第2話「エデン」
「エデン」
「よし、お主の身に起きた事を全て教えてやろう」
-パチン-
エデンが指を鳴らしたら豪華な椅子とテーブルが目の前に出てきた
「さて、立ち話もなんじゃし、座るとするかのぉー」
そういって豪華な椅子にもたれたエデンは話を始めようとする。
「おい、俺の椅子は無いのかよ!」
「エ・デ・ン・さ・まっと呼ぶなら出してやらんこともないぞぉ〜」
腹立つ顔で言いやがって、ふん、そんなこと言うぐらいなら立ちっぱなしの方が…
「エデン様、俺にも椅子をください」
あんなふっかふっかで気持ち良さそうな椅子を前に俺のプライドは一瞬で消えちまったぜ
「よろしい」
エデンが再び指を鳴らすと、新しい椅子が出てきた。
そして、椅子に座り、その椅子の座り心地の良さに驚いたあと肝心の話に移った。
「一体、俺はどうなってんだ?何が起きたんだ?」
「ふむ、まずここはお主の暮らしていた世界とは別の世界じゃ、そしてお主の体じゃが」
「まて!そんな軽く別の世界だって言われてはいそうですかって受け入れられるか!もっと詳しく説明しろ!」
「ここは地球では無い、それどころかお主の居た宇宙とは完全に隔離された世界じゃ。地球にあんな生物はおらなんだろう?」
そういってエデンが指差した先には俺の胸を貫いた鬼が倒れていた。
鬼を見た瞬間、自分が殺される記憶がフラッシュバックして走って逃げようとした時、
「安心せい、もう死んでおる」
「え⁉︎」
よーく見ると鬼の首は曲がってはいけない方向に曲がっていた。
「わしが倒しておいた、もう説明に戻ってよいか?」
死んでいると分かると大分落ち着きを取り戻したが、あんな化け物を蚊でも殺しておいたように言ったエデンに対する興味が湧いてきた。けど今は自分の状況を聞くことが先だ。
「ああ…確かにあんなやつは地球には居なかった、ここが俺の居た世界とは違う世界だってことは受け入れたく無いけどわかった。そもそもなんで俺は違う世界に来てしまったんだよ?」
「それは、お主が空間の歪みに吸い込まれたからじゃ」
「空間の歪み?ってやっぱりあれのせいか…」
「空間の歪みによって、本来隔離された世界を繋ぐトンネルなような物が出来た。そして、お主はそれに吸い込まれてこの世界に来た」
「じゃあ!そのトンネルを通れば元の世界に戻れるのか!?」
「いいや、お主の通ってきたトンネルは異世界への片道切符みたいなものじゃ、元に戻ろうとする空間の自己修復によってもうお主の通ってきた空間の歪みは閉じておる。」
「そんな…じゃあ、もう元の世界には戻れないのか…」
ちょっと期待しただけに結構へこむ。
「あんなもんに触るんじゃなかった」
そう呟くと、
「お主、まさか自分から空間の歪みに触ったのか⁉︎」
「ああ、気になってつい…」
「はぁー、完全に自業自得じゃな!」
溜息を吐きながら、呆れたような顔でそう言われた。
「だってあんなもんが目の前に出てきたら触るのが男ってもんだろう!」
そう反論したが、
「好奇心旺盛な馬鹿じゃ」
エデンは呆れた顔のままだった。
そんな会話をしている時にふと閃いた。
「なぁ、俺の通ってきたトンネルは閉じてても、他のトンネルを通れば元の世界に戻れるんじゃないか⁉︎」
「それは難しいと思うぞ、長い時を生きてきたわしでも今まで空間の歪みなんて見たことなかったからのぅ。可能性でいえば、海の中から1ミリの金のかけらを見つけるレベルじゃろうな」
「もうそんなの可能性ゼロと一緒じゃねぇか!」
「ていうか長い時って、エデンって何歳なの?」
「レディーに歳を聞くとは、お主、女子にモテぬであろう?」
「うるせー!モテますー!モテモテのモッテモッテでしたー!!!」
「はいはい、わかったわかった。ものすごいモテるのじゃな」
エデンにすごい悲しい奴を見る目で見られた。
