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3-1 2020年12月31日 〇〇市△△神社
「起きて、起きてってば」
その快活な声に僕は覚醒する。頭を揺さぶられていたからなのか、若干吐き気を感じる。気持ち悪い。
「もう、きみが初詣行こうっていったんじゃない。ちゃんと起きてよ」
初詣。その言葉に僕の意識は一気に目覚めた。はっとして起き上がる。横には見慣れた顔があった。
「ごめん、いま何時?」
「12時30分。早く行かないと行列できるよ」
壁にかけられた時計を見て項垂れた。そうか、確か年末恒例の笑ってはいけないを見て笑い疲れた僕はこたつで寝てしまっていたらしい。途中で切り上げて迎えに行けばちょうどいいと思っていたが、思わぬ失態だ。
「悪い、サエコ。すぐいこう」
急いでダウンジャケットを羽織ると、玄関先にいた母親に声をかけ外へと出た。
数年に一度の大寒波が来ると連日ニュースは不安を煽ってはいたが、蓋をあけてみれば何てことはない、例年通りの冬日だった。雪が降ることもなければアスファルトが凍りついてスケートリンク代わりに滑れるようになるわけでもなかった。それでもサエコは腕で体を抱えながら小刻みに震えている。
「うぅー、寒い」