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第1話

意図をお察し頂ければ幸い。

俺の名前は金戸三二郎(かなどさんじろう)

ブラック企業で働いている真面目で努力家なサラリーマンだ。

ある日残業をしていたら過労死してしまった。

ふと気付くと神々しい白い空間にいた。

そこに一人の女がいてこう言った。


「私はこの世界を司る女神です。

貴方様は日頃からとても頑張っていて素晴らしい聖人君子の様な人間です。

それに名前もすごくハイセンスです。

とても稀有で死ぬのが惜しいので異世界転生してあげましょう。」


普通の人間なら訳が分からず混乱する所だろうが、俺は他の人間より冷静で悟っているし、ラノベやアニメを見てこういう事を知っていたので、落ち着いてこう言った。


「なるほど、私は死んでしまったのですね。

仕方ないですね、異世界転生します。

ところで、異世界転生するなら最強の力が手に入りますよね?

どんな力が手に入るのでしょうか?」


すると女神はこう言った。


「この状況でこんなに落ち着いているとはなんと悟っているのでしょう。

よくご存知ですね、貴方様の仰る通り、最強の力を与える事になっています。

貴方様には、全てのステータスを最高にし、更に『自分の好きな魔法を作れる能力』を授けましょう。」


俺は心の中で思った。


(なるほど、これは一見パッとしない能力だが、使い方次第では最強だぞ。)


俺はそこら辺の凡人とは違い頭が切れるので、この能力の上手な使い方が分かるのだ。


「では、異世界に転生させましょう、はーっ!」


女神がそう言うと、視界がピカーッと光り俺の意識は一度途絶えた。

そして次に意識が覚めると、俺はどこかの家の中にいた。

そして自分の姿が赤子である事に気づいた。

そして俺は思った。


(前世の人生はブラック企業で働いていてとても荒んだ人生だったから今度は何の変哲もない村人Aとして平穏に生きるぞ。

そうだ、女神の行った通りのステータスと能力があるか確認しておこう。)


俺は頭の中でステータスウィンドウを開くイメージをした。

すると目の前に半透明の枠の様な物が現れた。

やっぱりファンタジー世界だからステータスウィンドウはある様だ。

そして書かれている内容に目を通すと、確かに能力値は最高で、スキル欄には「好きな魔法を作れる能力」が書かれていた。


(よし、ちゃんと能力は約束通りだな。)


そしてステータスを色々確認していて気が付くと、目の前で両親らしき二人が話し合っていた。


「名前は何にしようか、何も考えてないなぁ。」


「そうねぇ、どうしようかしら」


「このエクスクレメンティアで一番良い名前を付けよう。」


どうやらエクスクレメンティアというのがこの国の名前らしい。

俺は洞察力に優れているので、そういう些細な情報から色んな事が分かってしまうのだ。

それはそうと、俺はゲームのキャラの名前付けにこだわるタイプで、自分の名前は自分で決めたかったので、女神から貰った能力を使ってテレパシーで親の脳内に声を送った。


(シン…)


すると両親は驚いて言った。


「何だ?頭の中に声が…!

そうだ、これは神のお告げに違いない!

この子はシンと名付けよう!」


そして俺の名前はミドルネームとファミリーネームを合わせて「シン=セィキェ=ヴァンゲリオン」になった。


そして15年後、俺は15歳になっていた。

この世界では15歳になると、ギルドが定めた「天職」という個々の能力に適した職業に就かなければいけない風習があるらしい。

その天職はギルドで能力を測定し、その結果によって決められるらしい。

そして俺は親に連れられギルドに向かった。

受け付けで受付嬢に要件を話すと、受付嬢は言った。


「ではこの能力を測定しますのでこの測定器である玉に手をかざして下さい。」


俺は言われた通り玉に手をかざした。

すると玉の表面に光の文字の様なものが浮かび上がった。

それを見た受付嬢は驚いた様子で言った。


「これはすごい能力値です!

ここまで高い能力は見た事がありません!

これは異例の自体ですのでギルドマスターに相談しなければいけません!」


そういって受付嬢は奥へ向かい、暫くしギルドマスターらしい顔に大きな傷のある眼帯でスキンヘッドで筋骨隆々の巨漢と一緒に戻って来た。


「俺がこのギルドのギルドマスターのガルギルド=マスタニアゲビルだ。

お前がすごい能力値の奴か。

何かの間違いかと思ったがどうやら正常な結果のようだ。」


それを聞いた父親は喜んで訪ねた。


「では、良い職業に就けたりするのでしょうか?」


だがガルギルドはこう答えた。


「確かに能力値は高いが、この『新しく魔法を作る』というしょうもない能力では、大した職業には就けない、よって、君の天職は『魔力付与鍛冶召喚錬成創薬身体強化士』だ。」


それを聞いた両親はがっかりした様子で呟いた。


「そんな…魔力付与鍛冶召喚錬成創薬身体強化士だって…。

そんなの子供でも知ってる常識で、最も不遇な職業じゃないか…。」


「なんて事なの…。」


何事にも動じない俺も流石にこれには愕然として心の中で叫んだ。


(異世界に転生したら普通は優遇職に就いて英雄扱いされて無双ハーレムライフするもんなんじゃ無いのかよぉ〜!!)


