1-1 2020年12月31日 〇〇市△△神社
「なんじゃこりゃ」
思いがけず言葉に出してしまっていた。こんな寒空の下で独り空しく紙切れを貪る気持ちを察して欲しい。そうすればこんな訳のわからない、小学生のお遊びみたいな真似は出来ないはずだ。いや違う。強く言おう。絶対にするな。僕は心の中で今の首相くらい強く唱えた。
末吉でも吉でもなく、ましてや天文学的数字に裏打ちされた確率論の元、ようやく衆目にさらされることとなる「大吉」という代物でもなかった。
数分前、大晦日を終え新年を迎えたばかりの境内で、僕はなけなしのお小遣いから300円を出し、美人できれいな巫女さんからおみくじを受け取った……と思う。何かの間違いで知らぬ間に古本市場で一番くじでも引いてしまっていたのだろうか。いや、それはおかしい。渡してくれたのは惑うことなき巫女さんだ。長い黒髪を後ろで束ねて清楚を画に描いたような顔立ちでにっこり微笑んでくれた。「ようこそご参拝くださいました」とコンビニレジの中身スカスカの挨拶とはまるで違う台詞と声色で、そっと僕だけに語りかけてくれたのは夢でもなんでもなく事実だ。ゆえにあれは本物の巫女さんで、受け取ったのは紛れもなくおみくじだ。
「じゃあこれ、なに?」
開かれたおみくじはパチパチと弾ける松明に照らされ、世界一この場に似つかわしくないであろう言葉を浮かび上がらせた。
「【ラストワン賞】って、え? は? これ僕どうしたらいいの?」