17 十河雪
隼人とコードδの決着が着いて約10分後、ようやく辛うじて動けるようになった隼人は、メインコンピュータの前に立っていた。
「USBが潰れていなくて良かった」
あんなに激しい戦いであったにもかかわらず、USBメモリには傷一つ付いていない。安心しながら、そのUSBメモリをメインコンピュータに差し込む。特に異常は無いようにも見えるが、とにかくこれで役目は終えた。後は五色を連れて帰るだけだ。
「…全く、めちゃくちゃ痛ぇ。どっか折れてんじゃねぇのかこれ…」
そんな事を呟きながらも中庭に到着すると、そこに待っていたのは、大きな木にもたれかかるようにして座っている五色と、別の場所で座り込んでいる紅原と風春の姿。
「やあ、黒崎クン。その様子だと無事終わったみたいだね」
「無事では無いんだが、とりあえずUSBは差し込んだ。これがどんな状況なのかは知らないが、とにかく帰るぞ」
「まぁまぁ、そう焦らないでよ」
「いや、こんなとこにもう用なんかねぇだろ」
「さっき、用事ができたところさ。あ、来たみたいだね」
「来たって…、誰が」
それを言い終わらぬうちに、中庭に二つの人影が現れる。その正体は、蒼神影人と黄山雷牙だ。
「お前ら…!」
「まぁまぁ、ボクが呼んだんだから、安心しなよ」
「お前が…?」
「正確には、彼女たちに連絡を取らせた。キミを待ってる間に、細かい事情も伝えてもらった。で、どうする?」
「ちょ、おい、話が全く分からねぇ。状況を説明してくれ」
何も理解できていない隼人の懇願に、簡単な話だよ、と前置きを置き、五色は衝撃の返答をさも当然のようにする。
「彼らにトリニティと組んでもらおうかと思ってね」
「…おい、お前正気かよ。そんな簡単に味方が増えるものなのかよ」
「彼らにはボクの考えを話した。パラレルの本当の目的とか、黒崎クンの本当の異能力とかその辺りを」
「俺の本当の異能力…?」
「なんだ、まだ気づいてなかったんだ。キミの異能力は風力操作じゃなくて、気流操作。だから屋内でも異能力が使えたし、それに、風を吹かせる事意外にも色々と応用が利くんだ」
「なるほど…、それで、か」
やはりあの時のは空気の壁だったのか、とコードδと戦った時の事を思い出しながら呟く。あの時は本当にまぐれだったが、応用が利くと言うのはあの壁の事なのだろう。
「いや、今は俺の異能力なんてどうでもいい。こいつらが仲間になるって話だ。根拠はあるのか?」
「あるね。彼らは正義感も強いし、異能力に頼らずともかなり強い。まぁ、戦力云々はいいとして、彼らはこの計画を間違ったものだとして認識してる。だけどパラレルを裏切れない理由がある。その理由さえ解決できれば今すぐにでもこっちに寝返ってくれると思うんだ」
「で、その問題って何だよ」
「それを今から聞くんだよ」
そして、五色は蒼神の方に向き直る。その口調からして、きっとその問題の一端は知っているのだろうが、それを隼人が知るはずもない。
「じゃあ、詳しく聞かせてもらおうか。キミ達4人と十河雪に何があったのかを」
「…分かった、お前達を信じて話してやる。あれは、5年ほど前の話だ…」
サファイアを地面に置き、戦う意思がない事を表しながら、蒼神は話し始める。パラレルを敵に回す、黒く淀んだ彼の思い出を。




