ドライフラワーとミア
初投稿です。ど素人ですがこんな世界観があったらいいなと思い書きました。
ミアとお花
ある小さな村に、お花が大好きな女の子がいました。名前はミア。金髪で長い髪のかわいらしい女の子でした。ミアは、いつもお花を見つけては摘み、お母さんとお父さんのところへ見せに行きます。2人はミアのその様子が可愛くて可愛くて仕方ありませんでした。
ある日、いつもの様にお花を摘んでいると木の下に銀髪の女の子が立っていました。ミアより背の高い、涼しそうな顔をした女の子でした。じっとミアの様子を見ていたかと思うと、猫が芝生を歩くように静かに歩いて側までやってきて、その銀髪の女の子はこう言いました。
「綺麗ね、そのお花。あなたはいつも若いお花ばかり摘んでいるみたいだけど、しってる?枯れたお花はもっと綺麗なのよ。見せてあげるわ。」ミアは突然そう声をかけられて戸惑い、ただ彼女をしゃがんだまま見上げていました。
すると銀髪の女の子は、ミアのそんな様子を気にもせず、持っていた木箱の中から枯れたお花を出しました。銀髪の女の子は優しい笑みを浮かべて、どう?とでも言いたげにその枯れたお花を見せました。ですがミアには汚れたお花にしか見えず、こう言いました。
「それが、枯れたお花?初めて見たわ。あまり綺麗だとは思えないけど…。」
と、気を使いながらそう伝えました。
ですが、枯れたお花を初めて見たミアは、お母さんとお父さんにも見せてあげたいと思い、ミアが持っていたお花と交換しようと言いました。すると銀髪の女の子は少し微笑みながら言いました。
「いいわ。でももしそのお花が気に入らなかったら、私に返してくれる?そこまで育てるには、たくさんの時間と愛情が必要で、私にとっては簡単に手放せるようなものじゃないの。それを約束できるなら、交換してもいいわ。」
ミアは約束してお花を交換すると、すぐに家に帰り、お母さんに見せました。 するとお母さんは、
「まぁ、どこでこれを見つけたの?こんなお花見た事がないわ」と驚いた様子で言いました。
その驚いた様子を見て女の子は嬉しくなり、その日出会った銀髪の女の子の事を嬉しそうに話しました。すると、お母さんはさらに驚いた様子でこう言いました。
「この村に、銀髪の女の子なんていないわ。どこの子かしら?」
それを聞いて女の子は、ウキウキした様子で言いました。
「もしかして、私はお花の妖精さんにあったんじゃないかしら!だってその女の子、とっても綺麗な顔をしていたもの。」
お花と家
次の日、ミアはまた銀髪の女の子に会うためにでかけました。そして昨日と同じ場所でしばらく待っていると、銀髪の女の子はやってきました。昨日と同じ様に、木の影から猫のように足音なく近づいてきました。
ミアはまた会えたことに喜びました。そして、少し興奮した顔で銀髪の女の子にこう聞きました。
「あなた、お花の妖精さんなの?お母さんにこのお花を見せたら、こんなお花見た事がないって言ってたわ!あなたがこのお花を作ったのね?」
それを聞くと白い髪の女の子は静かに笑い、こう言いました。
「言ったじゃない、私が育てたって。でも作ったわけじゃないわ。あなたがいつも見ているお花と同じよ。ただ枯れているだけ。」
そう言って、さらにニコリと笑い、こう続けました。
「そのお花、気に入ってくれたかしら。ドライフラワーと言われているけど、それと私の育てたお花は少し違うわ。私の家に、もっと色んなお花があるの。もし興味があるなら、私の家まで案内するわ。」
ミアは喜んでついて行きました。知らない道を沢山歩き、ミアは足が疲れてしまいましたが、銀髪の女の子は、優しい笑みを浮かべながら慣れたように歩いていました。そしてしばらく歩き、ようやく案内された場所に着きました。
そこはほとんど森の中で、まだ暖かい日が続いているというのに、周りの木がほとんどが枯れていました。木の葉が家を囲い、まるで秋のようで、ミアは不思議に思いました。銀髪の女の子はミアを家の中へ案内しました。
家の中は、まるで空っぽの箱の様に何もありませんでした。ただ、木の椅子と机と棚が置かれているだけでした。「家の奥にある部屋」を除いてはほとんど使われていないようで、蜘蛛の巣やホコリだらけでした。