その後、家族3人でトボトボと家に帰ったあと、家族会議が開かれ、そこで父親にこう言われた。


「お前は無能なので勘当する!」


そしてすぐさま家を叩きだされた。

流石の俺もこれには少し困惑したが、俺はポジティブで賢いので、すぐに頭を切り替えて田舎でスローライフをする事にした。

そして俺は国内の辺境に家を買って暮らし始めた。

俺はそこらの人間とは違って、便利な暮らしや立身を求めない無欲で殊勝な人間なので、辺境のスローライフも苦にならないのだ。

そしてそんな生活を始めてから数日立ったある日、ギルドへ仕事を探しに行くと、何やら人混みが出来ていて騒がしくしていた。

気になった俺は受付嬢に話を聞くと


「昨日からアォキガハーラの森にダークネスワイバーンが現れて、森を通る人を襲っているんです。

それから討伐クエストを出したんですが、向かった冒険者はみんな返り討ちにされて、ほとほと困っていた所なのです。」


と話した。

それで気になってその発注書を見てみると、最高難易度に認定されているが、報酬の額がとても高額だった。

俺は金や名誉や地位に興味の無い聖者だが、今の生活に金は不可欠だ。

そして俺はその発注書を受け付けに持っていき言った。


「このクエスト俺が受けます。」


すると周りにいた群衆共が下卑た笑い声を上げた。

そしてその中から、一人のガタイの良いむさ苦しい感じで頭の悪そうないかにも俗物といった風体の男が俺の目の前まで出て来て言った。


「おい、にいちゃん、無知な田舎者のてめぇに教えてやるよ。

そのクエストの討伐対象のダークネスワイバーンは危険度ディザスター級の化物だ。

てめぇみたいなひょろっちぃガキが行ったところで何も出来ずに食われてウンコになるのが関の山だぜ。

ギャハハハハハ!」


ものすごく煽られたが俺は煽り耐性の高い出来た人間なので眉一つ動かさずに言い返した。


「それはやってみなくちゃ分からないだろ。」


ものの見事に論破された馬鹿ゴリラ野郎は悔しそうな態度で舌打ちをして踵を返してギルドから出ていった。


そしてそのクエストを受ける事が出来た俺は、ギルドを出てダークネスワイバーンのいるアォキガハーラの森へと向かった。

アォキガハーラの森へ行くには、乗り合いの馬車を使っても2時間はかかる。

しかし、俺は瞬時に行きたい場所へ転移出来る転移魔法を創造し使う事が出来るので、一瞬でひとっ飛びだ。

そして森へ到着した俺はダークネスワイバーンがどこにいるか探す為に以前から作っていた索敵魔法を使った。

ちなみに索敵魔法はこの世界には存在しなかった魔法で、俺が新たに作った、所謂ユニークスキルという奴だ。

そしていとも容易くダークネスワイバーンの居所を掴んだ俺はそこへ向かった。

すると索敵魔法の示した通り、そこにダークネスワイバーンがいた。

俺はその姿を見て思った。


(これがダークネスワイバーンか、いかにもファンタジーに出てくるドラゴンって感じだな、テンションが上がるぜ!)


俺はファンタジーゲームが好きで、ファンタジー的な存在に憧れがあり、リアルにドラゴンに出会ってしまったりすると、心がwktkしてしまう様な無邪気で純真でピュアな心の持ち主なのだ。


「さあ、ドラゴンに会えたのは嬉しいが、報酬と人々の平和の為にお前を討伐するぜ!」


するとダークネスワイバーンはこちらの言う事など無視して問答無用で口から黒い炎を吐き出して攻撃してきた。

しかし俺は身体強化の魔法を使い、寸前でひらりと華麗に回避した。


「おっと!これがドラゴンのブレスって奴か、俺でなきゃ見逃しちゃうね!」


そこで出来たダークネスワイバーンの隙に俺は軽く牽制のつもりで魔法を叩き込んだ。


「インフェルノファイア!」


すると着弾点に半径20m程の爆発が起こり、周囲一帯諸共ダークネスワイバーンを吹き飛ばした。

そして俺は、消し炭と化したダークネスワイバーンに近づいて生死を確認すると、どうやら動く気配は無いので、死んでいると判断した。


(あれ?ダークネスワイバーンってこの程度なのか?

