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通常であれば神社などではなく、お店で一番くじと呼ばれるくじびきで最後のくじを引いたときにもらえる特別賞がラストワン賞だ。ならば、特別なペインティングの施された限定版フィギュアでも当たるのだろうか。それはものすごいレア物で、きっとヤフオクかメルカリで○万とか○○万とかすごく高値で売れてくれるに違いない。そして僕は一夜にして大金持ちに……と、頭の中でそこまで妄想が進んだところで、ふと気付く。
って、神社でフィギュア当たるかー!
心の中で強く抗議しておいた。それはそれは強く、今の首相くらい強く言っておいた。
おみくじに期待していなかったと言えば嘘になる。ろくなことがなかった昨年、学校へいっても楽しいことなどなく、友達のいない僕にはクソみたいな日々を送るしかなかった。毎日がドブの中をさ迷い続け、ヘドロを飲み、まるでゾンビのように臓物を吐き続けるような毎日だった。そんなだから大晦日恒例の番組で「絶対に笑ってはいけないゾンビバスター24時」を観ても大して笑えなかった。陰気の底に落ちた自分に気付くと、来年こそは、と一念発起し、ダウンジャケットを羽織って独りで初詣へと足を向けたのである。
改めて手のおみくじへと目を落とす。行書体のちょっと読みにくい言葉に混じって、カタカナがゴシック体に成り代わってどどんと我が物顔で居座っているのである。まるで夜のコンビニの入り口に、うんこ座りで溜まっているあんな連中みたいだと思った。
違和感がある、というのは素直な意見だと思う。神聖な巫女さんが渡してくれた神聖なおみくじに、ゴキブリにも劣る連中が紛れ混むのはおかしいどころの騒ぎじゃない。もしかしたら、とそこで思い至る。まさか、ただの間違い? 人為的なミスなり、何らかのお遊びでつくったものが紛れ込んだだけとか有り得ない話じゃない。そう考えていくと不思議と想像が真実味を増していく。きっとそうかもしれない。