その奥の部屋の前まで来ると、ミアはドアの大きさに驚きました。それはとても大きく、分厚い木でできていました。そしてその重い扉が「ギギギ」と音を立てて開くと、一瞬眩しい光に包まれました。そこは銀髪の女の子が言っていた通り、たくさんの枯れたお花たちが置かれていました。それは何とも表現しにくいお花たちばかりで、お花と言えないようなものもあれば、まるでちり紙で作ったような面白いお花もありました。
ミアはそのドライフラワーと呼ばれるものを初めて見たので、とても興味津々でした。ですが銀髪の女の子の言うとおり、普通のドライフラワーとは少し違うようです。そのお花たちは、全て魔法がかかっているようでした。
そして壁にはドアと同じくらいの大きな窓があり、部屋は暖かい陽の光で満たされていて、時間がゆっくり流れているような、止まっているような、不思議な部屋でした。
ミアはこの部屋に引き込まれるように、奥へ奥へと進みます。どこまで行っても枯れたお花ばかり。でもミアは、もうそのお花たちを汚れたお花だなんて思いませんでした。いつの間にかミアは、その枯れたお花たちに魅了されていました。
奥の部屋
さらに奥へ進み部屋の壁まで着くと、左側の壁にドアがありました。ミアはもう躊躇せず、そのドアを開けて中を見ました。そこにはベットがひとつ。美しい銀髪の女の子が寝ていました。案内してくれたあの銀髪の女の子とそっくりで、ミアは驚きました。起こしてしまうと思い、部屋に入るべきか迷いました。ミアはそこで少し立っていると、ある事に気づきました。その女の子は寝息が聞こえず、あまりに静かなのです。ミアは気になってその女の子に近ずきました。そしてよく見てみると、その女の子は、干からびてまるでドライフラワーのようになっていました。
妖精の家
ミアはどうやら眠ってしまっていたようです。目を覚まして、寝ぼけたまま体を起こし、隣を見ると銀髪の女の子が少し心配そうな目でミアを見ていました。
すると彼女は、ベットに座ったミアに言いました。
「私の家に遊びに来てくれてありがとう。あなたのおかげで、私たちは元に戻ることが出来たわ。枯れたお花も美しいけど、やっぱり若いお花達もとっても魅力的ね。」
それはとても優しい声でした。ミアは家全体がなにか魔法のようなもので生き返ったように感じました。ミアは突然、夢から覚めたような気分になって、彼女に出会ってからの出来事が本当なのかどうか分からなくなってしまいました。
「あなたは誰なの?今までのことは夢だったのかしら?さっき私が寝ていたベットに、あなたにそっくりの女の子が寝ていたわ。あの子は誰?私が見たのは夢なの?」
銀髪の女の子は言いました。
「あれは…私なの。今までずっと、そのベットで終わらない夢を見ていたわ。冷たくて暗い場所に一人ぼっちだった。でもあなたが見つけてくれたから、私はこうして元に戻れたの。あなたは命の恩人よ。本当にありがとう。」
銀髪の女の子はミアの手を取り、祈るようにしてそう言いました。ミアは何を言われているのか理解出来ず、部屋全体を見渡しました。するとミアは不思議なことに気が付きました。なんと部屋中の枯れたお花達が、全て美しく若返っているのです。ミアは彼女が本物のお花の妖精だと確信しました。そしてミアは言いました。
「あなたに出会って、枯れたお花にすっかり魅了されてしまったわ。部屋中のお花達が枯れた姿はもう見られないの?」
すると銀髪の女の子は
「私が死んだら、誰も世話をする人が居なくなるわ。そしたらまた枯れるでしょうね。でも、あなたが生き返らせてくれたから、もう枯れることは無いわ。」
と、笑っているような、疲れているような、どこか冷たい瞳をミアに向けて言いました。
それを聞いてミアは、近くにあった花瓶で銀髪の女の子を殴り殺してしまいました。するとその瞬間、部屋中の全てのお花が、次々に枯れていきました。ミアは言いました。
「やっぱり、あなたは本物の妖精さんなのね!こんな魔法のようなお家見たことがない!ここにはやっぱり枯れたお花の方がお似合いよ。こんな美しい場所があったなんて!」
そして、この部屋に入ってきた時と同じように銀髪の女の子をベットに寝かせると、ミアは、自分が彼女を殺してしまったことにようやく気が付きました。しかしミアは悲しむことよりも、また枯れたお花達の美しさを取り戻せたことを喜びました。
それからミアはこの家をとても気に入り、彼女は毎日通うようになりました。