ちょっと軽い魔法を撃っただけなんだが…。

もしかしてこいつはダークネスワイバーンじゃなかったのか…?

いやでも状況的に考えてこいつで間違いない筈だ。)


あまりにも簡単に倒せたのでこいつがダークネスワイバーンなのか疑問に思ったが、とりあえず討伐の証拠の死体を持って帰る事にする。

ここで俺の発明した収納魔法の出番である。

これは異次元空間にどんな物でも収納して持ち運び、いつでも取り出せるという便利な魔法だ。

これも元々この世界には無かった俺のオリジナルだ。

俺にとっては余裕だが、この世界の人は驚くかもしれない。

そしてやる事を済ませた俺はギルドへと帰った。

そしたら先程の人の群れがまだいた。

すると先程の馬鹿ゴリラ野郎がそこから出て来て言った。


「なんだぁ、随分お早いお帰りじゃねぇか。

やっぱり怖気づいて戻って来たんでちゅかぁ?

ゲヒヒヒヒヒ!」


程度の低い皮肉だが俺は冷静に鼻で笑い一笑に付してこう言った。


「勿論倒してきたさ、証左もある。」


俺は博識で学があるからつい「証左」なんて難しい言葉を使ってしまったが、頭の悪いこいつらには分からないだろう。

そして俺はスタイリッシュに不敵な笑みを湛えながら受け付けに向い、例のクエストを達成してきたという旨を伝えた。


「あの、ダークネスワイバーンを倒してきました。

これが証左です。」


そう言って俺は収納魔法で異次元の扉を開き、中からダークネスワイバーンの死体を取り出した。

すると、それを見た受付嬢と馬鹿ゴリラ野郎と群衆共はどよめいた。

そしてその後に受付嬢が言った。


「こ、これはまさか収納魔法…!?

これはこの世界には存在しない魔法…!

こんなとてつもなく凄い魔法を使えるなんて貴方様は神ですか!?

それにこれは確かにダークネスワイバーンの死体!

それもこれまたとてつもなく強力な魔法でやられている様子…。

それでは貴方様をダークネスワイバーンを討伐したと認めます!」


それを聞いた群衆がまた喚き始めた。


「おいマジかよ…。」


「すごすぎるぜ…。」


「こんな話聞いた事無ぇ…。」


どうやら俺の凄さがようやく理解出来たらしい。

その騒ぎの中、受付嬢がこっそりと俺の腕に抱きつき、豊満な胸を押し当てながら、小声で耳打ちしてきた。


「私の名前はセルティフィリア・アクエリエシア。

あなたの様な凄くて格好良い殿方は見た事がございません。

あなたの事を好ましく思うので、私と夜伽して下さい。

今夜、二階の一番奥の部屋で待っています。」


どうやら受付嬢は俺に惚れてしまい夜伽がしたいらしい。

「夜伽」というのは、男女が夜愛し合う事で、有り体に言えばセックスの事だ。

これは昔の言葉で、普通の奴には分からないだろうが、博識で昔気質で粋な俺にとって常識レベルなのだ。

あまりにも強く頼まれたので、人の良い俺は断れずに承諾した。

断じて俺は、女とセックスする事に興味津々な俗物ではない、あくまでも、どうしてもと頼まれたから仕方なくやるのだ。

そして夜、約束の時間になったので、約束の場所である二階の一番奥の部屋に行った。

俺がノックをすると、部屋の中からセルティフィリアの声が聞こえた。


「どうぞ入って」


「失礼します。」


そう律儀な返事をして俺は部屋に入った。

俺は育ちが良く真面目な性格なので、ちゃんと礼儀作法を弁えているのだ。

そこらの凡人共には出来ない芸当だろう。

そして次にセルティフィリアはベッドに座りながら自分の横に手を差し出してこう言った。


「ここにでも座って」


ちゃんとしている俺は、ちゃんと相手が座るように言ってからベッドに座る。

それに俺は普通の童貞と違って、女の子の隣に座ってもどぎまぎなどしない。

するとセルティフィリアは俺の口にキスをしてきたので、俺はセルティフィリアを優しく抱きしめ、ゆっくりとベッドに横たえた。

そして俺達は高尚且つプラトニックに愛し合い、夜は更け、一日が終わった。


第一話完

続く

気力があれば続きを。

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