第3話「自分の実力」
「自分の実力」
エデンがどこかに行ってから、俺はこれからどうしようかと悩んでいた。
人間だった頃、ちょっと動いただけで殺された森だ。しかも今はあの頃よりも弱そうなチビモンスターになっちまったし…
そうして、しばらく考えているとなんだか喉が渇いてきた。
動かないと食料も水も手に入らずどっちみち死んでしまう。
それにエデンがわしが考えたモンスターじゃから大丈夫とか言ってたし。
まぁ、なんとかなるだろうと自分に言い聞かせてまずは水を確保することにした。
「よし行くか!」
どうかモンスターに出会わないでくれと願いながらしばらく進んでいると目の前に澄み切った綺麗な湖が見えた。
「おー!水だぁ!」
テンションが高くなって湖まで走っていった。
「俺、こんな風にになってんのかよ⁉︎」
水を飲もうと顔を乗り出すと水面が鏡の代わりをして、モンスターになってから初めて自分の顔を見た。
可愛らしいトカゲみたいだな。
「俺…トカゲのモンスターになったのか…もう良い!気にしても無駄だ。とりあえず水だ、水。
ゴクッゴクッ、プハー。最ッ高に美味いな!」
湖の水はとても美味く喉の渇きだけじゃなく色々ありすぎて疲れた俺の心と体を癒してくれた。
とりあえず水は確保できたので、あとは食料と寝る場所を確保できればとりあえず殺される以外に死ぬことはないだろうと思っていると。
「ぎゃううぉ〜」
聞いたことのある声だ。頼みます神様!どうか俺の考えが外れますように。
声のした方を見ると、やっぱり俺を追いかけた回したうさぎがこっちに迫っていた。
この前はあいつから逃げ回ったせいで鬼に殺されたんだ、今度はこの体がどの程度の強さなのか試すためにも戦ってやる。
「よし!来い!返り討ちにしてやる!」
覚悟を決めたものの、鋭い歯を剥き出しにして涎を垂らしながらまるでご馳走を見つけたかのように走ってくるあいつの姿を見て俺は、
「やっぱこえーよぉー!」
戦うのはやめ、逃げた。だけど、まだこの体を動かすのに慣れてなくてすぐに追いつかれて押し倒されてしまった。
「ぎゃううぉ〜」
このままじゃ殺されちまう…
「おらー!」
俺は自分の唯一の武器の鋭い爪でうさぎの顔を引っ掻いてやった。
「ぎゃう!」
うさぎは反撃されたのに驚いたのか後ろに下がった、だが、俺を食べるのは諦めてないらしく臨戦態勢でこちらを見ている。
うさぎが驚いている隙にこちらから仕掛けようかと考えていると、うさぎの方から仕掛けきた。うさぎは噛み付こうと突進してきたが、俺はそれをかわしながら横腹に引っ掻を食らわしてやった。
しばらくそんな攻防を続けていると俺もダメージを受けていたが明らかにうさぎの動きが悪くなってきた、多分出血が原因だろう。俺がとどめを刺そうとうさぎの方に向かっていくとうさぎは走って逃げていった。
「はぁはぁはぁ…どうにか勝てたか…」
このぐらいの強さなら人間の時でも勝てたんじゃないかと思ったが深くは考えないことにした。
しばらくして、これからどうしようかとかんがえていると昔、テレビで湖とかには生物が水を飲みによく集まってくると言っていたのを思い出した。
「とりあえずここから離れて安全な場所を探そう」
またうさぎに出会ったりしたらヤバイしな、湖から離れてどこか安全な拠点になりそうな場所を探そう。
しばらく歩いていると遠くの方から人がこちらに向かってくるのが見えた、この世界にも人が居るとわかり嬉しくなったが、今の姿だと間違いなくモンスターだと思われるだろうし隠れて様子を窺うか。
「パド、緊張はしていないか?」
「父さん、俺はもう16だぜ。成人の儀のオーガ狩りなんかで緊張なんかするかよ」
「強がるなパド、みんな最初は緊張するもんなんだからな」
「そうそう、俺も緊張したもんさ、オーガが16で怖く無い奴なんていないさ。まぁ、村一番のアドさんに俺とペルが付いてるんだ。安心しとけばいいさ」
「そうそう。ヤハトの言う通りです。それにこの儀式は強いモンスターを間近で見ることが目的なので、パドくんは後ろに下がっていて良いですからね」
「そうはいくかよ!俺だって立派に戦ってみせるぞ」
「意気込みはいいが、舐めていると痛い目を見るぞ」
4人組の男たちがそんな会話をしながら歩いて行った。話を聞く限りパドとかいう少年の成人の儀とかでオーガを倒しに行くようだ。
「ぎゃう〜」×3
4人の事を観察しているとまた聞き覚えのある声が複数聞こえてきた。
「お、ツルダラビットじゃん、しかも3匹」
「こいつらくらいなら俺1人でやってやる」
あのうさぎツルダラビットって言うのか〜っていうか3匹も⁉︎と思っているとパドが1人でやらしてくれって言っている。大丈夫かなと思っていたが勝負は一瞬だった。
まず1匹のツルダラビットが噛み付こうとしたがそれをかわし、鞘から抜いた剣で首を切り落とした。そのまま残りの2匹のいる方に走って行き、残りの2匹の首も一太刀で切り落とした。
「どうだ、父さん!俺だってやるだろ!」
「ツルダラビットごときを倒したくらいで自慢するな」
「まぁ実際動きも良かったしさ、自慢したっていいじゃないすか」
「そうですよ、アドさん譲りの剣の腕ですね」
「まぁ…悪くはなかった。だが油断は禁物だ、先に進むぞ」
「もっと素直に褒めればいいのに」
「アドさんは恥ずかしがり屋ですからね」
「ヤハト!ペル!余計なこと言ってんじゃねぇ、お前らも集中しろ」
エデンのやろー!なにがわしが考えたモンスターじゃから大丈夫だ!俺が結構苦戦したツルダラビットが少年に3匹まとめて瞬殺されたじゃねぇか!
多分だけど俺、この世界で最弱の部類じゃね?
はぁ、落ち込むなぁ。うん?人がいるってことは
「人がいる場所って多分安全だよな?」
この世界に人がいるなら、国か街か知らないがあるはずだ。その周囲には危険なモンスターがいないんじゃないか?
「よし!あいつらが来た方に行ってみるか」
そうと決めたら俺は、パド達が来た方角に向かって進み出した。