっていた事があった。
彼女のオッ〇イは美しいのだ。
大きすぎることもなくて、それでいて立派に膨らんで程よい形。
「店長のオッ〇イを揉んでみたいです!」
店長の牧野さんは「ふふっ」と吹き出すと次に大笑いした。
彼女が「じゃ決定ね」と言われてずっと空席だった俺の人生の目標が埋まった。
そう、俺はこんな人生を送ってきたからろくにモテることもなく、オッ〇イを揉むこともなく生きてきた。
そんな俺に千載一遇のチャンスが訪れたのだ。
こうして俺の新たなる闘いが始まった。
しかし新たなる大地はまさに試される大地でもあった。その店は町外れにあり、そのクセ、店に来る客も一緒に働く店員も信じられないぐらいにクセの強い奴らばかりだ。
「いらっひゃいまへ~」
まだ20代なのに歯のおおよそがなくなっているコイツは名札に「パワー」と丸文字で書いているふざけたギャルだ。まぁ「デンジ」と名札に書いている俺も俺でふざけているのかもしれないが。
幸いお客さんがそんなに来る店ではない。
コレができてないアレができてないとうるさいチャンマゲや「〇〇を置いてもないのか!? その金髪は何だ!?」とか抜かすバーコード頭のオヤジ等々除き、無難に働こうと思えば働ける環境だ。
牧野さんなんか仏のような御方だ。
これまでどおり頑張れば遂にオッ〇イが揉める。
俺のその卓越したスキルで牧野さんは俺の彼女になるかもしれない。
そんな妄想が膨らんで止まらないコンビニ勤務2年目、夏の夜の事だ。
俺とパワーとチョンマゲら店員全員が呼びだされ、その発表があった。
「来月でこのお店を締めます。みんな、ありがとう」
みんな、言葉を失った――
俺が、俺が、俺が特に――