「やめてくれー!そんな悲しい奴を見る目で見ないでくれー!!!」
「まぁ、冗談は置いておいて、体の事じゃが」
「あ、それが一番気になってたんだよ!」
俺は身長160㎝で少し背の低いボサボサの黒髪をした普通の高校二年の男子だった。
こんな1mぎり超えるか超えないかの身長と短い手足の先は鋭い爪があり、オレンジ色の鱗のような皮膚と短くて動かせない尻尾を持ったモンスターなんかじゃなかった。
「それは、わしがお主の体を創り変えたからじゃ!」
「からだを創り変えた!?ていうかお前が犯人だったのかよ!?」
まさかこの体になったのはエデンのせいだとは思わなかった。
「まぁ、待て。落ち着くのじゃ。とりあえず話を聞け。まず、お主の体はあそこに転がっておる鬼によって致命傷を受けていた。再生魔法を使っても手遅れなぐらいな!そこでわしはお主の体を創造の力で作り変えることで助けてやったのじゃ!感謝せい!」
「そうだったのか…あ、ありがとう。」
「その通りじゃ!もっと感謝して構わんぞ!」
と言って、ありがとうと言われて喜んだのか上機嫌で高笑いしている。
どうやらエデンが俺の命を救ってくれたらしい。エデン様と呼ばしたりモテないだろうと言ってきたりと大分うざい奴だなと思っていたが、一気に好感度が上がった。
「助けてくれた事には感謝しているんだけど、どうしてこんな姿なんだ?出来れば人間が良いんだけど…その創造の力とかいうやつで人間に戻してくんないか?」
というと、さっきまで高笑いしていたエデンが額に汗を浮かべて目がものすごい泳いでいる。
「その…あれじゃ、わしの創造の力は不完全での。また使うにはすごい時間がかかるのじゃ、次使える時には多分お主もう死んでおると思う」
「なにーーー⁉︎ふざけんじゃねぇーよ!!なんなんだよこの姿!?」
「命が助かったのじゃから良いではないか!!感謝はされど文句を言われる筋合いはないぞ!!それにその姿可愛いから良いではないか!!」
「良くねぇーよ!!なんなんだよこの姿⁉︎」
「それはわしの考えたキャラクターじゃ。けどイメージとだいぶかけ離れておるな…多分、わしの創造の力が不完全じゃからじゃろうな…」
最悪だぁー。エデンの考えたキャラの不完全バージョンになるなんて…
「はぁー。まぁ、命があるだけ儲けもんだよな、ありがとな、エデン。とりあえず俺に何が起きたのかはわかったよ」
「ど、どういたしましてじゃ!いきなり素直にお礼を言うな!照れるではないか…」
照れているエデンに不覚にも可愛いと感じてしまった。
なんかエデンには妹的な可愛さを感じてしまうだよな。
「それじゃ説明も終わったし、わしはもう行くことにする」
「ちょっとまてよ!どこに行くんだよ?」
「神の領域じゃ!空間の歪みのことが気になっての。神の領域でじっくり考えることにした」
そういってエデンは椅子から立ち上がりどこかに行こうとした。
「エデン最後に教えてくれ!お前はなんなんだ?」
自分の事がわかったら、途端にエデンへの好奇心が溢れてきた。
「まだ質問してくるのか…仕方ない教えてやろう。わしはエデン=ユニバース。創造神によって生み出された神の領域の管理人じゃ。」
エデンの正体を聞いてまず思ったのはなんとなく凄そうとしか表現できない。それに創造神とかどんどん気になる情報が出てきて疲れてきた。
「わしも最後に聞いて良いか?」
「あぁ、こんなに世話になったんだ俺に答えられることならなんでも答えるよ」
「お主の名は?」
「そういえば言ってなかったな。俺の名前は久遠 陵だ」
「じゃあな、陵!お主面白いからまた会う時まで死ぬなよ。まぁ、わしが考えたモンスターじゃから大丈夫じゃろう!」
そういってエデンは瞬間移動したかのように目の前から居なくなっていた。
「ていうか俺をこんな所に置いていくなよーーー!!エデンの馬っ鹿野郎!!!」