3-3
「車にひかれて死ぬのとか嫌だな。あと電車にひかれるのはもっと嫌。手とか吹き飛んじゃうって聞いたもん」
手が飛ぶのか、それはグロい。
「あ、あとアレだね」
そう言って人差し指を出すサエコ。
「ゾンビに殺されるのとか嫌じゃない?」
瞬間、全身が硬直した。その言葉が耳に入っただけで、全身の血液が逆流し凍りついていく錯覚をおぼえた。
「え? は? なにそれ」
「なにゾンビとか嫌いなの? あはは、ウケる。大丈夫だって、あんなの現実にいるわけないじゃん」
そりゃそうだ。あれは映画や漫画の話だ。なのに、いまの感じはなんだったんだろうか。さっき見ていた笑ってはいけないがゾンビ話だったからだろうか。そうか、きっとそうに違いない。急かす心臓をなだめすかして落ち着いた僕は、そういえば、と思い出す。
「夢を見たんだった」
「どんなの?」
「僕が人見知りで学校でもいつも独りでいるような寝暗でさ、初詣に一人で来ておみくじを引くんだけど」
「うんうん」
「引いて……あれなんだっけ?」
おみくじを引いて、その内容が変だったのは覚えているのに、肝心の何が書いてあったのかはまるっきり覚えてなかった。
「なにそれ、覚えてないの? そこ大事なとこじゃん!」
おかしいな、と呟いて首を捻った。
「それに、きみが根暗で独りとか笑えるよね。まるきり真逆じゃん!」