第7話「心に灯る希望」
「心に灯る希望」
「さぁ、何から聞きたい?」
エデンは優雅に紅茶を飲みながら秋達にそう投げかける
「まずお前はだれなんだ?」
「お前とはなんじゃ!お前とは!わしにはエデンという立派な名前がある。まぁ気楽にエデン様と呼べば良いぞ」
「エデン様は流石に、、普通にエデンでいいだろ?」
この見るからに幼い少女を様付けで呼ぶのはさすがに抵抗感がある。
「エデンちゃん!私も質問していい?」
日向が勢い良くちゃん付けでエデンを呼んでいた
「うん?なんじゃ?」
「、、、、」
別に様付けじゃなくてもいいんかい。というツッコミは心の中にとどめておこう
「ここってどこなの?」
「ここはお主達の住んでいた世界とは別の世界じゃ」
予想外の答えをさも当たり前かのように言ってきた
「どう言うことだ?俺たちの住んでいた世界とは別の世界?」
「あぁ、お主達のいた世界とは隔離されたもう一つの世界…簡単に言えば異世界ってやつじゃ」
「……」
なんだよ異世界って!外国だと思ってたのに…まじで、これからどうしよ…
「なぜそんなに驚く?こうなった原因に心当たりならあるじゃろ?」
「それってアレ…空間が歪んでたやつか?」
「そう、その空間の歪みによって隔離された二つの世界を繋ぐトンネルが出来た。お主達はそれを通ってこの世界に来たのじゃ」
「うん?ていうことはもう一度アレに触れば元の世界に戻れるってことか⁉︎」
よし、まだ希望は残ってたぜ、これで一回戻って…
この場合ってどこに頼ればいいんだ?警察?まぁいいとりあえず戻ろう。俺たち2人だけでこの世界のどこかにいる陵を探すのには無理がある、見つけるより先に俺たちが死んじまう
「それはムリじゃ!お主達の通ってきた空間の歪みはもう閉じておる。」
「なにー!もう閉じてんのかよ!、、やっぱり最悪だぁ…」
「さっきも同じやり取りをしたのぅ」
「さっき?ねぇ、もしかして、それってお兄ちゃんじゃない⁉︎」
「お兄ちゃん?日向は陵の妹なのか?」
「陵を知ってるのか⁉︎陵はどこにいるんだ⁉︎」
「エデンちゃん!お兄ちゃんを知ってるの⁉︎お兄ちゃんはどこにいるの⁉︎」
俺と日向は声を揃えてエデンに顔を近づけながら叫ぶように問いかけた
「お主達!うるさいし近い!それに2人同時に話しかけるな!」
ものすごい怒られた…
「ご、ごめん」
「ご、ごめん」
「じゃあ、まずは私から…」
「よし、じゃあ日向。聞きたいことはなんじゃ?」
「お兄ちゃんはどこにいるの?怪我とかはしてない?」
「陵なら少し遠くの森におるぞ、怪我ならしておったけどワシが治しておいたぞ!」
「ふぅー。よかった無事なんだね!」
とりあえず陵は無事みたいだ、まぁ、色々問題はあるけどあいつが無事ならそれだけで充分だ
「それじゃ次は俺の質問だ」
次は個人的に気になっていた事をエデンに聞いておこう
「うむ、なんじゃ?」
「どうやって狼を吹っ飛ばしたり指を鳴らして椅子や机を出したり出来るんだ?」
「うん?そんなの魔法に決まっておるじゃろ、お主達は使えんのか?」
「使えるわけないだろ!俺たちの世界に魔法なんて使えるやつ1人もいない、この世界だと普通にいるのか?」
「あぁ。魔法は使えなくてもスキルは…。まさかスキルとかもない?じゃあ森に置いて来たのはマズかったかのぅ、、、」
「当たり前だ!ていうかその反応…まさか!陵がスキルとかいうのを使えると思って森に一人置きっ放しにしたとかないよな?」
エデンが汗をかきながらものすごい目を泳がしている…まさかこの反応は!
「そんな二人ともジーと責めるような目で見るな!まさか、スキルも使えないとは思わんじゃないか!」
涙目になりながらそう反論してくるエデン
「はぁー最悪だ。早く陵を助けないと」
「どうしよう!どうしよう!お兄ちゃんが!」
「まぁあの森は比較的安全な場所じゃし、それにワシが陵に特別な力を与えといたから安心せい!」
「特別な力?なんだそれ?」
「それは、、、会った時のお楽しみじゃ!」
「はぁー。…まぁ信用するしかないか」
若干、いやだいぶ信用できないが、今はその特別な力とかいうやつを信じるしかない
「うん、私達も助けられたし。私もエデンちゃんを信じるよ」
魔法とかスキルとかっていわれても普通は信じれないけど実際、信じる以外無いんだよな。
「けど言葉も通じない世界でどうしようか…」
食べ物も家も言葉が通じないとどうしようもねぇ
「あぉ、言葉も違うか…ちょっと二人ともさわるぞ」
「う、うん」
「な、なんだ」
エデンが額に触れると頭の中に何か流し込まれたような感覚になった
「今、何したんだ⁉︎」
額を抑えながら質問する
「この世界の言語の知識を流し込んだだけじゃ、これでこの世界の言葉を理解できるはずじゃよ」
「まじかよ、そんなことできんのかよ…」
エデンさえいれば学校で英語の勉強なんかしなくて済むな…
「すごーい!エデンちゃん!そんなことできるんだ!」
「そうじゃろ?ワシすごいじゃろ?やっとワシの凄さに気付いたか!」
本当にすごいけど自慢げに胸を張って腕組んで仁王立ちする姿はただの子供だ
「あぁーすごいすごい」
「なんじゃ急にその子供を相手するような態度は!」
「いや、すまんすまん」
「ふん!ワシも暇なわけじゃないんじゃぞ、もう行くからの!」
「エデンちゃん、どこに行くの?」
「空間の歪みなんて本来できるはずがないんじゃ。それが二回も起こるなんて…もうなんとなく原因はわかっておる。じゃから今からその原因をなんとかしに行く」
「その原因ってなんなんだ?」
「どうせお主達に言ってもわからんし、それに大したことじゃない」
「そ、そうか。わかった。じゃあ、最後に陵のいる森の名前を教えてくれ」
「うむ、陵がおるのはシュリンフォレストという森じゃ、それじゃ秋、日向。じゃあの」
「あぁ、色々ありがとな」
「エデンちゃん色々ありがとう」
「うむ。それじゃあ、達者でな」
そう言うとエデンは目の前から突然消えた
「消えたな…本当に異世界なんだな…」
「そうだね、けど!希望が見えてきたね」
「あぁ、そうだな。やっぱりあの時飛び込んだのは正解だったな」
「うん!」
「よし、俺たちの目標は陵に会うことだ、そのためにはやることはいっぱいあるぞ」
「そうだね」
「けど。とりあえず、また狼が来たらヤバイし街に戻ろう。話はそれからだな」
「そうだね、ちょっと暗くなってきたし」
色々あったが、何だかんだ陵の無事や居場所までわかった。心配ごとはまだ沢山あるが帰りは二人とも笑顔だった。