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どこからともなく女性の叫び声が響き渡る。次いで男性の叫び声とともに騒がしくなる。と、ほぼ同時にポケットに突っ込んだままのスマートフォンがけたたましく鳴り出した。聞きなれないメロディーに違和感を覚えながら取り出すと照らし出されたディスプレイには「緊急速報メール」と題された内容の文章が表示されていた。
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●緊急速報メール
ただいま日本全域に対未確認生物特別警報が発令されました。
最大級の警戒をしつつ避難を開始してください。
対象地域;日本全域
理由;未確認生物発生のため
○○市の避難場所
■■小学校、▼▼地域振興センター、▲▲町立体育館
近所の方に声をかけながら迅速に行動をしてください。
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「なんじゃこりゃ」
つい先程と同じ台詞を全く同じ抑揚で吐いてしまった。だが心の中は違う。何か得体の知れないものに急かされている感覚がある。
やがて目の前を覆い尽くす異様な光景に、僕は今夜三度めの台詞を言ってしまうのである。
「なんじゃこりゃ」
そこからは語ることが多すぎた。柳さんの手を取って神社から逃げ出すところから始まり、富士山の麓の研究所へ解毒剤を取りに行き、国会議事堂前で乱戦に巻き込まれたかと思えば、アメリカへの飛行機に飛び乗ってテキサス州のど真ん中まで行ったり、本にまとめればきっと京極夏彦五冊分をゆうに越えてしまうと思う。
だから、今回はそれらを割愛し、三ヶ月後に到達したテキサス州の広野にある宇宙開発施設から語ろうと思う。
その頃にはもう、世界はゾンビで溢れかえってしまっているのだけれど。