第9話「竜の息」
「竜の息」
鬱蒼と樹木が茂る森の中で、綺麗な銀髪をした少女は木漏れ日に照らされながら、山菜を採っていた。
「ん?何の音?」
山菜を採っていると音、、いや声が聞こえたような気がした、集中しないと聞こえない程度の声だったが確かに聞こえてくる。
「なんだろう?」
ちょうど山菜も採り終えていたので声の正体に興味が湧いた少女は声の聞こえる方へと草むらを掻き分け進んで行く。
「あそこって、私の、、」
声のする方に近づていくと少女が秘密基地にしている洞穴から声が聞こえてくる。しかも、二つ、人と動物の声だ。
気になるけど、なんか怖いな、、、
少女が洞穴に入るか悩んでいると声が聞こえてこないようになっている事に気づく。
「ちょっとだけ、、ちょっとだけなら平気だよね」
少女は好奇心に負け、洞穴へと足を踏み入れていった。
「誰かいるの?」
いつもなら落ち着く洞穴の薄暗さが今はちょっとだけ怖く感じる、やっぱり入らない方が良かったかも。
不安になりながらも少女は奥へ奥へと足を進めて行く。
そして、一番奥に辿り着くと
「ドラゴン?、、、」
少女は驚いた
穏やかな森と呼ばれるこの森で、最強クラスの魔物であるドラゴンが。
しかも自分の秘密基地にいたからだ。
その体は少女よりも小さいが鱗や尻尾、鋭い爪に、牙を持っている。
やっべ〜〜〜
少女が驚いている時、陵はその十倍驚いていた。
どうしよう、誰か呼ばれるかも、いやもしかしたらこの一見弱そうな少女も実はなんかスキルを持っていて俺を瞬殺できるかも、うん。この世界ならありえる。
どうしようと考えながらふと少女を見ると、少女が怯えている事に気づく。
「そ、その、別に襲ったりしないよ?」
「きゃあ」
少女を安心させようと声をかけたのに余計に怯えさせてしまった。
結構、へこむなぁ
「今はこんな見た目だけど元は」
陵は自分が元は人間だったと伝えようと声を出していて、ある事に気付いた。
まさか…
確認にもう一度声を出してみる。
「あ(ガァ)」
俺、言葉喋れてなくない?
「あ、あ、あ、(ガァ、ガァ、ガァ)」
まじかよーーーーー
エデンには通じてたから平気とばかり、ていうかこの世界に来てからエデン以外と話してないし今の今まで気づかなかった、、
「怪我してるの?」
陵が落ち込んでいると少女がゆっくりと近づきながらそう声をかけてきた。
落ち込んでいるように項垂れる姿を見ていると少女の中にあった恐怖は不思議と無くなっていた。
それに、よく見るとまるでぬいぐるみのようだ。
確かにドラゴンではあるが、その幼い風貌には母性をくすぐるものがある。
「可愛い、」
確かに可愛いが目の前にいるのは野生のドラゴンだ。
恐怖は無くなったが、少女は野生の動物に不用意に近づく事の危険さを知っていた。
けれど、それでも怪我をしているのならほって置けない。
「よかった、大きな怪我は無いみたい、、」
近づいて見てみたけど、目立つような怪我はないみたい。
それに、普通ならある程度の距離に入ると動物は威嚇してくるのに、このドラゴンは全くしない
大人しいのかな?
「大丈夫?」
そう言いながらドラゴンに触れようと手を伸ばすとその手をするりとかわしてドラゴンは洞穴の出口に向けて駆け出した。
「はぁはぁはぁ。ここまで来れば大丈夫だろ」
ただの少女に見えるけど念には念をだ。
それに少女が安全でも村の人にバレたらどうなるかわからない。
はぁ、せっかく見つけた家なのに、、、また家探しからか、、、
〜夜〜
「全然見つからねぇ〜」
朝からずっと歩き待っているのにロクな所がねぇ
やっぱり、あそこしかねぇのかな〜?
「ぎゃう」
またこの声か、、、
「またお前か!」
今日だけで一体何匹のうさぎに出会ったんだ?
もう数えるのもめんどくせぇ
「もう逃げるのはやめだ!」
「ぎゃうー!」
「おらーーーー!」
戦う覚悟を決めた陵はツルダラビットに向けて駆け出した。
それからしばらく経って
「はぁはぁはぁ。」
「ぎゃうー」
なんでこんな雑魚に苦戦するんだよ、、、
エデンの野郎、絶対にまた文句言ってやるからな
何が火を吹いたりドラゴンパワーだ。
そんなことできるわけねぇだろうが!
こうなったらやけくそだ
「ドラゴンパワー!!」
俺はそう叫びながらうさぎに突っ込んでやった
「ぎゃう!」
「いってーーーーーー!」
あいつ、俺の足に噛み付きやがった!
「火、吹いてやる!」
出るわけねぇだろうけど息を大きく吸い込むと胸の辺りに熱を感じた。
そして、その熱は俺の息と混ざり合いそれは炎と化して口から出てきた。
ボゥと音を立てながら炎はうさぎに向けて飛んでいく。
「ぎゃぎゃう!」
炎が直撃するとうさぎは脱兎の如く逃げ出した。
「……本当に出た」
次はエデン、秋と日向の話を少し書きます。