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異能戦線 −宝石の四戦士編−  作者: 青色蛍光ペン
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6 急襲

あの時と同じ夕焼けの帰り道。隼人は一人家に向かっている。もちろん捜索を諦めたわけでは無い。夜に家を抜け出して再びあの研究施設へと向かうつもりなのだ。ちなみに、五色の誘いは断った。


「まぁ、キミならそう言うと思っていた。ま、気が向いたら声かけて。ボクは一組。キミは二組だから隣のクラスだね」


それが五色の返答だった。結局掴みづらい雰囲気を醸し出していたが、何者なのだろう。物事を「知る」異能力。流石にパラレルの関係者では無いと思うが、こちらの事を知っている以上、容易に見過ごしたままにしておく訳にはいかない。



夜。その研究施設は一層不気味な様子へと変わる。相変わらず人気は無いし、そのくせ最低限度に光の弱い街灯は配備されている。自動ドアは開くはずもなく、無理やり手でこじ開けて中に侵入する。


「ま、流石に誰もいないか」


昼間でも人が居ないのに、夜11時半と言う時間に人がいるはずも無く、辺りは静まり返っている。あれからまるで時間が止まったかのような感覚。だが、一つだけ違う所を発見する。


「コードδの死体がない…?」


隼人が倒したはずのコードδの死体がそこから消えているのだ。


「まぁ、あれで死んだとは限らないし、これは気にしないでおくか」


気持ちを切り替え、捜索を始める。目的は白咲本人では無く、それに繋がる手がかり。入り口付近にはあの時の戦闘で発生した瓦礫以外に何も無く、奥へ奥へと進んで行く。そして、見つけた。


「これは…、あの時の!」


隼人が寝かされたカプセルだ。その近くにはボロボロのファイルが落ちている。ページをめくるが、白咲については何も書かれていない。代わりに、二つの異能力についての記述がある。「比戸楽煜の火焔操作パイロコントロール」と「氷川冷奈の霧氷凍結アイシクルフロスト」。もしかするとこれは…。


「コードδが継承した能力か…。となると、この人達も…」


これは尚更に見過ごすことのできない問題となりそうだ。あんな奴に異能力が集まれば少なくともロクなことにはならない。早く急がねば、と足を早め、更に奥地へと足を運ぶ。


「ここは…、車庫か何かか?」


相変わらず弱い明かりが不気味に光る広い空間。床の白いラインを見るに、駐車場か何かである事には間違いない。なぜこんな場所があるのかは分からないが、今はボロボロの動きそうもない軽自動車が数台停まっているだけだ。


「これは随分と広い行き止まりだな」


流石に駐車場なんかに白咲がいるはずも無い。そう判断し、「疲れただけじゃねぇか」と呟きながら振り返り、元来た道を戻ろうとした瞬間、背後から素早い足音。


「せやぁぁぁっ!」


後ろを振り返ると、その足音の主は既に目の前におり、軽く1メートル半はあるであろう大剣を振り上げている。


「やばっ…」


とっさに横っ跳びに回避する。ガツンと鈍い音が鳴り響く。先程まで自分がいた場所を見ると、その男が持っている大剣はコンクリートの床にヒビをつけていた。もろに受ければもちろん死ぬだろう。


「中々の身のこなしだ。…聞いた通りだな」


「おい、お前いきなり何しやがる!」


叫んではみるが、分かっている。パラレルからの刺客に違いない。多分隼人よりも年上とみれるその男は、機械仕掛けなのか知らないがやたらとメカメカした大剣を担ぎ直し、ジロリとこちらを見る。冷酷な目つきだ。


「覚えはあるはずだ。お前に恨みはないが、ここで死んでもらう…!」


再び駆け出し、今度は横向きに振られる大剣。だが、リーチはあるものの、遅めの攻撃速度を見抜けない程隼人は甘くない。バックステップを取って異能力で風を起こし、攻撃の反動で動けないこの男にコードδに与えたのと同じパンチを食らわせてやるか、と考えていたが、隼人がバックステップの後に攻め込もうとした時には、既に往復で剣先が迫っていた。


「なに…!」


ガードもできず、派手に後方へと吹き飛ぶ。切ると言うよりは潰す、殴り飛ばす、と言った方が妥当なその大剣のおかげか、切り傷は無いが、代わりに鈍い痛みが腹に残る。一体どうやって二度目の攻撃を放った? 一撃目からかか二撃目への間の隙がほぼなかった。どんな筋力してやがる。またはそう言う異能力か?


「勘違いするな、俺は異能力なんか使えない」


こちらの考えを汲み取るように男は話す。その男の大剣をじっと見ていると、噴出口のようなものを発見する。


「…なるほど、その発射口か噴出口か分からないが、そこから何かを噴射することによって反動を無かったことにするのか…」


「ご名答だ。刃とは逆方向にジェット機の容量で勢い良くジェット噴射を行うことで、手首を返すだけで勝手にそちらへ向かって刃が進む。まぁ、もちろん燃料は必要だがな」


そう言いながら、大剣のパーツの一部を外して捨て、真っ黒なコートのポケットから同じものを取り出して取り付ける。どうやらそれが燃料庫らしい。


「そんなに種明かししてていいのか? こっちは異能力者だぜ?」


「…構わない。どうせここで死ぬんだからな」


静かにその男が話し終わるのと同時に、バチバチとまるで静電気を思わせる音が後方から聞こえてくる。後ろを振り向くと、眩しいほどに刀身が発行している剣を持つ、隼人と同年代ほどの金髪の青年が今にもその剣を振り下ろそうとしている。


「新手かよっ!」


咄嗟に異能力で風を横方向に起こし、その青年を横へと吹き飛ばす。


「はぁ…、はぁ…、かなりの消耗だな…」


どうやら異能力はかなりの体力を持ってかれるらしい。さっき攻撃を受けたのも原因の一つか。異能力を警戒してか、コートの男は一旦距離を取り、吹き飛ばされた金髪の青年はいつの間にか現れた黄緑色のマントを羽織った、これもまた隼人と同年代ほどの緑髪の少女に介抱されている。


「こんな状態で3対1って訳だ…」


「まだよ!」


鋭く放たれた言葉に驚き、横を見ると、大きな赤い大鎌を構えた赤髪の少女がこちらを睨みつけている。大鎌なのだが、持ち手の先端に銃口らしき箇所があり、それをこちらに向けている。それは多分位置的に遠距離攻撃を行うためのものなのだろう。ジェット噴射機をあんな場所に付けても意味はない。


「ちっ…、罠だったって訳かよ…!」


逃げようにも、鈍い痛みはまだ続いているし、異能力を発生させる隙もない。こんな所で殺されて終わりなのか? そう考えが浮かんだその時。


「帰りなよ、パラレルのキミたち」


眠たそうなあの声が、広い駐車場に鳴り響いた。

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